2025年10月27日(月)から30日(木)まで、国際公文書館会議(International Council on Archives, ICA)の大会が、スペイン・バルセロナの国際会議場において開催され、国立公文書館(以下「当館」という。)から古矢一郎理事他2名が参加しました。
ICAはアーカイブズに関する国際非政府組織で、150を越える国・地域の公文書館、専門職団体、専門職教育機関などが加盟しています。ICAの大会は4年に一度開催されますが、今回は新型コロナウィルス感染症の影響で2度の延期を経て2023年にアラブ首長国連邦の首都アブダビで開催された大会につづき、2年ぶりの開催となりました。
スペインとICAが共催した本大会は、「過去を知り、未来を創る」(Knowing Pasts, Creating Futures)を総合テーマに行われました。大会は主に、専門プログラム(基調講演、個別発表、ワークショップ、ポスター発表等)、総会を含むICA運営会合、国立公文書館長フォーラムの3つで構成され、約100の国と地域から、アーカイブズ関係者ら2,000人以上が参加しました。
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1.総会(10月28日)
総会ではICAの運営に関する重要事項が決定されます。今回の総会では、ICA会長Josée Kirps氏の任期を1年延長し2027年までとすることが可決されました。また、2025年春の選挙の結果、ICAプログラム担当副会長がアラブ首長国連邦国立図書館公文書館のHamad Abdulla Al-Mutairi氏に変わることが報告されました。この他、ICAの諸活動に貢献があった個人に贈られるフェローの称号がDidier Grange氏らに授与されました。財務関係では、2026年の分担金の増額や予算案について財務担当副会長による説明に続き採決が行われ、原案どおり承認されました。さらに、2年後の2027年11月、マレーシアのサラワク州クチンにおいてICAの会合(Conference)※が開催されることが報告されました。
※ICAでは、4年に1度大会(Congress)が開催され、大会がない年に隔年で会合(Conference)が開催されます。
2.専門プログラム(10月27日〜30日)
10月27日(月)に、アーカイブズの記述に関するものなど複数のワークショップ、及びシンポジウム「記録遺産の盗難および不正取引を防ぐには」が開催されました。
10月28日(火)から30日(木)には、上記の総合テーマのもとでMercé Crosas氏らよる3つの基調講演、1つの基調パネルが行われました。また5つのサブテーマ「記憶の管理/アイデンティティの保持」、「紛争、災害、避難民」、「権利の記録」、「デジタルとアクセスのしやすさ」、「アーカイブズの将来」のもとで90のセッション、57のポスター発表が行われました。
2年前のアブダビ大会に比べ、AI(Artificial Intelligence)に関する発表が格段に増えていることがアーカイブズを取り巻く技術変革の進展を印象付けました。参加希望者が多いため、入場制限がかかったAIに関するセッションもありました。
>>大会専門プログラムはコチラ[PDF](英語)
当館からは、10月29日(水)午後の「国立公文書館長フォーラムのセッション」において、古矢一郎理事が「日本国立公文書館の将来」というタイトルで発表を行いました。2030年に向けた新館構想の方向性などについて報告し、会場からの施設の耐震性に関する質問に答えました。
>>当館の発表資料はコチラ[PDF](英語)
3.視察(10月31日、アラゴン王宮文書館旧館・バルセロナ市立歴史公文書館)
会期中及び、大会会期後の10月31日(金)に、カタルーニャ州にある複数のアーカイブズの視察プログラムが組まれました。当館参加者は、旧市街にあるアラゴン王宮文書館旧館を訪問し、建物の歴史の説明を受けたのち展示「女性の声 アラゴン王宮文書館文書の中の900年」を観覧しました。
また、公式視察プログラム外の時間に、バルセロナ市立歴史公文書館のご好意により、同館を視察しました。バルセロナ市の歴史をすべて保存するという壮大な計画から生まれた同館について、所蔵資料や組織、課題についての説明を受けました。

開会式会場

古矢理事による発表

アラゴン王宮文書館の展示風景

バルセロナ市立歴史公文書館の閲覧室
※ICAバルセロナ大会の詳しい内容は、当館の情報誌「アーカイブズ」第99号に掲載する予定です。