国立公文書館研究紀要『北の丸』第47号の全文を掲載しました


『北の丸』では、当館が所蔵する資料をより多くの方に利用していただくことを目指し、当館が実施する各種調査・研究の成果を紹介しています。

「人事院移管文書の基本的性格」は、人事院における組織構造と文書管理及び文書の移管基準と当館への文書移管実績との関係を分析し、人事院移管文書の特徴を明らかにしたものです。第一章では、人事院における文書管理の変遷を概観し、人事院で作成・取得、保存・管理された文書群がどのような構造を有するかを検討し、第二章では、前章で明らかにした文書群の構造の中に移管文書を位置づけ、その特徴を明らかにしています。

「国際標準に基づくアーカイブズ所蔵機関情報記述の試み(2)」は、国際公文書館会議(ICA)が2008年に発表した「アーカイブズ所蔵機関の記述に関する国際標準」(ISDIAH) に基づき、宮内庁宮内公文書館・外務省外交史料館に関する記述を試みたものです。なお、この記述の試みは、当館の統括公文書専門官室が担当しました。

「『思忠志集』件名細目(下)」は、旗本の天野長重(1621〜1705)が遺した『思忠志集』全二十二冊について、その成立の経緯と天野長重の履歴等を紹介し、あわせて本文に補記された件名を順に列挙したものです。『思忠志集』は、長重が四十年以上にわたって書きとめた教訓・見聞・政策論・健康法等を収録し、その件数は2015件、江戸時代前期の世相と風俗、そして武士の生活や思想を知る一級の史料といえます。なお、本稿の前編は第46号に発表しています。

「当館所蔵の「絵入り本」解題(3)」は、貴重な古写本の陰に隠れて手つかずの状態となっていた「絵入り本」(本文に挿絵や図版などが添えられた書籍)について、書誌情報や内容などを解説したもので、第45号から発表しているものです。

「『視聴草』所収国文学系資料解題(1)」は、江戸時代後期の幕臣である宮崎成身が編纂した『視聴草』に収録された資料のうち、物語や和歌など国文学分野に該当する資料について、書誌情報、解説を記したものです。なお、本稿が対象とした資料は当館が所蔵する『視聴草』の稿本で、長く成身自身の手元にあったものであり、成身が自ら写した書物や、収集した小冊子1800点あまりの資料が178冊に合綴されています。

「当館所蔵 林羅山旧蔵書(漢籍)解題(1)」は、当館が所蔵する漢籍のうち、林羅山(はやし・らざん)が所蔵していた書物を調査したものです。林羅山の蔵書は「明暦の大火」によって焼失してしまいましたが、幸いにも二人の息子に分与していた書籍が焼失を免れ、現在では437部4385冊の漢籍が当館に収蔵されています。後半部に附した一覧表は、現在当館が所蔵している林羅山旧蔵書(漢籍)の一覧表であり、前半部の解題は、この一覧表のうち特筆すべき事項のある書物の解説です。

(平成27年2月18日)


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