ここから本文
泰平の世に馴れきった江戸後期、武士のなかには鎧の着方すら心得ていない者がすくなくありませんでした。一方で鎧の着方は兵家(兵法の専門家)の間で「秘伝」とされ、なかには“鎧を瞬時に着る法”など奇抜な方法を伝授する者も登場します。
いくら泰平の世だからといって、鎧を手際よく身につけるのは武士の基本のはず。美作国津山藩の兵学指南役の正木兵馬が、武士社会の現状を憂い著したのが、展示資料の『擐甲図歌』です。
「擐甲」は鎧を着るという意味の漢語。著者は鎧を着る手順を18に分け、和歌を添えて、初心者でも簡単に着られるよう図解しています。享和2年(1802)5月の正木兵馬の序があり、その頃の成立。展示資料は、弘化3年(1846)の刊で、全1冊。昌平坂学問所旧蔵。
本文ここまで