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28. 官営愛知紡績所

民間での機械織機の開発とともに繊維産業の近代化に大きな役割を果たしたのは、各地に設けられた洋式の紡績工場でした。明治政府は、官営紡績事業として愛知に官営工場を設置したほか、紡績業育成を目的として英国から輸入した二千錘のミュール精紡機を民間に無利子で貸し付けました。これにより明治13年から17年の間に全国で10カ所の民営紡績工場が設置されました。

展示資料は明治14年に愛知県の岡崎に造られた官営愛知紡績所の図面です。この紡績所は30馬力のタービン水車を動力としていたので、図には水路が描かれています。「機械場」と記されているところが本工場で、イギリス製のミュール紡績機械が設置されていました。

全国唯一の官営工場だった愛知紡績所は、紡績技術者の指導を行うなど紡績業普及の指導的役割を果たしましたが、明治19年民間に払い下げられた後、同29年火災により閉鎖されました。愛知紡績所に限らず、この時期政府主導で設置された紡績工場は大半が失敗に終わりました。しかし、三重の紡績工場のように民間資本の導入によりその後発展したものもあり、紡績業は次第に民間の手に委ねられていくこととなりました。

単行書・愛知紡績所沿革
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