花押と顔 桂太郎

原敬の花押
写真①
原敬の花押
写真②

これまでの連載でさまざまな花押を紹介してきましたが、さらに珍しい形の花押もあります。
例えば戦国時代では「麒麟」の「麟」字を形象化した花押の織田信長、鳥を形象化した花押の伊達政宗などがいます。

実は明治期以降にも、このような大胆な花押を使っていた人物がいました。
原敬です。

原敬の花押は、左の①、②のとおり2種類ありますが、②の花押は、「敬」の偏部(左側の部分)を大胆に形象化したものだそうです。
大きな円の中に点を書き入れており、一見、名前をもとにしていると気がつかないぐらいですが、とてもバランスのとれた形をしています。

公文書に捺されている明治以降の大臣たちの花押も、戦国武将に負けず劣らず、個性があって面白いですね。

主要参考文献
佐藤進一『花押を読む』(平凡社、1988年)

原敬

原 敬(はら たかし)
[1856-1921年]

岩手県生まれ。新聞記者を経て外務省に入省し、外務次官などを歴任。
官界引退後、立憲政友会の創立に参加。逓相・内相を務めたのち、立憲政友会総裁に就任。
1918(大正7)年、総理大臣となり、初の本格的政党内閣を結成。「平民宰相」として世論からの支持を得た。
1921(大正10)年、東京駅で刺殺。