国立公文書館(以下、「当館」と言う。)は、平成29年6月8日(木)、東京都内において、平成29年度全国公文書館長会議を開催しました。この会議は、公文書管理制度の円滑な運用及び歴史公文書等の適切な保存・利用を図るため、国及び地方公共団体が設置する公文書館等の長の参集を求め、全国の公文書館等が当面する諸問題についての協議を行うとともに、相互の緊密な連絡を図ることを目的として、平成元年から開催しているものです。平成20年からは、「国際アーカイブズの日」記念講演会等と併せて開催しています。
今年度は、国及び地方公共団体が設置する公文書館、公文書館設置を検討している地方公共団体等から139名が参加しました。
加藤丈夫国立公文書館長による開会挨拶
会場に集まった全国の公文書館長と関係者の方々
テーマ1「明治150年に向けた取組」
「明治150年に向けた取組」をテーマ1とした会議の前半では、まず、話題提供として、田中愛智朗内閣官房「明治150年」関連施策推進室次長より、明治150年関連施策の推進状況について、各府省庁の現時点での検討状況や、地方公共団体との協力等について紹介がありました。次に、伊藤元規ITbook 株式会社代表取締役社長から、「デジタルアーカイブの構築の推進について」と題した発表及び話題提供があり、当館のデジタルアーカイブの歩みや、国内におけるアーカイブ連携・活用事例等についてご紹介いただきました。
これらを受けて、福井仁史当館理事をコーディネータとし、田中次長と加藤丈夫当館館長による意見交換が行われました。田中次長より、各自治体が、明治150年を機にデジタルアーカイブを様々な形で見せていくことで、公文書館の認知度を上げてはどうかという提案がありました。また、加藤館長からも、これを機に所蔵資料のデジタル化の推進と、全国的な公文書館設置に向けた動きの活発化に期待したい旨発言がありました。会場からも群馬、鳥取、福島、和歌山の各県より明治150年に向けた取組をご紹介いただきました。一方で、明治150年という国の一方的な見方のみではなく、各地域の歴史や多様な見方にも配慮し、特にアジアからも見られているという意識を持って取り組んでいくべきという発言もありました。
テーマ2「公文書館職員の育成と活用」
会議後半は、テーマ2として「公文書館職員の育成と活用」と題し、まず加藤館長及び定兼学岡山県立記録資料館長による話題提供がありました。加藤館長は、当館の新館建設に向けた動きを紹介し、新施設を支えるアーキビストの専門家としての立場の明確化を唱え、策定を進めるアーキビスト職務基準や当館が行う研修等事業を通じて、認証制度につなげていきたい旨発言されました。また定兼館長は、岡山県立記録資料館の事例紹介のほか、ボランティアや同好会等も含めた県における専門機関の一員として職務を遂行する大切さを強調し、確固たる名称付与を含めた認証制度への方向性を本会議にて定めていただきたいと要望されました。
その後、再度福井理事のコーディネートによる意見交換が行われました。登壇した保坂裕興学習院大学教授は、90年代に起こった文書館運動を紹介しながらも、都道府県の公文書館における職員数は全体的に減っている旨報告されました。一方で、当館による職務基準書等を基に、アーキビストの認証制度構築に向けて前進していきたいと抱負を語られました。続いて辻川敦尼崎市立地域研究史料館長は、アーキビストの専門性の一つとして「マネージメント」の重要性を説きつつ、公文書館と専門職員が業務を通じてどう地域に貢献をするか、職務基準書を通じた人材育成の明確化が重要である旨発言されました。会場からは、原課やその他分野の専門職との信頼・協力関係構築の必要性、館のあり方による専門職員配置の違い、学芸員や歴史学以外の専門知識を持った人材の配置等、公文書館における専門職の在り方について様々な意見が交わされました。
今回の会議の成果は、「『明治150年』に取り組む基本的考え方 」「『公文書館職員の育成と活用』における基本的考え方 」(平成29年6月8日全国公文書館長会議)として取りまとめられました。
テーマ1「明治150年」関連施策の推進状況について話題提供する、田中愛智朗内閣官房「明治150年」関連施策推進室次長
テーマ1に関連する、デジタルアーカイブの構築の推進について話題提供する伊藤元規ITbook 株式会社代表取締役社長
テーマ1「明治150年に向けた取組」意見交換の様子。(左から福井理事、加藤館長、田中次長。)
テーマ2「公文書館職員の育成と活用」について話題提供する加藤館長
テーマ2「公文書館職員の育成と活用」について話題提供する定兼学岡山県立記録資料館長
テーマ2「公文書館職員の育成と活用」意見交換の様子。(左から福井理事、保坂裕興学習院大学教授、辻川敦尼崎市立地域研究史料館長。)
館長施設見学・実務担当者意見交換会
9日(金)の午前には、公文書館等の長による施設見学と、公文書館等の実務担当者による意見交換会が行われました。施設見学では、昨年度市ヶ谷に移転した防衛省防衛研究所を参加者56名が訪れ、戦史研究センター史料閲覧室および史料庫等を見学させていただきました。
54名が参加した実務担当者意見交換会では、「公文書館の利用普及(学習支援、展示)」をテーマに、各機関における実務課題等について意見交換が活発に行われました。
実務担当者意見交換会の様子