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8. 臥雲式綿紡績機械の発明(臥雲辰致)

第一回内国勧業博覧会を指導していたG・ワグネルは、多くの出品物の中から臥雲辰致(がうんときむね)(1842―1900)の精紡機を「余以テ本会中第一ノ好発明トナス」と絶賛し、臥雲は最優秀賞である鳳紋章を受章しました。

臥雲の発明品は、操作中にガラガラと音を出すことから「ガラ紡」と呼ばれました。その仕組みは、手回しのハンドルを回転させると綿筒と糸巻が同時に回転し、綿筒の中の綿が撚りをかけられ、糸となって糸巻きに巻き取られるというもので、それまでの糸車による糸紡ぎから数十倍に生産力を高める画期的な発明でした。

ガラ紡は博覧会を契機に全国に急速に普及しましたが、安価で構造が簡単だったため容易に模倣され、模造品が大量に横行しました。さらに、当時は特許制度が整備されていなかったので、臥雲は発明に対して保護を受けられず、生活に困窮しました。こうした臥雲の悲劇は、以後特許制度の創設を促す理由の一つとしてしばしば持ち出されることになりました。

展示資料は、明治15年に臥雲が発明の功績により藍綬褒章を受章した際の文書と明治14年頃のガラ紡の広告です。長野県から農商務省への上申書には、臥雲が発明特許の保護を受けられず困窮したことや、第一回内国勧業博覧会出品以後も困難に屈せず発明改良を重ねたことが記されています。また、広告には「唯擬造効用ヲ誤ルモノアルヲ恐ル世人宜ク上ノ焼印ヲ証トシテ弁識スヘシ」とあり、模造品と区別するための焼印が載せられています。

長野県平民臥雲辰致ヘ褒章授与ノ件
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関連資料

臥雲式綿紡績機械

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