アーキビストに聞く vol.15 AI時代のアーキビストとして私たちには何ができるのか 公文書専門官 浅井 良亮さん

AIがめざましい進化を続ける昨今、社会のあらゆる分野において、AIの導入が進められています。私自身も、アーカイブズ分野においてAIをどのように活用できるのか、について高い関心があり、国内外の研究者や類縁機関の関係者との議論を通じて、その可能性を模索しています。
 ところで、AIの役割を考えるということは、同時に、私たちアーキビストにしか果たせない役割とは何か、について考えることです。このことは、アーキビストの存在意義を捉えようとする、本質的な問いでもあります。しかし、ハード面での検討が進む一方で、残念ながら、ソフト面の議論は極めて低調です。私たちアーキビストには何ができるのか、今こそ実直に向き合う必要があるのではないでしょうか。
 私は現在、本務として、国の公文書管理に関する業務に携わっています。行政文書の評価選別のほか、公文書管理制度の運用に対する助言などを行っています。この業務は、歴史資料として残すべき公文書を見極める、とても重要な取組みです。どのような歴史資料が残されていれば、将来の国民が今という時代のあり方を知る手がかりになるのか。その勘所は、大学で歴史学を専攻し、アーカイブズを利用してきた経験によって養われてきたように思います。
AI活用のイメージ  プライベートでは、余暇の大半をつかって、歴史資料保存の活動に携わっています。日本各地の地域や個人の手許に残されている歴史資料について、調査・整理を行い、保存・活用につなげる取組みです。あちこちの現場に足を運び、資料所蔵者や地域の方々と交流するなかで、歴史資料を取り巻くさまざまな課題が見えてきます。それらを解決するために、限られた条件のなか試行錯誤することで、自分自身が常にアップデートされているように感じます。
 国と地域、制度と実務、保存と活用…さまざまな取組みを通じて培ってきた知識と経験を通じて、公文書や歴史資料を未来に継承する仕組みをトータルに考えていく。これが、AIには置き換えることのできない、私だからこそ果たすことができる役割だと考えています。
 AIと共存する時代は、もうそこまで来ています。来るべき新しい時代に、私たちには何ができるのでしょうか。この問いに向き合い続け、アーキビストだからこそ果たすことのできる役割を見つけることが、とても大切なのだと思います。