30. 想山著聞奇集
文政13年閏3月29日(1830年5月21日)、所々で「昇龍」(竜巻)があり、江戸の町は雷雨と雹に襲われました。尾張藩士で書家の三好想山(?―1850)が著し嘉永3年(1850)に刊行された奇談珍話集『想山著聞奇集』に、この時の雹の大きさや被害状況が細かく記されています。それによれば、江戸城本丸・市谷・大久保・四谷・赤坂に降った雹は大豆ほどの大きさでしたが、小石川や白山辺りには拳大の雹が降り、瓦を破損させ畑の苗を全滅させたよし(小日向には茶碗大の雹まで降ったそうです)。もちろん負傷者も出ました。本郷丸山の福山藩邸(中屋敷)に降った雹の重さは220匁(825グラム)。同藩邸の婦人が二の腕を直撃されて負傷したほか、雹を足に当てた下男が歩けなくなったと書かれています。江戸市中では、不忍の池から龍が出たとか、湯島の切通しに鰹が降ってきたとか、さまざまな風説がまことしやかにささやかれました。全5冊。