全国各所にある公文書館。その成り立ちや特徴は実に様々です。そこで今回は、特徴的な連携を通じて様々な活動をする公文書館として、茨城県立歴史館、福岡共同公文書館、奈良県立図書情報館の3カ所をご紹介します。
▲茨城県立歴史館の外観
文書館と博物館が併設された「茨城県立歴史館」
茨城県水戸市にある茨城県立歴史館は、県の歴史に関する資料を収集、保存、調査研究及び公開する施設として1974年に開館しました。県史編さん事業に伴い収集した史料の保存と公開という課題をきっかけとして、当初から文書館機能と博物館機能を併せ持つ館として構想されたことが特徴といえます。
文書館機能としては、現在、行政資料や古文書など30万点以上を収蔵し、閲覧に供しています。2024年度に歴史公文書等のデジタル化事業に着手し、年度末からインターネットを介して画像データを順次公開していく予定です。また、国立公文書館をはじめ、大学や他の資料保存利用機関と地域を越えたネットワークの中で事業を進めることもあります。2024年7月には、国立公文書館つくば分館の夏の企画展「いただきます!~公文書でえがく学校給食~」とのコラボ企画で、昭和30年代~50年代に茨城県内で提供されていた学校給食のレプリカをはじめ、水戸市内の小学校における昭和20~30年代の献立表や給食づくりに携わった方々が記した給食日記の原本を展示しました。
博物館機能としては、開館以来、茨城県の歴史に関する考古・民俗・美術工芸・歴史などの各分野にわたって、多彩な展示を行っています。また、1987年に開室した一橋徳川家記念室では、御三卿の一橋徳川家が所蔵していた、重要文化財を含む数多くの古文書や美術工芸品などを定期的に展示しています。
茨城県立歴史館は、国立公文書館や教育機関などとの連携を通して、地域の歴史や文化を次世代に伝えるための重要な役割を果たしています。
一橋徳川家記念室
カフェ&ミュージアムショップ「ヒストリア」も常設
一橋徳川家関係資料(重文)
国立公文書館つくば分館にて共同展示した学校給食のレプリカ
茨城県立歴史館
〒310-0034
茨城県水戸市緑町2-1-15
TEL:029-225-4425
FAX:029-228-4277
E-Mail:daihyou@rekishikan.museum.ibk.ed.jp
開館時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)
福岡県内の市町村と県で運営する「福岡共同公文書館」
福岡共同公文書館は、福岡県と県内の全市町村(政令市の北九州市、福岡市を除く)が共同で設置・運営する公文書館であり、県と市町村が共同で運営する全国初の公文書館です。
2012年に開館した同館は、福岡県と県内市町村の歴史資料として重要な公文書や行政資料を収集、整理、保存し、一般の利用に供しています。また、展示会、研修会、講座等を開催するとともに、公文書の保存に関する調査研究を行っています。施設には、閲覧室や展示室、休憩コーナーがあるほか、文書保存庫、マイクロフィルム保管庫、一般利用が可能な会議室や研修室も備わっています。
県と市町村が共同で公文書館を運営するメリットとしては、一元的に収集・保存することで分散した資料の管理が効率的に行える点が挙げられます。それ以外にも、公文書館の機能が一ヵ所に集約されているため、利用者の利便性向上やリソースの共有による効率的な運営も大きな長所の一つです。一方、歴史公文書の移管にあたり、一次選別を行う移管元自治体の担当者の選別水準の向上や評価選別支援の充実を通して、各自治体間における公文書の評価基準の均衡を保つことも、共同公文書館として重要な視点となります。
こうした県と市町村の各自治体との連携を通して、同館は地域の歴史と文化を次世代に伝えるための重要な役割を果たしており、地域社会との密接な連携を図りながら、情報発信と教育活動を積極的に行っています。
展示室
主基斎田事蹟
施設見学会の様子
〈企画展開催のお知らせ〉
福岡共同公文書館では、毎年、所蔵している公文書等を活用し企画展を開催しております。
今年度も、8月30日(金)から12月15日(日)まで、企画展「皇室と福岡県」を開催します。皆様のお越しをお待ちしております。
福岡共同公文書館
〒818-0041
福岡県筑紫野市上古賀1-3-1
TEL:092-919-6166
FAX:092-919-6168
E-Mail:kobunsyokan@pref.fukuoka.lg.jp
開館時間
9:00~17:00
(資料の利用請求・複写申込は16:30まで)
“想いをかたちに”を基本コンセプトに
県立の図書館と公文書館を融合した施設「奈良県立図書情報館」
奈良県立図書情報館は「県の中核的な公共図書館」「さまざまな情報の創造・提供・仲介を行う情報センター」「奈良県の歴史・文化に関する専門図書館」という三つの機能を持った施設として2005
年に誕生しました。220人収容可能なホールや動画・画像編集できるアトリエなども備え、歴史講座や落語会、飲食物・雑貨が並ぶマルシェなど、さまざまなイベントを実施しています。
同館は全国的にも数少ない図書館と公文書館機能を併せ持つ施設です。そのため図書、雑誌、新聞はもちろん、歴史的公文書や古文書、絵図へ縦横にアクセスすることができます。例えば、郷土に関するレファレンスでは、図書館司書とアーキビストが連携し、図書だけではなく、公文書や古典籍を参考資料として提案することもあります。
所蔵する明治・大正時代の公文書6,695
冊は、歴史的価値が高いことから平成21
年に県の文化財に指定されました。県行政のあゆみはもちろん、県民生活の動向などを知るうえで欠かせない資料として研究などに役立てられています。こうした公文書はたびたび近隣の博物館にも貸し出され、特別展で展示されています。
また、利用と保存の両立を目的に資料のデジタル化も積極的に行っています。現在、同館HP
の「まほろばデジタルライブラリー 」では古文書や絵図、公文書など7,500
点以上の画像を公開しています。
館内でも所蔵資料を紹介する展示を定期的に行っています。県内の鉄道史や災害史、奈良県ならではの正倉院展や寺社の行事に関する展示など、多彩なテーマを取り上げ、公文書や古文書、絵図などを紹介しています。今年度は8
月末から「永田家文書とその世界」、11 月からは聖武天皇即位1300 年を記念した展示を開催予定です。
自動化書庫
貴重書庫
奈良県行政文書(県指定文化財)
まほろばデジタルライブラリー
展示風景
今年度の展示予定
永田家文書とその世界令和6年8/31(土)~10/30(水)
吉野の林業家に遺された近世・近代の250 年にわたる膨大な史料の一部をご紹介します。9/21(土)には関連講演会を開催します。
下市札
関連講演会日時: 9/21(土)14 時~ 16 時
「永田家からみた吉野林業の産業化と関西地域経済」
講師: 中西聡(慶應義塾大学経済学部教授)
聖武天皇令和6年11/1(金)~ 12/27(金)
〈聖武天皇即位1300 年記念 奈良県文化施設連携企画〉
奈良県立図書情報館所蔵の古典籍で聖武天皇の事績を紹介するとともに、公文書などをとおして、ゆかりの正倉院宝物や東大寺の大仏、平城宮跡が守り伝えられてきた歴史をたどります。
東大寺供養会
徳田祐義 大正4 年
平城宮址平面図
『平城宮跡関係文書』大正10年
奈良県立図書情報館
〒630-8135 奈良市大安寺西1丁目1000
番地
TEL:0742-34-2111(代表)
TEL:0742-34-5514(貸出・返却・延長)
TEL:0742-34-3366(レファレンス)
FAX:0742-34-2777
開館時間 9:00 ~ 20:00
休館日:月曜日
桜並木が美しい佐保川沿いに位置しています。