長崎県公文書コーナーについて

長崎県総務部総務文書課
係長 永田 佳美

長崎県立長崎図書館郷土資料センター

長崎県立長崎図書館郷土資料センター

1.はじめに
  長崎県公文書コーナー(以下「公文書コーナー」という。)は、令和4年3月27日に、長崎市立山に新しく開館した長崎県立長崎図書館郷土資料センター(以下「郷土資料センター」という。)内に開設しました。郷土資料センターに併設されており、独立した施設ではありませんので、いわゆる公文書館法第5条に該当する公文書館ではありませんが、公文書館法第3条に定める責務を果たすため、公文書館の機能の一部を持つものとして運営しております。
  公文書コーナーでは、歴史的・文化的価値を有すると認められる県の公文書のうち、業務で使用しなくなった文書や、県が職務上作成し、又は収受した刊行物、書籍などの中で歴史的・文化的価値のある行政資料を保存しており、どなたでも閲覧することができます。
  今回は、公文書コーナー開設までの歩みを中心にご紹介しつつ、今後の課題について述べたいと思います。


閉架書庫の様子

閉架書庫の様子

2.公文書コーナー開設までの経緯と概要
  本県における公文書館整備の検討は、平成11年に長崎県政策創造会議「諏訪の森部会」(委員長:市川森一氏)から提言を受けたことからはじまりました。
  郷土資料センター(公文書コーナー)が設置されている地は、「諏訪の森」と呼ばれており、17世紀から行政・司法・外交・貿易等の拠点であった「長崎奉行所立山役所」や「長崎会所」が置かれ、本県有数の歴史と文化を有する地区であります。この地区を本県の歴史・文化・学術ゾーンとして位置づけ、文化の香り高い魅力ある空間として再整備するために、長崎県政策創造会議「諏訪の森部会」が設置され、同部会の「諏訪の森再整備構想提言書」(平成11年12月15日)の中で「長崎県の特色ある歴史を記す古文書や重要な公文書の収蔵及び調査研究ができ、一般県民の生涯学習にも資する施設として、県立図書館敷地に文書館を設置することが望ましい」との提言を受けました。
  提言を受けた翌年の平成12年には、「歴史的文書等の収集及び保存に関する要領」、「歴史的文書等収集基準」を定め、以降、本要領等で定めた基準に沿う公文書を歴史的文書として収集、保存するよう取り扱っております。
  公文書館整備に関しては、提言を受けて以降、内部での検討を逐次重ねておりましたが、公文書等の管理に関する法律が平成23年4月に施行されたことを契機に検討が加速していきました。
  平成24年度に公文書館整備に関する方針を整理し、本県は、独立した公文書館ではなく、新しく建設される郷土資料センター内に、県の歴史的文書を保存し、広く県民に公開する公文書コーナーを設けることとなりました。
  この決定に至った背景として、本県では、明治期以前の公文書は、平成17年11月に開館した長崎歴史文化博物館に移管されており、同館にて適正に保存・利用されているということ、また、大正期以降の公文書のうち戦前の公文書は、昭和20年の原子爆弾による火災、昭和25年の立山庁舎の火災により、多くの公文書が焼失したという歴史的な経緯があります。従って、独立した施設として、公文書館を整備するのではなく、新しく建設される郷土資料センターに併設する形で話を進めることとなりました。
  「諏訪の森再整備構想提言書」を受けてから約15年の時を経て、平成26年7月の『「県立・大村市立一体型図書館及び郷土資料センター」(仮称)整備基本計画』に「公文書コーナーの設置について」正式に盛り込まれました。
  しかし、本県では、平成29年度の新庁舎への移転が大きな事業としてあったため、公文書コーナーの開設準備は一時休止しておりました。その後、移転が落ち着いた、令和元年度より徐々に再開いたしました。設置根拠、関係規程、公開用目録、運営方法などは、他自治体の取組みを研究し、聞き取りを行い、本県に合う形で準備を整えてまいりました。特に他県公文書館等と異なる点は、運営方法と思われます。郷土資料センターは教育庁が所管しておりますが、公文書コーナーは知事部局が所管しており、公文書コーナーの運営は知事部局の総務部総務文書課が行い、同課職員が輪番で勤務し、サービスの提供を行っております。

長崎県条例知事署名原本

長崎県条例知事署名原本

3.歴史的文書の現状
  先に述べたとおり、本県では、その歴史的な経緯から、令和4年3月末現在において、公文書コーナーが保存している歴史的文書は1,971冊となっております。
  歴史的文書の一例を紹介しますと、長崎県条例知事署名原本、県議会の会議録、昭和44年に開催された第24回国民体育大会の写真集などがあります。これらの歴史的文書のうち閲覧制限情報の記載がないものについては、閲覧の申出をいただいた後、即日閲覧することが可能で、このような文書は令和4年3月末現在で484冊(全体の約24%)あります。
  毎年、長崎県が職務上作成し、保存期間が満了した公文書のうち、選定したものを目録整備し、燻蒸作業を経て公文書コーナーへ配架することとしております。

4.今後の課題
  「歴史的文書等の収集及び保存に関する要領」、「歴史的文書等収集基準」を平成12年に策定後、運用しておりますが、職員の認識度の向上が課題として挙げられます。歴史的文書についての職員研修はこれまでも実施しておりますが、令和3年度からの新たな取組みとして、新規採用職員研修で歴史的文書及び公文書コーナーの役割について説明し、存在を知ってもらうことをはじめております。
  また、歴史的文書の選別にあたっては、所属職員だけに任せるのではなく、公文書コーナーを所管する総務文書課の職員も一緒になって、内容の確認を行い対応することで、歴史的文書を移管する所属が増えるよう、地道な取組みを継続して行っております。
  さらに、歴史的文書のデジタル化も課題のひとつとして挙げられます。デジタル社会の進展に伴い、当県でも、劣化が著しい歴史的文書については一部、PDF化を進めておりますが、今後も引き続き、取組んでいく必要性を認識しております。

データシート
・機関名:長崎県公文書コーナー
・所在地:〒850-0007 長崎県長崎市立山1丁目1番51号(長崎県立長崎図書館郷土資料センター内)
・電話/FAX:095-895-2113/095-895-2547
・Eメール:s01090■pref.nagasaki.lg.jp(■を@に替えてください。)
・ホームページ :https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kenseijoho/soshikiannai/koubunsyo/
・交通:長崎県営バス 桜町公園前下車 徒歩5分
長崎歴史文化博物館下車 徒歩2分
長崎電気軌道 桜町下車 徒歩7分
JR長崎線「長崎駅」下車 徒歩12分
・開設年月日:令和4年3月27日
・設置根拠:長崎県公文書コーナー設置要綱
・組織:知事―総務部―公文書コーナー(総務文書課)
・人員:総務文書課長―企画・文書班課長補佐―係長(担当)1名
※公文書コーナーでの受付業務は、総務文書課職員が輪番で対応
・建物:長崎県立長崎図書館郷土資料センターの一部に設置
・所蔵資料:歴史的文書等約2,000冊(令和4年3月末現在)
・開業日/開業時間:火曜日~土曜日/10:00~12:00、13:00~18:00
・休業日:日曜日・祝日・長崎県立長崎図書館郷土資料センターの休館日
・主要業務:歴史的文書の収集・保存業務
歴史的文書の目録作成業務
歴史的文書の利用請求受付・決定・閲覧業務
歴史的文書等の内容に関する情報の提供