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近藤重蔵(こんどうじゅうぞう)(1771-1829)
徳川家康および歴代将軍の和歌を収録した書で、『冨士の煙』とも。文化14年(1817)、当時書物奉行だった近藤重蔵は、本書を編集して幕府(将軍)に献上しました。展示資料は、そのとき献上された浄書本と思われます。家康が詠んだ歌と若干の詩を挙げ、逸事を引用したのち、「続録」で秀忠から吉宗までの歴代将軍の歌を収録しています(4代家綱・8代吉宗の歌は収録されていない)。書名は林祭酒(林大学頭述斎)の命名。家康ほか歴代将軍に対する“消えて尽きることのない慕情”を意味しています。
信頼できる文献からだけでなく、世上に流布している歌まで拾っているのも本書の特色。たとえば「神君(家康)の御歌とて伝るもの」として、「かゝみ(鏡)にはしらぬ翁の影みえてむかしの姿いつちゆきけん」という、わが身の老いを嘆く歌なども収録されています。紅葉山文庫旧蔵。全1冊。
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