アーキビストに聞く

過去の出来事について調査や研究をするには、それに関して書かれた記録が適切に保存されている必要があります。私は、大学院でアーカイブズ学を学び、そもそも、文書がつくられた段階から将来を見越して保存していくことの重要性を感じました。中でも、膨大な量の文書から将来にわたって重要となるものを的確に選び、それを残すことの大切さに気づいたことが、アーキビストを目指した大きな理由です。
 平成31年から国立公文書館で働いていますが、現在に至るまで評価選別の仕事を担当しています。仕事の主な内容は各行政機関が作成した行政文書を、5年や10年といった保存期間が満了したときに、公文書館に移管して永久的に保存するか廃棄するかについて専門的な立場から助言することです。その際、例えば行政機関としては廃棄するつもりの文書でも、当該機関の基準に基づきつつ、別の観点から歴史的に重要な文書だと判断すれば、移管が適当ではないかなどと伝えています。
 例えば、過去に実施した政策が、時が経って社会的な問題や課題に直面した際、あの当時はどのような情報のもと、どのような判断がなされたか調べるためには、必要な記録が残されていることが重要です。そのため「移管が適当」などと助言することは、責任ある仕事だと感じていますし、だからこそ、将来に伝えていく文書の選別に携わる仕事は魅力的であると思います。
 当館が保存している特定歴史公文書等は、この国や社会がどうしてこうなっているのかを理解するために必要な情報でしょうし、その先を考えるための重要な情報源の一つだと思います。100年後の未来の人が「2022年ってどんな時代だっただろう」と思った際に知ることができるように、その時代を理解するための足掛かりとなる情報を適切に残し、伝えていくことがこの仕事のやりがいであり、意義だと考えています。