花押と顔 加藤友三郎

加藤友三郎の花押

花押の特色に、各大臣の経歴が現れていることがあります。例えば、官僚出身の大臣は、自分の姓または名の一字をとった「一字体」が多く、学者および外交官などの経験がある大臣は、イニシャルの組み合わせやローマ字の筆記体を縦に書いたものが多いそうです。
また、陸軍・海軍の軍人であった総理大臣の花押は、上と下に線を入れた「天地二線」や、あるいは底線を引いたものが特徴として見られます。

今回ご紹介する花押は、加藤友三郎(かとう ともさぶろう)の花押です。名前の二文字、「友」と「郎」を組み合わせ、底線を足したデザインです。氏名の二文字が入っている花押は他にもありますが、この花押に見られる底線に、海軍の軍人であった加藤の経歴が現れているといえるでしょう。

花押の形から、その人の経歴を読み解くことも面白いかもしれませんね。

主要参考文献
佐藤進一『花押を読む』(平凡社、1988年)

加藤友三郎

加藤友三郎(かとう ともさぶろう)
[1861-1923年]

広島生まれ。1880年海軍兵学校卒業。
1904-05年の日露戦争では連合艦隊参謀長を務めた。15年には海軍大将に就任し、15-22年は海軍大臣を歴任した。
1921-22年ワシントン会議へ出席。1922年に内閣総理大臣就任。翌年、在職中に死去。その8日後、関東大震災が発生しました。