文献資料との初めての出会いは、困惑を伴うものでした。学部生の時は民俗学に関心をもち、主にオーラルヒストリーの方法を学びましたが、大学院では日本の近代史を専攻し、そこで初めて本格的に文献資料に向き合いました。しかし、明治時代の政治家の書簡を目にした時、全く解読できなくて途方に暮れたのを覚えています。これは大変だと思っているところに、資料保存機関でのアルバイトの機会を得、勉強を兼ねて働き始めました。そこで資料の整理などについて学びました。
そのうちに、資料に記された内容だけでなく、資料そのものについて考え、それを整理して公開することの意義に気づき、そちらへの関心が高まってきました。また、その
広島大学文書館の外観
後もいくつかの資料保存機関で実務を経験し、アーキビストというものを意識するようになりました。
2020年1月からは広島大学文書館で、アーキビストとして働いています。広島大学文書館は大学の公文書や、歴代学長、教職員や卒業生といった大学関係者の資料などを所蔵していますが、私は公文書について、学内の部局等が保管している現用文書から、文書館に移管して保存されている特定歴史公文書まで、その記録の管理に携わっています。広島大学のように文書館が現用文書の管理に関与する例は少ないと思います。さらに、近年は電子媒体を正本とする方針と相まって、文書の電子的管理が進んできました。そのため、つねに新しい領域や知識について学び、業務に役立てるように心掛けています。他方で、かつて学んだオーラルヒストリーについても、アーキビストの立場から改めてその意義を感じています。
アーキビストとして最も充実感を覚えるのは、利用者が目的の資料を見つけることができた時です。利用者の目的は権利に関するもの、研究や知的関心によるもの、大学の管理運営のためなどさまざまですが、利用者が求める資料を見つけられると、本当にうれしいものです。一方で、見つからなかった時は、どこに理由があるのかを考え、今後に活かすようにしています。
これからも自身や文書館のあり方を顧みながら、公文書の適正な管理と文書館への適切な移管・保存を通して、現在および将来の人々に大切な知的資源を提供できるように努めていきたいと思います。
認証アーキビストとは