令和4年度 全国公文書館長会議&「国際アーカイブズ週間」記念講演会

Part1令和4年度全国公文書館長会議を開催

 国立公文書館は、令和4年6月10日(金)、東京都内にて全国の公文書館等の長や関係職員が集まる「令和4年度全国公文書館長会議」を開催しました。新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策が施された会場に、国及び地方公共団体が設置する公文書館、公文書館設置を検討している地方公共団体等から85機関153名(会場:75名、オンライン:78名)が参加しました。

会場の様子

会場の様子

 公文書管理制度の円滑な運用や歴史公文書等の適切な保存・利用を図るため、全国の公文書館等の長や関係職員が集い、各館が抱える諸問題の協議や連携を図ることを目的に開催している同会議。今年度は、「認証アーキビストの定着と拡充に向けて」及び「学校連携(展示・学習機能)に係る取組」というテーマで開催しました。

 冒頭、鎌田薫国立公文書館長から「全国公文書館長会議は、国民共有の知的資源である公文書等を未来に活かす、という思いを共有する全国の公文書館の館長の皆様と、各館が抱える当面の諸問題についての協議を行うなど、相互の緊密な連携を図る重要な機会であり、当館としても、この会議の成果も活かしながら、今後も公文書館及び公文書管理制度の発展に貢献できるよう尽力する」と挨拶がありました。
 続いて、来賓挨拶として内閣府大臣官房公文書管理課長の吉田真晃氏から、国における公文書のデジタル化への取組、地方自治体との情報連携の強化、国立公文書館の新館建設や機能拡充に向けた検討等の話がありました。
 議題に入り、「認証アーキビストの定着と拡充に向けて」では、佐々木奈佳国立公文書館次長から、アーキビスト認証の基本的な仕組みやこれまでのアーキビスト認証の成果、今後の認証アーキビストの定着と拡充に向けた取組について報告がありました。

活発に行われた意見交換

活発に行われた意見交換

 休憩を挟んだ後、「学校連携(展示・学習機能)に係る取組」に移りました。まず、筑波大学図書館情報メディア系教授の白井哲哉氏が、「アーカイブ施設(文書館・公文書館)による学校連携の取り組み」と題する基調講演を行いました。アーカイブ施設が学校連携にどのように取り組み、これまでどのような成果を挙げたかについて話されるとともに、今後の課題として、デジタル化やコロナ禍におけるアーカイブ施設の利用普及事業と学校連携などの課題が提起されました。
 次に、文部科学省初等中等教育局視学官の藤野敦氏から、学校側から求められている公文書・公文書館の活用方法について、寺越将幸国立公文書館首席公文書専門官から、国立公文書館における学校連携の具体的な取組事例について、報告が行われました。
 その後、パネルディスカッションとして、白井・藤野両氏に再度ご登壇いただき、会場・オンラインの参加者を交えて、意見交換や事例紹介を行いました。全国の各公文書館の館長等から、これまで実施してきた学校連携の取組事例や、学校との連携が継続できる環境づくり・公文書を活用した公民教育の必要性などの課題について発言があり、それに対して白井・藤野両氏からは、学校が使いやすい資料を準備すること、資料の読み方・活用法を伝えることが大切であるなどの提言が行われ、終始活発な議論が交わされました。会場にいる参加者も熱心な表情で聞き入り、時折うなずきながらメモを取るなど、盛況のうちに全国公文書館長会議は閉会しました。

鎌田 薫

鎌田 薫
国立公文書館長

吉田 真晃

吉田 真晃
内閣府大臣官房
公文書管理課長

佐々木 奈佳

佐々木 奈佳
国立公文書館次長

白井 哲哉

白井 哲哉
筑波大学図書館
情報メディア系教授

藤野 敦

藤野 敦
文部科学省
初等中等教育局視学官

寺越 将幸

寺越 将幸
国立公文書館
首席公文書専門官

Part2「国際アーカイブズ週間」記念講演会を開催

狂言師 野村万作氏

狂言師 野村万作氏

弁護士 山本庸幸氏

弁護士 山本庸幸氏

 6月9日の「国際アーカイブズの日」(※)を挟む1週間は、「国際アーカイブズ週間」として、世界各地でアーカイブズに関するさまざまなイベントが催されています。国立公文書館でも、平成20年以降、「国際アーカイブズの日」(令和元年度からは「国際アーカイブズ週間」)を記念して講演会を開催しています。
 今年度で14回目となる講演会は、国立公文書館開館50周年記念キャッチコピー「記録を守る、未来に活かす。」をテーマに、記録としての公文書や伝統をいかに守り、未来に継承・活用していくかについて、お二人の講演者をお招きし、ご講演いただきました。
 はじめに、狂言師(人間国宝・文化功労者・日本芸術院会員)の野村万作氏から、狂言との出会いや伝統芸能との向き合い方、またその継承の仕方を通じて、記録を残すことの意味や重要性について、同氏のこれまでの足跡を捉えた映像とともにお話しいただきました。
 続いて、弁護士(元最高裁判所判事・内閣法制局長官)の山本庸幸氏から、ご自身の経歴や人生のターニングポイントとなった出来事などをお話しいただくとともに、行政、立法、司法という分野でのご経験を踏まえ、記録を未来に残すことの意味・重要性についてご講演いただきました。お二方からの貴重なお話の数々に、参加者も真剣な表情で耳を傾けていました。
 なお、今回の講演会は、会場の様子をオンライン中継し、全国の公文書館等の長や関係職員のほか、アーカイブズ関係者、一般聴講者など、174名(会場:59名、オンライン:115名)の参加がありました。

(※)各国のアーカイブズ機関の相互連携と発展を目的とする国際非政府組織である国際公文書館会議(International Council on Archives、ICA)が、平成19年11月に設立60周年を記念して、設立日の6月9日を「国際アーカイブズの日」と定めました。令和元年以降は、この日を挟む1週間を「国際アーカイブズ週間」としています。

国際アーカイブズ週間
ICAの取組

 ICA は、2022 年の国際アーカイブズ週間に際し、アーキビストたちによるTwitter での交流を呼びかけるとともに、オンラインのトークイベントを開催しました。トークイベントのテーマは、①アーカイブズと記録管理への先端技術の適用、② ICA の人材育成活動、の2つです。①では、AI(人工知能)によるDeepLearning(深層学習)を用いた記録管理の質的向上の可能性や、デジタルデータの長期保存技術などについて議論されました。②では、ICA が若手アーキビスト育成のために行っている新規専門職プログラムを中心に、その内容や意義が紹介されました。

International Archives Week