西洋植物学の伝来

草木図説(そうもくずせつ)

請求番号196-0186

飯沼慾斎いいぬまよくさい著。安政3年~文久2年(1856~1862)刊。西洋の植物分類体系を導入した植物図鑑。リンネの24綱分類に従って植物が配列され、観察に基づいた写生図と解説からなり、1200種以上の草木を収録しています。葉の表を黒色、裏を白色で描き分けており、『絵本野山草』や『花彙』の影響がみられます。飯沼慾斎(1782/1783~1865)は江戸時代後期の医者、植物学者。江戸で宇田川玄真うだがわげんしんに蘭学を学んだ後、美濃国大垣(現在の岐阜県大垣市)で蘭方医として開業しました。天保3年(1832)、家業を義弟に譲って隠居。以後、植物研究に力を注ぎました。全20冊。大阪司薬場旧蔵。

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画像は、1. ミズヒキグサ、2. カテンソウ、3. センニチソウ(いずれも冊次5)。右頁に植物の名称、生育環境、特徴、構造等について解説が記され、左頁には植物の全体図や花の構造図が掲載されています。

植学啓原(しょくがくけいげん)

請求番号197-0198

宇田川榕庵うだがわようあん著。天保5年(1834)刊。我が国最初の体系的な西洋植物学の概説書。ラテン語「botanica」を「植学」と訳していますが、これは現在の「植物学」に相当します。本書は、リンネの24綱目の分類法、植物の形態と生理などを解説しています。また、巻末に「植学啓原図」として、植物の形態図、花粉の顕微鏡図、発芽の図などを木版色刷で掲載しています。宇田川榕庵(1798~1846)は江戸時代後期の蘭方医、蘭学者。オランダ語の書物を通して、当時の西洋における植物学や化学を学びます。江戸でシーボルトと交流し、シーボルト持参の洋書を閲覧するなどして西洋の植物学の知識を深めました。全3冊。文部省旧蔵。

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画像は、巻末に掲載された「植学啓原図」より(冊次3)。

  1. 1. 第7図:鐘空木(ツクバネウツギ)・都苦抜涅(ツクバネ)、第8図:水仙(スイセン)。
  2. 2. 第11図:午時花(ゴジカ)・金合歓(キンゴウカン)・朱槿(ブッソウゲ〈ハイビスカス〉)、第12図:山椒(サンショウ)・一葉(ハラン)。
  3. 3. 第13図:春蘭(シュンラン)・唇花(ラショウモンカズラ)・撒爾費亜(サルビア)、第14図:鷺草(サギソウ)・菫菜(スミレ)。

東京大学小石川植物園草木図説(とうきょうだいがくこいしかわしょくぶつえんそうもくずせつ)

請求番号ヨ470-0013A

伊藤圭介いとうけいすけ賀来飛霞かくひか編。明治14年(1881)~同17年刊。小石川植物園の植物図鑑。明治10年に『小石川植物園草木目録』、同13年には目録の後編が刊行されており、本書はその図譜にあたります。画の質や印刷の面でも優れており、世界の植物研究者から注目されました。伊藤圭介(1803~1901)は幕末・明治期の蘭方医、植物学者。東京大学理学部教授などを務め、明治21年には日本最初の理学博士となりました。賀来飛霞は本草学者で、伊藤圭介の弟子です。全2冊。

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画像は、1. ギンフクリン(牡丹)、2. モクレン(木蘭)、3. サラサモクレン(いずれも冊次1)。精緻で色鮮やかな図が描かれ、図の下部には、植物の和名、漢名、羅甸ラテン名が記されています。画像は図のみですが、本書には、図の冒頭に植物の解説も記されています。