英国マンチェスター、アーカイブズ+(プラス)プロジェクト

国立公文書館 統括公文書専門官室
公文書専門員 渡辺 悦子

マンチェスター中央図書館

マンチェスター中央図書館

 マンチェスター・オックスフォード・ロード駅から北へ5分ほど歩くと、ロタンダの荘厳な建物が目に入ってくる。マンチェスター中央図書館である。創立80周年を記念してリノベーションが行われた図書館が再開したのは、昨年2014年3月。再開と時を同じくして、その1階に、マンチェスターの歴史に関する記録資料を一堂に集めて紹介する新しい展示スペースがオープンした。
 本稿は、この展示スペースと、それを運営する地域の新しいアーカイブズ連携事業体について紹介したい。


中央図書館1階の展示スペースのエントランス

中央図書館1階の展示スペースのエントランス

1.アーカイブズ+(プラス)展示スペース
 中央図書館の正面玄関ホールを通り抜けると、「Archives+」と書かれた入口が目に入る。のぞき見れば、各種のタッチパネル式の最新式電子機器が所狭しとならぶハイテク空間が広がる。オープン以降、図書館に来館した約140万人のうち、約70%(約98万人)が訪れたというこの展示スペースは、マンチェスター地域に所在する、官・民・学のアーカイブズ機関[1]の連携事業体、アーカイブズ+により運営されている。
 イギリスでは、ポータルサイトの隆盛により、オンライン上の一つの窓口から機関を横断した資料検索システムが盛んに提供されているが、アーカイブズ+の展示スペースでは、連携事業体に属する各機関が所蔵するコレクションを、リアル空間である「ひとつの場所one location」[2]から情報発信するという取組が行われている。この「場所」を訪れる幅広い利用者に対し、「マンチェスターの歴史へ気軽にアクセスし、関心を持ってもらえるよう」[3]、タッチパネルで自由に資料を閲覧できるだけでなく、コメントをつける等の相互交流が可能な様々なハイテク展示に加え、それと関わるオリジナル資料も同時に配置し、ビジュアル的・体験的に楽しむことができるものとなっている。
 提供されている展示は、「場所(place)」「労働と産業(Work and Industry)」「健康と生活環境(Health & Living conditions)」「むかし物語(Pastime)」「スポーツ、文化、レジャー(Sports, culture, leisure)」「ラディカル・シンキング(Radical thinking)」「コミュニティ(Communities)」「中央図書館(Central Library)」の8つのテーマ[4]で構成されている。これらの展示は、それぞれが独立した「島」のように配置され、定まった導線に基づき巡覧するのではなく、訪れた人が興味を持ったものを個別に楽しむことができるように工夫されている。この展示により、連携事業体のパートナー機関への相談は、実に120%の増加が見られた[5]。展示スペースを運営する機関の一つ、マンチェスター市公文書館のアーキビスト、ディビッド・ゴビエ氏のお話によると、これらデジタル・コンテンツは、主にマンチェスター大学の博物館学コースの学生により、ボランティア・ベースで、公文書館や各機関に所蔵されている資料から作成されているという。
 英国映画協会やマンチェスター・メトロポリタン大学のイギリス北西部映像アーカイブズが提供する、マンチェスターに関わる映像記録を見るためのブースもある。また、イギリスで現在、幅広い人々の人気を集めているファミリー・ヒストリーを調査したい人のためのヘルプデスクも置かれている。このヘルプデスクは、パートナー機関であるマンチェスター&ランカシャー・ファミリー・ヒストリー協会の問合せ窓口が、連携を機に中央図書館に移設されたものである[6]。また、マンチェスター登記サービスが扱う出生・結婚・死亡等の証明書は、ファミリー・ヒストリーの調査に欠かせないものであるが、これらの記録もまた、連携後、アーカイブズ+の所在する中央図書館で交付を受けることが可能となった[7]。

アーカイブズ+展示スペース

アーカイブズ+展示スペース

ハイテク機器と原資料のコンビネーションの展示は、テーマごとに独立した「島」状に配置される。

ハイテク機器と原資料のコンビネーションの展示は、テーマごとに独立した「島」状に配置される。


時代ごとのマンチェスターの地図が、自由に拡大縮小させて閲覧できるコンテンツ。表示されているのはドイツ軍による空襲被害図(1945)で、マンチェスター大学図書館所蔵

時代ごとのマンチェスターの地図が、自由に拡大縮小させて閲覧できるコンテンツ。表示されているのはドイツ軍による空襲被害図(1945)で、マンチェスター大学図書館所蔵

マンチェスターに住む様々な人種・民族についての展示。掲載が漏れたコミュニティの人々からの指摘は、新たなコレクション獲得の機会ともなっているという

マンチェスターに住む様々な人種・民族についての展示。掲載が漏れたコミュニティの人々からの指摘は、新たなコレクション獲得の機会ともなっているという


バーチャル・アーカイブ。「書架」に並ぶ様々な記録資料にタッチして「取り出し」、コンテンツを楽しむ仕組みとなっている

バーチャル・アーカイブ。「書架」に並ぶ様々な記録資料にタッチして「取り出し」、コンテンツを楽しむ仕組みとなっている

英国映画協会や北西部映像アーカイブズの映像資料が、このようなブースで閲覧できる

英国映画協会や北西部映像アーカイブズの映像資料が、このようなブースで閲覧できる


以上のような展示スペースを運営するアーカイブズ+連携事業体について、以下、紹介していきたい。

2.アーカイブズ+連携事業体について

2.1  概要
 アーカイブズ+は、イギリス第二の人口を抱える中部の大都市・マンチェスターの、市街地中心部に位置する中央図書館を基盤として展開する連携事業体である。事業体に参加する機関は、以下の8機関となる。
・公的機関
グレーター・マンチェスター州公文書館(以下、州公文書館)
マンチェスター市公文書館(以下、市公文書館)
マンチェスター登記サービス
・研究機関アーカイブズ
イギリス北西部映像アーカイブズ(マンチェスター・メトロポリタン大学)
アフメド・イクバル・ユラー人種問題リソース・センター(マンチェスター大学)
・民間団体
マンチェスター&ランカシャー・ファミリー・ヒストリー協会
英国映画協会
ファミリー・サーチ国際協会
 これまでも、マンチェスター歴史フェスティバル(数年に一度不定期開催)等のイベントを共催する等の連携活動を行ってきた各機関が、連携事業体として活動することとなったのは、マンチェスター地域における伝統的課題が背景にあったとされる[8]。それは、かつての行政区の複雑さやその頻繁な境界変更に加え[9]、個人的・組織的なネットワークが往々にして行政的境界を超えて働く土地柄等により、資料と所蔵施設の関係がしばしば混乱し、利用促進の障害となっていたことである[10]。2000年代初頭、マンチェスター地域に所在する公文書館の所蔵資料についてのオンライン一元的検索システム「The Pastfinder(むかし探し)」が文化遺産宝くじ基(Heritage Lottery Fund、以下HLF)の資金援助を受け始動、展開していたが[11]、公文書館ネットワークの外にあるアーカイブズ機関との所蔵資料情報の一元的提供は課題として残っていた[12]。
 アーカイブズ+は、記録資料の利用サービスやアウトリーチ活動を「ひとつの場所」から発信し、それら情報発信に必要なデジタル化事業等もあわせて、パートナー機関と連携・協同して行うことを目的とした事業体である[13]。中央図書館を「ワンストップ」の情報資源センターの拠点とするため、事業体を主導する州公文書館を中央図書館に移転させ、市公文書館と運営を統合[14]。市に属さないパートナー機関は、それぞれの親機関との関係や独自性を保ちつつも、所蔵する記録資源を互いに共有し、またアウトリーチ活動の協同開催等に努めている[15]。運営方式はトップに各パートナー機関の長レベルで構成するアーカイブズ+パートナー機関委員会を置き、実務者の長レベルの各機関の代表で運営グループを担い、あわせてコレクション、利用者、解説・学習の3つのタスク・グループを置くという構造となっている。

2.2  沿革
 アーカイブズ+を主導する州公文書館は、地域の歴史に関わる書架延長約6kmに及ぶアーカイブズ資料を所蔵し(もっとも古い資料は1176年)、地域の記録遺産の収集・保全及び提供を業務としている[16]。自治体に公文書館の設置を義務付けた地方自治法改正法(1972)を根拠としてマンチェスター都市州を設置主体として設置された公文書館で、マンチェスター市マーシャル通りで業務を開始したのは、1976年である[17]。地方自治法改正法(1985)により、1986年、都市州が廃止された後は、都市州に属した10の基礎自治体の代表による任意団体、グレーター・マンチェスター自治協会(Association of Greater Manchester Authorities、通称AGMA)の所管下に存続することとなり、以降、アーカイブズ+連携事業体が形成されるまで、AGMAからの委託を受けた中央図書館により運営された。
 一方で、マンチェスター市には市公文書館も設置されており、市庁舎に隣接する中央図書館内に設置されている。州公文書館と市公文書館は、長らく連携したサービスを行っていたが、1934年設立の中央図書館の80周年記念に、図書館を改築する計画が持ち上がった際、州公文書館を中央図書館へ移設し[18]、市公文書館と組織を統合する構想が生まれた[19]。これにあわせて、グレーター・マンチェスター地域に所在する多様なアーカイブズ機関を巻き込んだ連携事業共同体アーカイブズ+を構築するプロジェクトが検討され始めたのである。
 2009年2月、アーカイブズ+計画と、州公文書館の中央図書館への移転が、マンチェスター市により正式に発表された[20]。
 2011年4月、パートナーシップ提携をめざす8機関が合意に達する。同時にアーカイブズ+運営委員会が設置され、同年6月に市公文書館と州公文書館のスタッフが合同組織へと統一された[21]。
 2012年6月、前年にマンチェスター市がHLFに提出したプロジェクトへの資金申請に対し、展示スペースの設置費用や2013年~2017年の5年間にわたる学習プログラム・アウトリーチ事業費について、総額155万ポンド(約2億8千万円)の援助が認められ、また市からも50万ポンド(約9千万円)が拠出されることが決定した[22]。
 2013年3月よりプロジェクトは本格的に始動[23]、翌2014年3月22日、リノベイトされた中央図書館[24]の開館と共に、アーカイブズ+展示スペースがオープンした。
 ちなみに、2015年3月、州公文書館と市公文書館の合同組織が、英国アーカイブ施設認定標準[25]をクリアし、グレーター・マンチェスター地域のアーカイブズ機関として初めての認可を受けている。

2.3 ターゲット層
 2011年に市公文書館で行われた利用者調査によると、公文書館の利用者のうち73%が55歳以上であり(34歳以下は12%)、ほとんどの利用者(78%)がファミリー・ヒストリーに関連する調査を目的としていたこと(義務教育等で利用されたのは15%)、7割以上の利用者が固定層であり、新規利用者は2割程度であること、また98%の利用者が白人であること等が明らかになった[26]。
 アーカイブズ+では、利用者の拡大を図るには、マンチェスター地域の多様な人々を取り込む必要があることから、ターゲット層は「これまでアーカイブズ機関を利用したことがない人々」と銘打たれ、特に①7歳~14歳の児童(特に教育目的)、②14歳~25歳の若年層、③低学年児童がいる家族、④社会的少数者である黒人やアジア系等の人々、⑤マンチェスター市外の居住者、そして⑥文化遺産見学目的の観光客に設定されている[27]。展示やアウトリーチ活動は全て、これらターゲット層を考慮して計画・作成されている。

展示スペース内に設置されたイベント・スペース。8のパートナー機関が交替、或いは協同して、資料取扱いセッションやトークセッション等を行っている

展示スペース内に設置されたイベント・スペース。8のパートナー機関が交替、或いは協同して、資料取扱いセッションやトークセッション等を行っている

2.4  活動
 アーカイブズ+連携事業体の活動は、展示スペースだけではない。教育機関に対する学習プログラムや、学習教材の提供も行っている[28]。また、アウトリーチ活動を積極的に行い、パートナー機関で所蔵する記録資料の紹介を通じ、マンチェスターの歴史をより身近に感じてもらう取組を協同で行っている。アーカイブズ+による主な活動記録は表のとおりである[29]。中央図書館が開館すると、展示スペース内にあるイベント・スペースで、記録資料取扱いセッションなどが定期的に開催されるようになった。昨年1年間で、アーカイブズ+によって開催された学習/アウトリーチプログラムは、300を超え、2万人以上が参加した[30]。
 また、アーカイブズ+は、2010年12月からブログを開始、2013年3月からはツィッターやFacebookのアカウントを開設し、積極的な情報発信を行っている。特にアーカイブズ+ブログは、スタッフによる活動報告はわずかで、掲載される情報の大部分は、一般のボランティアの手によるものである。ボランティアの多くは、歴史の専門家でもアーキビストでもなく、プロジェクトがターゲット層とする若年層やアーカイブズを初めて利用した人々であるとのこと[31]。ブログは、彼ら/彼女らが携わっているパートナー機関でのコレクション整理等の作業で感じた印象や感動が率直に綴られており、毎月1~2回(以前は毎週)ベースで更新されている[32]。
 さらに、昨年2014年、アーカイブズ+が民間のファミリー・ヒストリー団体であるfindmypast.co.ukancestry.co.ukと協力して行った資料のデジタル化は、パートナー機関所蔵の救貧院や学校、教会、埋葬や監獄等、約1千万件にのぼる。これらはすべて、マンチェスターの市立図書館から無料でアクセス可能となっている[33]。

3.まとめ
 アーカイブズ+連携事業体にも、課題がないわけではない。HLFが保証する資金援助は2017年までであり、それに代わる資金提供団体を得ることは急務である。また、2015年、北西部音声アーカイブズが組織を解散し、そのコレクションを州公文書館が引き受けることとなった。コレクションの幅を広げるとともに、今後、その整理作業が課題となってゆくだろう[34]。
 事業体に参加する個々の機関としても、日常業務には困難を抱えている。ゴビエ氏によると、州・市公文書館にアーキビストは2名[35]しかおらず、うち一人はレコード・マネージャーも兼務していることから、館の運営は厳しい状況とのことである。人員不足により、本来の業務である目録作成にも力が割けず、期間契約のアーキビストに作成業務を依頼する他にないという。また、年間、約200メートルに及ぶ市庁舎からの文書の移管等もスムーズには行われていないのが実情で、日頃から隣接する市庁舎に足を運び、各課を見回ってアーキビストの存在を印象付け、市職員に対し記録管理への意識を持ってもらう工夫をしているとのことであった。
 日本の地方公文書館と共通する課題を抱える参加機関ではあるが、地域の官・民・学のアーカイブズ機関連携事業体としてよりよい利用者サービスの提供に努めるアーカイブズ+の取組について、今後も動向を見守ってゆきたい。

 本稿の作成に当たり、市公文書館アーキビストのディビッド・ゴビエ氏には多大な協力をいただいた。伏して感謝の意を表する。
I would like to thank Mr D. Govier, who provided valuable information about the project.

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[1] 本稿では、Record OfficeやLocal authority archives等、地方自治体を設置主体とする機関を「公文書館」とし、設置主体によらず記録資料を中心とした保存機関全般を「アーカイブズ」とする。
[2] Memorandum of Understanding (2015年6月30日アクセス)、
[3] Archives+のHP(2015年6月30日アクセス)
[4] Janice Tullock Associates (2012)‘Activity and Interpretation Plan’より。この8つの展示のテーマは、2011年に中央図書館で行われたアーカイブズ+のための実験的プロジェクト “Archives in the Big Society”や2012年にマンチェスターで開催された歴史フェスティバルの参加者に対して行われた意識調査、「The Manchester Histories Strategy」の策定にあたって数多く行われたワークショップ後のアンケート等の結果から、マンチェスターを象徴するもの、人々が知りたいと思うもののうち、上位にランクインしたテーマから選ばれている。なお‘Activity and Interpretation Plan’については、ディビット・ゴビエ氏より提供を受けた。
[5] Manchester City Council Neighbourhoods Scrutiny Committee, Manchester City Council Report for Resolution, 2015/05/26(2015年6月30日アクセス)
[6] マンチェスター&ランカシャー・ファミリー・ヒストリー協会のHPより。(2015年7月3日アクセス)
[7] 前掲、Manchester City Council Report for Resolution, 2015/05/26
[8] 前掲、Activity and Interpretation Planより。
[9] マンチェスター州はもともと、権限の異なる様々な形態の基礎自治体(区districtや市city、カウンティ・バラcounty borough等)が混在する地域であった。1972年の地方自治法(Local Government Act)の改正により行政区の全国的再編が行われた際、マンチェスター州は、隣接する一部地域を吸収して整理・統合された7つの都市区(metropolitan district)とマンチェスター市を含む3つの市の、計10の基礎自治体で構成されるグレーター・マンチェスター都市州(metropolitan county)となった。ところが地方自治法改正法(1985)により、1986年、グレーター・マンチェスター都市州は廃止される。都市州に属していた10の基礎自治体は、公共交通、消防、警察、廃棄物処理等の都市区を超えて提供を要する公的事業運営の必要性から、各自治体の代表による任意団体、グレーター・マンチェスター自治協会(Association of Greater Manchester Authorities、通称AGMA)を組織した。2011年、法に基づく共同自治組織であるグレーター・マンチェスター連合体(Greater Manchester Combined Authority)が設立され、再び広域自治体の役割を持つ自治組織の設置を見た。AGMAも任意団体として存続させつつ、現在に至っている。以上、AGMA/GMCAのHP、及びA.スティーブンス/石見豊・訳『英国の地方自治―歴史・制度・政策』(2011年5月20日、芦書房)より。
[10]A. Lees, E. Woolmore, A. Flinn,(2004),‘Describing the Archives of Manchester: the Greater Manchester Past Finder project’, Journal of Society of Archivists vol.25:1。資料と所蔵施設の関係の混乱についてのさらなる要因として、その他、公文書館が設立されるまでに、地域の重要な記録資料の寄贈先として受け皿となる巨大な収蔵施設(イギリス最古の公共図書館といわれるチャタム図書館や、イギリス国内5か所に所在する納本制度指定図書館の一つ、マンチェスター大学のジョン・レイノルズ図書館等)が既にあったこと等も挙げられる。この状況は古くから課題とされており、A.Lee他論文によれば、1974年に、自治体公文書館及びその他のアーカイブズ関連機関の間で、グレーター・マンチェスター・アーカイブズ・グループ(Greater Manchester Archives Group)が形成され、所蔵資料に関する無料パンフレットの刊行等も共同で行ってはいた。しかしながら、実際のところあまり効果的な内容ではなかったという。加えて、電子化の波がアーカイブズの世界に及んだ際も目録の電子化は進まず、各自治体のホームページ上で、閲覧可能な資料の目録のみが個別に紹介する形がとられる等していたことから、1998年、イギリス公記録館(Public Record Office、現在のイギリス国立公文書館の前身組織)が行った地方公文書館におけるサービスの実態調査において、グレーター・マンチェスター地域はイングランド国内で最も貧弱とまで指摘されている(Archival Mapping Project Board (1998),‘“Our Shared Past: an Archival Domesday for England” –Local Authority Archive Services in England: Funding Opportunities and Development Needs’2015年6月30日アクセス)。ちなみに、公的機関の公文書については、2000年代初頭に行われたThe PastFinder(現在Greater Manchester Livesと名称を変更)と呼ばれるポータルサイトによって一定の解決を見ている。
[11] 前掲、A.Lees他論文より。Past finderが搭載したのは、重要な記録資料のフォンド・レベルの目録のみだが、約2年に及ぶプロジェクトにおいて、地域の公文書館が所蔵する4,000件以上の記録を横断して検索可能なツールが初めて提供されることになった。現在は約100万件の目録及び10万画像が検索可能。
[12] 前掲、Activity and Interpretation Planより。
[13] 前掲、Memorandum of Understanding、またArchives+のHP(2015年6月30日アクセス)
[14] 前掲、Manchester City Council Report for Resolution, 2015/05/26。なお、この統合による結果、州公文書館の運営は、法的にはグレーター・マンチェスター自治協会(注16参照)の委託を受けたマンチェスター市が行うと位置付けられている。
[15]前掲、Memorandum of Understanding
[16] AGMA Executive Committee (2013/03/22)、’Archives+ and the Greater Manchester Archives & Local Studies Partnership’より(2015年6月30日アクセス)
[17] 前掲A. Lees他論文。
[18] 計画検討のそもそもの始まりは、州公文書館の建物の老朽化問題であった。2007年、マーシャル通りの州公文書館をより利用者に開放された空間とするため、テナントハウス「Marketplace」内へ移転する計画をHLFへ提出したが、同意を得られず、実現しなかった。移転計画を中央図書館へ転換するのは、2008年のことである。Manchester City Council NeighbourhoodsScrutiny Committee, Manchester City Council Report for Resolution, 2011/11/15(2015年6月30日アクセス)
[19] 前掲、Manchester City Council Report forResolution, 2011/11/15
[20] 前掲、AGMA Executive Committee 2013/03/22
[21] 前掲、AGMA Executive Committee 2013/03/22及び前掲、Manchester City Council Report forResolution, 2011/11/15
[22] 前掲、AGMA Executive Committee 2013/03/22
[23] アーカイブズ+ ブログ、2013年12月27日投稿「The Big Friday Find―Archives+ The year in Review」, (2015年6月30日アクセス)。
[24] ゴビエ氏によると、中央図書館の元々の一般開放スペースは建物の3割程度で、7割は閉鎖された収蔵施設だったが、改築により7割を一般に開放し、図書閲覧スペースを拡張、多くのセミナー室等も備えた施設となったとのことである。
[25] 中島康比古「英国国立公文書館のアーカイブ施設認定標準について」『アーカイブズ51号』(2013年10月)。
[26] 前掲、Activity and Interpretation Plan (Janice Tullock Associates)
[27] 前掲、Activity and Interpretation Plan (Janice Tullock Associates)
[28] 前掲、アーカイブズ+HP
[29] アーカイブズ+ブログ(2015年6月30日アクセス)よりまとめた。
[30] 前掲、Manchester City Council Report forResolution, 2015/05/26
[31] Archives+のHP、Archives+ Blogについてより。
[32] 前掲、Archives+のHP
[33] 前掲、Manchester City Council Report forResolution, 2015/05/26
[34] 前掲、Manchester City Council Report forResolution, 2015/05/26
[35] ゴビエ氏によると、州・市公文書館の現在のスタッフ数は、アーキビスト2名、修復士1名、デジタル関係業務スタッフ1名、利用者サービスを担当するアクセスチームに10名の計14名とのことである。