第7回「アジア歴史資料センターのシステムが新しくなりました!」

国立公文書館で働く人々は、日々どのようなことを考え、どのような業務を行なっているのでしょうか?知られざる彼らの素顔を紹介するこのコーナー、今回はアジア歴史資料センター(以下:アジ歴)の担当係長にせまります!

アジ歴に勤められた理由と経緯を教えてください。

私は外務省の一介の職員でして、外務本省と在外公館との間の外交文書の発受に長いこと携わっておりました。
アジ歴には平成二六年七月に出向して参りました。着任前、アジ歴については、漠然としたイメージしか持ち合わせていませんでした。加えて、アジ歴ではアジア歴史資料をデジタルアーカイブとしてインターネットで公開していますが、当初は「デジタルアーカイブ」に対する理解も曖昧でした。
しかし、外務省の先輩方や文部科学省からの出向者である同級生をはじめ、全てのスタッフから丁寧なレクチャーを受けたことが、仕事を進める上で安心材料の一つとなりました。

アジ歴について教えてください。

2001年に開設されたアジ歴は、1868年頃から1945年頃までのアジア歴史資料を、インターネットを通じて提供する電子資料センターです(アジ歴内に閲覧室はありません)。基本的に「いつでも」「どこでも」「だれもが」「無料」で資料を閲覧・印刷することが可能です。

アーカイブしているアジア歴史資料は、近現代の日本とアジア近隣諸国等との関係に関わる重要なわが国の公文書及びその他の記録です。この資料は戦前の公文書の主要な所蔵機関である国立公文書館、外務省外交史料館、防衛省防衛研究所戦史研究センターに所蔵されているもので、各機関で電子化された資料の提供を受け、アジ歴でデータベースを構築し公開しています。当センターのように、最初からデジタルだけで提供している機関は希有ではないでしょうか。利用者の皆様の中には、出兵したご遺族の足取りを辿る方もいらっしゃいます。

現在、約200万件の目録データ、約3000万画像を提供し、今後も随時資料を追加していく予定です。また、毎年1回新規公開している「インターネット特別展」も、利用者の方に関心を寄せて頂けるコンテンツを充実させていきたいです。
特に、昨年オープンした「アジ歴グロッサリー」は、地図や年表、組織変遷などを辿って用語を特定し、資料検索を行なうツールです。あらかじめ用意されたキーワードを選んで検索するものなので、慣れない方への手助けになると思います。

「アジ歴グロッサリー」は用語を特定し、資料検索を行なうツール
「アジ歴グロッサリー」は用語を特定し、資料検索を行なうツール
https://www.jacar.go.jp/glossary/

今年9月に導入された新システムについて教えてください。

基本的な操作は以前のシステムを踏襲しています。しかし画面は青を基調としたデザインに変更したので、見た目が大きく変わったと感じる方もいらっしゃるかもしれません。タブレット端末やスマートフォンなどでご覧になる方も多くいらっしゃることを想定し、画面イメージが崩れることなく表示できる「レスポンシブデザイン」を採用しました。操作にご不明な点があれば、検索ガイド閲覧ガイドをご覧ください。

青を基調としたデザインに刷新されたホームページ
青を基調としたデザインに刷新されたホームページ
https://www.jacar.go.jp/

これまで通り、目録には原文の内容の文頭から約300文字の記載もあるので、入力したキーワードが検索の助けになるはずです。画像データは汎用性の高いPDF形式で閲覧やダウンロードできるようになりました。気になる資料を見つけたら、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアにも対応しておりますので、ぜひ共有してみてください。また、アジ歴の顔であるホームページも、検索システムの更新を機に、情報の整理に努め、分かりやすいデザインにしました。

リニューアルした検索システムの画面
リニューアルした検索システムの画面
https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/default

現状の課題や今後の展望について教えてください。

アジ歴は年に数回、図書館や博物館関係の大会にブース出展を行なっています。これはアジ歴の知名度を向上させ利用者の増加を図る広報活動です。ブースでは、リーフレットやしおり、加えてアジ歴で実際に公開している資料を図柄にした絵葉書を配布しております。私もこれまでに数回ブースに立ち、広報活動を行なってきました。アジ歴を利用している、あるいはよく知っているという方も多くいらっしゃるのですが、その一方で全くご存知のない方もまだまだ多くいらっしゃいます。ただ、そのような方の中にも、アジ歴の紹介をすることにより「このような機関が存在するのか!」と驚かれる方もいらっしゃいます。アジ歴を知る方が1人でも多く増えるよう、アジ歴としてどのような広報活動が望ましいのか検討し、可能なことから実施していきたいと思います。

次に、今後戦後期、具体的には1972年頃まで年代域を拡大して、アジア歴史資料を提供していくこととなりました。わずか40数年前までの出来事についてのアジア歴史資料でありますので、「歴史」ではなく「経験」された方も多くいらっしゃるはずです。公開にあたっては、現在公開している資料よりも高い精査が必要になると考えられます。

また現在、琉球大学と連携し、アジ歴の検索システムから同大学のデジタルアーカイブにリンクして同大学保有のデジタル資料を閲覧できるようになっております。これは、現在アジ歴が公開している3館以外のアジア歴史資料に、アジ歴を通じてアクセスできるようにする取り組みです。言わば、アジ歴をアジア歴史資料の「ハブ」とする取り組みで、今後も他の大学や公文書館などと連携し、いっそうの充実を図っていきたいと考えております。本年度中には、2つの機関がリンクに加わる予定です。資料をダウンロードしたり、二次利用する際は、各庁・大学のガイダンスに従ってください。

利用者へのメッセージをお願いします。

昨今、日本や日本人を取り巻く環境は、劇的かつ混沌とした変化を続けています。将来、歴史の教科書に必ず掲載されるのではないかと思われる出来事も次々と発生しており、今後、日本や日本人がこれまでに経験したことがないような大きな課題に直面するかもしれません。その際、先人たちが築き上げてきた史実を、当事者間で共有並びに理解することが、課題を解決する一つの方法となることでしょう。アジ歴の検索システムでご覧頂ける資料が、その一助となれば幸いです。

一方、いつもご意見をお寄せ頂きありがとうございます。今回のリニューアルに際しても、それらを参考にさせて頂き改善を図りました。更に、目録データの誤りを随時ご指摘頂くことが、目録の精度の向上にも繋がっております。そのような意味で、利用者の皆様と共にアジ歴を作り上げているとも言えます。今後もお気づきの点がございましたら、ご教示ください。

アジ歴がアジア歴史資料の「ハブ」になれるよう取り組んでいきたい