国立公文書館業務課利用係 小畑 晴美
はじめに
レファレンス協同データベース(以下、「レファ協」という。)とは、「国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している、レファレンス(調べものの相談)のデータベース」である[1]。
独立行政法人国立公文書館(以下、「当館」という。)は、現在、新たな国立公文書館(以下、「新館」という。)の開館に向けてレファレンス機能の充実化に取り組んでおり、この一環として、令和7年(2025年)3月25日、正式にレファ協に参加した。今後、レファレンス事例の登録を継続して行い、広く一般公開していく予定である。
本稿では、当館がレファ協に参加した経緯やその意義、参加にあたっての調査や検討の過程で見つかった課題や今後の取組に向けた目標を紹介する。
1. レファ協への参加
1-1. 検討の経緯と参加の意義
当館ではこれまでもレファレンスの回答を行う際、当館所蔵資料以外の情報や参考図書等の案内をするために、レファ協にデータを登録している図書館のレファレンス事例を紹介するなど、レファ協を活用していた。また、当館所蔵資料に関する情報が他機関の登録事例に掲載されている[2]ことから、間接的にではあるが、当館所蔵資料の利用の促進につながっていたと思われる。
そのような状況の中、令和5年(2023年)、当館において新館へ向けたレファレンス機能の充実化に係る取組[3]の一環として、レファ協への参加を検討することとなった。
レファ協への参加を検討する中で最も重視したことは、当館所蔵資料の利用の促進や当館業務への理解向上に繋がるか、という点である。また、レファ協へ参加し、継続的にレファレンス事例の登録を行っていくためには、登録する情報の精査や登録事務などの利用者対応全般を行う日常業務を行いながら、担当者が替わっても継続してできるのかが課題として挙げられる。さらに、当館の所蔵資料は、大部分が一次資料であり、主に図書資料を扱う図書館と大きく異なるため、当館所蔵資料について図書資料との違いを理解してもらえるのか、参加する意味があるのかという意見もあった。
このような懸念事項はあったものの、検討を進める中で、既存の図書館を中心とするレファ協という枠組みに参加することにより、図書館利用者はもとより、日々レファレンスを行っている全国の図書館等の職員に、当館がどのような資料を所蔵し、どのように利用できるのかを知っていただく、一つのきっかけを与えることができることに意義があるのではないかという結論に至った。
また、当館自らが所蔵資料について、正確な情報を提供・発信していくことも重要であり、当館でもレファレンスを行っていること自体を、図書館利用者や全国の図書館等の職員にPRできるという利点もあると考えた。
1-2. 参加に向けた調査
当館ではレファ協への参加の意義を以上のように認識し、既にレファ協に参加している他の機関、特に当館と同じアーカイブズ機関の参加状況を調査することから検討を開始した。
検討を開始した令和6年(2024年)7月当時、レファ協の登録機関数は931機関、うち「アーカイブズ」として登録している機関は、11機関であった。また、登録されているレファレンス事例の総数は161,289件、うち「アーカイブズ」は871件であった[4]。
「アーカイブズ」として登録している機関とレファレンス事例数などを整理した一覧が【表1】である。参加機関数は少ないが、レファ協の運営が開始されてから早い時期に、東京都公文書館が参加している。また、外務省外交史料館、福井県文書館、尼崎市立歴史博物館地域研究史料室”あまがさきアーカイブズ”(以下、「あまがさきアーカイブズ」という。)は、レファレンス事例の登録数が多く、積極的にレファ協を活用していることがわかる。
一方、特定の事項を探索するための解説である「調べ方マニュアル」を登録している機関は、3機関となっている。事例登録の数と比べると極端に少ない件数となっている。
【表1】レファ協に「アーカイブズ機関」として登録している機関(当館を除く)
※「更新日」はレファレンス事例または参加館プロファイルの最終更新日。
※令和7年(2025年)12月13日現在の数値で作成。
さらに、適切なレファレンス事例等の登録方法を検討するために、他のアーカイブズ機関に対しヒアリング調査を実施した。調査対象はレファ協に参加しているアーカイブズ機関の中から、レファレンス事例の登録数が多く、定期的な更新を行っていること、「調べ方マニュアル」の登録実績があること、レファ協参加について複数の論考 [5]があること等から、あまがさきアーカイブズに協力を仰いだ。令和6年(2024年)11月にオンラインによるヒアリングの場を設け、レファ協参加の契機やレファレンス事例の登録方法、注意点や課題のヒアリングを行なった。
1-3. 機関情報の登録
上記の検討結果を踏まえ、令和7年(2025年)2月にレファ協事務局へ参加申請を行った。同年3月12日に承認を受け、同年3月25日に、当館の機関情報(参加館プロファイル)登録を行い、一般公開されるに至った。
2. レファレンス事例の登録
2-1. 事例登録の流れ
当館において本業務を担当している業務課利用係(以下、「利用係」という。)において、利用者対応全般を行う日常業務のほか、前述のとおり、レファレンス事例の登録を継続的に実施できるかが、検討を開始した当初からの懸念事項であった。そこで、レファ協への参加に先立ち、利用係における業務全般及びレファ協に事例を登録するための業務フローを検討し、日常業務の中に組み込むこととした。業務フローは以下のとおりである。
第一段階として、日常的に利用者対応を行う利用係の職員のうち6名が各人の経験から有用と考えられる事例(1~2例)を選定する。
続いて第二段階として、選定された事例の中からレファ協担当職員(1名)が以下の2つの観点から事例を数例に絞り、レファ協データベースの登録フォーマットに沿って、登録候補データ案を作成する。
(1)当館所蔵資料を根拠とするもの。
(2)各地の一般利用者や地方自治体のアーカイブズ、公共図書館等にとって有用となるもの。
第三段階として、レファ協担当職員が作成した登録候補データ案を利用係内にて協議の上、確認、修正を行い、登録事例(1件以上)を決定する。最後に、業務課課長補佐(利用担当)の確認を経て事例を登録する[6]。この業務フローを年2~4回繰り返していく想定である。
なお、上記の業務フローは、今後運用を進める中で、随時見直しを図っていく予定である。
2-2. レファレンス事例の登録
前述のとおり、令和7年(2025年)3月のレファ協への参加承認後、レファレンス事例の登録を進めた。レファ協事務局に登録内容についての助言をいただき、再度確認・修正を行った上で、令和7年(2025年)9月に一般公開を開始した。
最初に公開した事例は、当館の所蔵資料の中心的な資料群のひとつである内閣文庫の漢籍についてのレファレンス事例[7]である。内閣文庫への収蔵の経緯や内閣文庫に収蔵される前の旧蔵者の特定につながる蔵書印についての内容であり、同種のレファレンスを定期的に行っていることから選定したものである。
令和7年(2025年)12月に、更に追加で2件の事例登録を行った。1件は、「御署名原本」の御名御璽の通常とは異なる形式についての解説である[8]。もう1件は、重要文化財に指定されている「天保郷帳」や天保年間についての資料の紹介である[9]。登録済みの3件はいずれも前述の選定における観点(1)、(2)に当てはまり、同様の問合せが複数寄せられているものである。
2-3. 今後の目標
事例登録は、担当者の異動や他の業務との兼ね合いに左右される可能性があるが、そのようなことがないよう、業務フローに沿って地道に登録事例を積み上げていきたい。
その他、「調べ方マニュアル」はレファ協の特徴的な取組であり、かつ当館所蔵資料の利用にもつながると思われるため、登録を進めていきたいと考えているが、現時点で未登録である。「調べ方マニュアル」への登録の方法として、例えば、当館のホームページで公開している目的別に調査方法をまとめた「リサーチ・ガイド」[10]とのリンクなどを検討しているところである。
おわりに
レファ協への参加は、新館開館に向けたレファレンス機能の充実化方策の一つとして検討を開始したものである。まずは、参加登録を行い、レファレンス事例の一般公開を開始したが、今後は事例登録を継続的に行うことはもちろん、「調べ方マニュアル」を含む登録事例の内容をいかに充実させていけるか、問われることになる。
また、この取組が、当館の利用者の増加や満足度の向上に通じるのか、さらに当館として、他のアーカイブズ機関や図書館など関係機関への貢献につながっているのかなど、常に検証し、見直しつつ進めてまいりたい。
注
[1]2002年から図書館利用者への調査研究活動を支援するため、図書館等で行ったレファレンスの事例等をインターネットで公開して、情報提供や調べ方の案内を行っている。URL:https://crd.ndl.go.jp/reference/(参照 2025-12-13).
[2]令和7年(2025年)12月13日現在、レファレンス事例データから「国立公文書館」と検索をすると、1,582件該当する。
[3]レファレンスの充実化に関する取組についての詳細は、伊藤一晴「国立公文書館におけるレファレンス機能の充実化に向けた取組について」(『アーカイブズ』第99号、令和8年2月27日)参照。
[4]正確には令和6年(2024年)7月16日現在の数値。令和7年(2025年)12月13日現在、レファ協登録機関数は、949機関、うち「アーカイブズ」で登録している機関は当館を除くと11機関となっている。またレファレンス事例登録総数は171,792件を数える。このうち「アーカイブズ」における登録事例数は895件となっている。
[5]久保庭萌「尼崎市立地域研究史料館におけるレファレンス・サービス」(『図書館雑誌』vol.106、2012年5月)、同「レファレンスから、つながる-尼崎市立地域研究史料館におけるレファレンス・サービス発信の取り組み-」(『記録と史料』第23号、2013年3月)、同「尼崎市立地域研究史料館のレファレンス事業の展開」(『アーキビスト』No.84、2015年9月)。なお、あまがさきアーカイブズは、令和2年(2020年)10月、前身の尼崎市立地域研究史料館の公文書館機能を引継ぎ、尼崎市立歴史博物館内に設置された。
実際、あまがさきアーカイブズご所属の辻川敦氏と久保庭萌氏にヒアリング調査にご協力いただいた。この場を借りてお礼申し上げたい。
[6]レファ協では公開の段階として、自館のみ公開、参加館のみ公開、一般公開というステップが設けられている。よって、レファレンス主担当が作成した事例について、まず自館のみ公開とし、複数の職員の確認を経た後、速やかに一般公開することとした。
[7]https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000365248(参照 2025-12-13).
[8]https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000376798(参照 2025-12-15).
[9]https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000377038(参照 2025-12-15).
[10]令和7年(2025年)3月から当館ホームページ上で公開を開始したもの。令和7年12月13日現在、「外地からの引揚者を調べる① ―『引揚者在外事実調査票』―」https://www.archives.go.jp/guide/researchguide/researchguide001.pdfと「戦争裁判を調べる -『戦争犯罪裁判関係資料』(平成11年度法務省移管)の概要-」https://www.archives.go.jp/guide/researchguide/researchguide002.pdfの二つを公開している。


