38. 愛宕宮笥
防火・消火のための知識や心得は、民間にも蓄積されていました。元禄12年(1699)に京都で出版された本書には、炬燵から火が出たとき、蚊帳に火が付いたとき、あるいは鍋で豆腐を揚げていて突然発火したとき等々、さまざまなケースの消火法が記され、あわせて消火作業の際に煙にむせない秘訣なども紹介されています。著者は未詳ですが、序文に「自分は昔から一筋に火難を避ける方法を研究しかつ実験してきた」(意訳)とあり、この方面の熱心な研究家だったと思われます。書名の「愛宕」は京都の愛宕神社から採ったもの。愛宕神社(京都市右京区嵯峨愛宕町)は古くから火伏(火よけ)祈願の神社として知られ、同社が発行する火伏の札は全国に普及していました。全4冊。