10. ぼん 伊勢物語

 「男」の人生と恋愛模様を描いた『伊勢物語』は、様々な内容が和歌を中心に語られていることから近世の文人たちにも親しまれました。本書は、慶長13年(1608)に出版された「嵯峨本」と称される『伊勢物語』です。
 「嵯峨本」とは、角倉すみのくらあん(1571〜1632、江戸初期の豪商、能書家)やほんこうえつ(1558〜1637、江戸初期の能書家、芸術家)によって製作された、美術的な意匠を施した木活字印刷の豪華版のことです。美しいいろがわり料紙を用い、表紙にはで草花の模様が印刷されています。あまりに豪華な本であるため、出版当時は、関係者のみに譲られたと考えられています。
 この「嵯峨本」の『伊勢物語』は、我が国で初めて挿絵入りで出版された古典文学作品であり、かつ、それまで写本で伝わっていた『伊勢物語』を初めて版本として出版したという意味で、文学史上、画期的な本だと言えます。なお、奥書には、校訂に参加した中院なかのいんみちかつ(1556〜1610、江戸初期の公家、歌人)自筆の花押があります。内務省旧蔵。全2冊。

【請求番号 特060-0017】

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