Status report from East Asia EASTICA加盟国・地域では、公文書管理について現在どのような取組を行っているのでしょうか。EASTICA「国・地域別報告」の発表から、加盟各国・地域の現状をご紹介します。


日本 デジタル時代への
挑戦


国立公文書館
新垣和紀

公文書の電子的管理に向けた取組が、国の一大プロジェクトとして本格化しています。特に、ボーンデジタル記録の受入れ・保存・利用及び紙媒体記録のデジタル化といった「デジタル技術の活用」と、それを含めたアーカイブズ管理を適正化するための「アーキビストの養成」が大きな課題であり、挑戦でもあります。2026年の新国立公文書館開館に向けて、大幅な機能と人員の拡充も目指しています。

中国 課題への挑戦と使命への立ち返り


中国国家档案局 丁勇

情報化を国家的発展戦略と位置づけ、全国家的にIT化を進めています。公文書管理についても、紙媒体記録の使用をなくし、電子的管理への一元化を進めています。また、政府サービスを提供するオンライン・プラットフォームを利用し、公文書へのアクセスを促進しています。その中で、档案館(公文書館)の現代社会における機能やアーキビストの位置づけの再定義を図ろうとしています。

韓国 公文書の
電子的管理への試み


韓国国家記録院
イ・ジュクァン

韓国は、電子政府化が進んでいる国と言われ、公文書の電子的管理も国家的取組として行われています。その中で、約2,200ある政府機構のそれぞれの部署で作成された、複雑で多様なデータセットを管理し、情報資産として戦略的に活用できる仕組みを確立するために試行錯誤を続けています。現在は、管理に必要なシステム、データなどを含む基準表を作成、利用するデータセット保存システムを試作しています。

モンゴル 近代化プロジェクトの推進


モンゴル公文書管理庁 エンフバータル・サムダン

2006年頃から、情報化技術導入へ向けた国家プログラムを開始。デジタル移行政策として、公共サービスのオンライン提供や、電子的なデータベースの構築を進めています。モンゴルの公文書管理庁でもオンライン検索システム・文書閲覧予約システムを作り、利用に役立てていますが、他のEASTICA加盟国に比べるとレベルアップが必要と認識しています。2019年から韓国の協力を得て、国家記録の近代化プロジェクトを始動させました。


香港 記録管理の電子化と
技術革新


香港特別行政区政府
劉善君

電子記録保存のための新たなレポジトリの構築や政府によるwebサイトのアーカイビングなど、記録管理の電子化と技術革新を進めています。2011年に運用が始まった電子記録保存システム(ERKS)を、2025年までに全機関に導入することを目標としています。また、文書の保存期間満了後の廃棄・移管手続を電子的に行うシステムも2017年から導入しました。オンライン・コースやwebinarなどの研修は、年間4千人以上が受講しています。

マカオ 変わりゆくアーカイブズとアーキビスト


マカオ歴史档案館
張家儀

現在、マカオ特別区政府の公文書の大半は紙ベースですが、今後記録の電子化と電子的管理化を進めていく予定です。まずは電子記録の長期保存に向けた戦略を構築するために、中国人民大学に調査を依頼し、基礎となる方針を決めました。マカオでの電子化の流れは始まったばかりですが、今後、法令を整備し、国際標準に基づいて技術を強化することで、信頼ある電子レポジトリの構築等を目指していきます。