「開かれた歴史情報拠点へ~公文書館機能と博物館機能の融合~

郡山市文化スポーツ観光部歴史情報博物館
館長 嶋根 裕一

施設外観

1.開館までの経緯について
  郡山市歴史情報博物館は、郡山市の豊かな歴史と文化、そして未来に継承すべき公文書の保存・活用を目的として令和7(2025)年3月15日に公文書館機能を有する博物館として開館しました。本施設の建設は、令和5(2023)年2月から2年にわたり整備をしたものでありますが、事業全体としては、平成26(2014)年の歴史資料保存整備検討委員会の設置を機に、平成30(2018)年の基本構想策定、令和元(2019)年に基本計画策定、令和2(2020)年に基本設計、翌令和3(2021)年に実施設計を進め、開館まで約10年を要してまいりました。
  この間、施設整備に係る各懇談会を開催する中で、委員の皆様より専門的な見地から貴重なご意見をいただくとともに、各行政機関、市議会、地元町内会、資料提供をいただいた方々など、多くの関係者の皆様のご支援・ご協力のもと整備を進め、開館に至りました。
  本格的な構想の発端となったのは、平成23(2011)年に発生した東日本大震災でした。多くの自治体が文化施設や教育施設などに深刻な被害を受ける中、貴重な史料が損壊、あるいは散逸の危機にさらされました。さらに、郡山市では、震災以前から長年にわたり市の歩みを記録した行政文書や歴史資料の保存・活用の在り方が課題とされていました。

2.公文書管理の見直しについて
  郡山市では、公文書管理条例制定前については、内部規程である文書等取扱規程に基づき公文書管理を行っていましたが、歴史情報博物館の設置を契機として、公文書等の管理に関する法律の趣旨に則った公文書の適正管理を行うため、令和6(2024)年3月に郡山市公文書管理条例を制定しました。
  また、令和6(2024)年7月には、公文書等の管理を適正かつ効率的に行うため、新たに公文書管理委員会を設置しました。
  本委員会では、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関する規則」及び「公文書管理条例に基づく利用請求に対する処分に係る審査基準」について審議を行っており、委員の皆様から規則について「特定歴史公文書等の保存は、適切な場所で永久保存すること」や、「委員会に諮問し廃棄したときは、廃棄に関する記録を作成し、公表する」など慎重な手続きについてご意見をいただき、特定歴史公文書等の保存、目録整備及び利用請求への対応等について開館後の実務を想定した制度整備を行っております。
  また、審査基準についても、公正で透明な審査を保障するために、できるだけ具体的に明記することや、条例の規定を遵守し、それに基づいて処分が行われるようになっているかなどご審議いただき、令和6(2024)年12月に規則とともに策定し、開館日に施行となったところです。

収蔵庫

3.施設概要について
  歴史情報博物館の延床面積は3534.72㎡であり、構造は鉄筋コンクリート造一部鉄骨造で、階数は地上1階、地下1階となっております。
  1階には、原始から近現代までの郡山の通史を紹介する常設展示室のほか、企画展示室、資料閲覧室、アーカイブギャラリー、地域ギャラリー、交通と交流のギャラリーなどを配置しております。
  また、地下1階には、収蔵庫、書庫のほか、博物館資料の整理や特定歴史公文書等のスキャン作業を行う資料整理室などを配置しております。

  
  
  
  
  

資料閲覧室

4.博物館機能と公文書館機能の融合について
  この施設は、歴史博物館として市の成り立ちや地域の歩みを展示・発信するだけでなく、先に述べたとおり、郡山市が作成・取得した歴史公文書を収集・整理・保存し、適切に公開・活用する「公文書館機能」を併せ持っておりますが、令和7(2025)年6月27日には博物館法における「登録博物館」に福島県教育委員会から登録を受け、東北で初の公文書館機能を有する登録博物館となりました。
  また、展示室では、公文書を用いた歴史的な証言を紹介し、市政の意思決定の記録や地域の変遷を視覚的に伝える工夫を施しています。加えて、資料閲覧室では博物館資料及び特定歴史公文書等の閲覧時に参考となる図書を排架するほか、情報検索端末を2台配置し、特定歴史公文書等を含む多様な資料をデジタルアーカイブ(詳しくは後述)を通して自由に閲覧できるようにしており、「見る・調べる・学ぶ」の一体的なサービスを提供しています。

  
  
  
  

5.市民への広報活動について
  開館以降、市民向けに公文書館機能を広く理解いただくため、以下のような活動を行っています。
• 市政だよりや博物館ウェブサイト、SNSを通じた情報発信
• 展示を通じた公文書の紹介(例:戦後の復興や都市整備を記録した文書展示)
• 学校・地域団体向けの見学受け入れや出前講座
• 公文書を活用したワークショップや講座の開催
• 国際アーカイブズ週間に合わせたイベントの開催
これらを通じて、「公文書は市民共有の知的資源」であるという意識の醸成を目指しています。

6.企画展について
  令和7(2025)年10月からは、国立公文書館と連携し、国立公文書館が所蔵する特定歴史公文書等を中心に残された記録から、我が国の制度の変遷や当時の時代状況に加えて、近現代における福島県や郡山市の状況、さらに発展に尽力した郷土の人物に関係する資料を展示し、「記録から読み解く日本と郡山の歴史~時代を証言するたからもの~」を開催予定です。市民共有の知的資源である歴史資料として重要な公文書等への親しみや関心を持っていただく一助とするとともに、近代日本と郡山における主要な出来事を公文書の視点から読み解き、市民に特定歴史公文書等の持つ魅力を紹介する内容の企画展となります。記録は単なる過去の証拠ではなく、社会の選択や変化の過程を物語る貴重な「証言」です。この企画展を通して、公文書のもつ歴史的価値とそれを未来につなぐアーカイブの重要性について、あらためて考えていただく契機になれば幸いです。また、公文書の企画展開催中には、国立公文書館の職員の方をお招きしたギャラリートークや著名人を招いた講演会をはじめ、さまざまな企画を準備しておりますので、全国の公文書館関係者の皆様にぜひご来館いただきたいと考えております。
  さらに、今年度最後の企画展は、「発掘された日本列島2025」です。全国で毎年およそ8,000件の発掘調査が行われている中から、全国的に注目された成果を多くの方々にご覧いただくため文化庁が行っている巡回展になります。この展覧会では、44遺跡、約480点の出土品等を展示するほか、郡山市ゆかりの資料を展示する地域展も同時開催いたします。
  以上が今年度下半期に予定している企画展になりますが、来年度以降も幅広い分野の企画展開催に向け現在検討中であります。

7.現用文書と非現用文書の保存と公開について
  現用文書は歴史情報博物館では直接管理していませんが、公文書管理担当部署と連携して適切な保存期間経過後に歴史公文書が移管される体制を整備しています。また、現用文書の情報公開制度については、郡山市情報公開条例に基づき、市政情報センターにおいて開示請求等に対応しています。非現用文書については、評価選別を経て「特定歴史公文書等」として歴史情報博物館で受け入れ、保存・整理の上、原則として公開しています。公開に当たっては、個人情報や特定機密に該当する情報の有無を確認し、必要に応じて利用制限を行います。

特定歴史公文書等

役割分担図

こおりやまアーカイブ

8.デジタルアーカイブの取組について
  特定歴史公文書等や歴史資料のデジタル化を段階的に進めており、検索性の向上と保存リスクの分散を図っています。郡山市アーカイブズ検索システムを構築し、文書の目録データの公開とデジタル画像の一部閲覧を可能にしています。また、今後はAIによる文書の自動分類・OCR化など、新技術の導入も検討中です。デジタル化は単なる保存手段にとどまらず、教育やまちづくりへの応用も視野に入れています。

9.課題と展望
  今後の運営において最も課題となるのは、収集・整理対象となる公文書の範囲が広範である一方、人的・財政的リソースが限られていることです。今後は、公文書管理担当部署との連携強化、アーキビストとして必要な知識・技能等の内容が修得できる研修を受講させることや調査研究実績を作る機会の確保等による認証アーキビストの内部育成、ボランティア等の活用も視野に入れながら、持続可能な運用体制の確立を目指しています。

 

10.将来への期待
  郡山市歴史情報博物館は、郡山の歴史を公的記録と市民の記憶から丁寧に掘り起こし、次代に伝えることを目的に整備された新しい時代の博物館です。
  今後は、単に資料を保存・展示するだけでなく、地域の歩みを多角的に読み解き、未来のまちづくりに資する「知の拠点」としての役割がますます期待されます。特に、公文書館機能の充実を通して、政策の経緯や市民の暮らしの変遷を体系的に記録・検証できる環境を整えることは、自治体としての説明責任や持続可能な行政運営にもつながります。また、教育現場や観光、文化芸術との連携を一層進め、子どもから高齢者まで誰もが歴史を身近に感じられる場を創出していくことも重要です。さらに、ICTやAIなどの先端技術を活用し、デジタルアーカイブやインタラクティブな展示手法の導入を図ることで、情報発信の幅を広げ、世代を超えた来館者との対話も深まるものと考えています。
  さらには、市民に開かれた公共施設として、常に地域に寄り添いながら、郡山の過去・現在・未来をつなぐ博物館であり続けることが、私たちの使命であると考えています。歴史情報博物館が、郡山市の「記録と記憶」の拠点として、次世代に確かな地域の歴史を継承する役割を果たし、また、公文書を通じて市民が行政への信頼と参加意識を高めるきっかけとなるとともに、研究者・教育関係者・まちづくり関係者にとっても活用価値の高い施設として育てていきたいと考えています。今後は、大学・研究機関等とも連携し、地域に開かれた記録文化のハブとして発展していくことを目指していきます。

 

機関名: 郡山市歴史情報博物館
所在地: 〒963-8876 福島県郡山市麓山一丁目5番30号
電話/FAX: TEL:024-923-8921/FAX:024-923-8922
Eメール: hakubutsukan@city.koriyama.lg.jp
ホームページ: https://www.city.koriyama.lg.jp/site/historymuseum/
交通: 郡山駅からの交通手段
・バス 約15分
郡山駅前バス11番乗り場より「21-3静団地」「1Bコスモス循環池ノ台先回り」「41-3鎗ヶ池団地【池ノ台経由】行き、「郡山中央図書館」下車徒歩1分
・タクシー 約10分
・徒歩 約30分
・駐車場  郡山市麓山地区立体駐車場をご利用ください。詳しくは、次のウェブサイトをご覧ください。https://www.city.koriyama.lg.jp/soshiki/125/62966.html
開館年月日: 令和7年3月15日
設置根拠: 郡山市歴史情報博物館条例
組織: 館長、副館長、MLA連携企画係、歴史公文書係
人員: 13人(正職員)、7人(会計年度任用職員)
建物: 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 地下1階、地上1階
所蔵資料: 特定歴史公文書等、歴史、考古、民俗
開館時間: 午前9時30分から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)
毎月最終金曜日(祝日の場合は前日)
年末年始(12月28日から翌年1月4日まで)
観覧料:
※団体は20名以上です。(事前にご連絡ください)
※企画展の観覧券で常設展もご覧いただけます。
主要業務: 歴史情報博物館の管理に関すること。
博物館資料に関すること。
特定歴史公文書等に関すること。
博物館協議会に関すること。