花押の二合体は、名字と名前から一字ずつをとることが通常ですが、なかには名前から二字をとったり、名字から二字をとったりする場合もあります。
加藤髙明の花押をみてみましょう。この花押の左側は「日」を表し、右側は「月」を表しています。ということは、髙明の「明」の一字体かと思われますが、実は名前から二字とった二合体です。左側の「日」は「明」ではなく「髙」の一部の「日」、「明」からは「月」の部分だけが採られています。
花押に「髙」という字から「日」を採用する例は、北条髙時や足利髙氏(後の尊氏)の頃からあったと言われています。二字からそれぞれの部分を取り、このように、花押に使用する例もあります。
主要参考文献
佐藤進一『花押を読む』(平凡社、1988年)
加藤髙明(かとう たかあき)
[1860-1926年]
愛知県生まれ。東京大学を卒業後、三菱に入社。
1886年、岩崎弥太郎の長女と結婚。1887年、官界に転じる。
第四次伊藤内閣、第一次西園寺、第三次桂、第二次大隈各内閣で外相を歴任。1916年、憲政会総裁。24年には首相に就任。普通選挙法、治安維持法を成立させた。