公文書に学ぶ 大人の美文字講座

公文書の数だけ文字がある。公文書の中には、美文字のヒントがたくさん隠されています。日本書道師範の涼風花先生が当館所蔵資料の美文字ポイントを解説します。
涼 風花(りょう ふうか)先生


民法第一編第二編第三編
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今号の美文字資料(請求番号:御02186100)
民法第一編第二編第三編

民法は、第1編総則・第2編物権・第3編債権・第4編親族・第5編相続の5編で構成され、第1~3編は明治29年(1896)4月27日公布の法律第89号で、第4~5編は明治31年(1898)6月21日公布の法律第9号で定められました。以来、改正を加えられながら現在まで存続しています。画像は明治29年法律第89号の御署名原本です。なお、令和4年(2022)4月1日から民法の成年年齢は18歳になります。

涼先生の美文字解説

柔らかく厚みがある安定した楷書

 この文書の文字の特徴は、直線的ではない柔らかさです。「有」の膨らみを持つ縦の線や折れにはこの柔らかさがよく出ています。また、「節」の文字に見られる幅からは懐の広さも感じられます。文字の中に広がりを作ることで生まれた余白は、文書を読みやすくする効果をもたらします。
 一方で文字の一つ一つを見てみると柔らかいばかりでなく、「人」の右払いや「約」のハネにはしっかりとした厚みが見られ、どっしりとした安定感があります。
 とても丁寧に書かれていて、おおらかさと余裕が感じられる楷書と言えます。

「有」「節」「人」「約」


今号の手習い「令」

point

字形に合った方向に線を引く

中心がやや左にある外形のため、一画目は中心より左から縦方向を意識して書きます。右払いは段々と筆圧を深めて、一旦止めてから右横に抜き去るように払いましょう。三画目は短く真横に打ち、五画目は筆を立てて真下に下ろすことで、次の文字に繋げやすくします。