公文書も紙からデジタルへ ー進む公文書の電子的管理ー

現在、国の行政機関が作成している公文書の大半は、紙の文書です。しかし昨年度、公文書の作成、保存、移管・廃棄までを一貫して電子的に管理する方針が示され、現在その準備が進められています。公文書の電子的管理には、どのような目的やメリットがあるのでしょうか。さまざまな疑問にお答えします。

Q公文書の 「電子的管理」とは、どのようなことをするのですか?


A 現在、多くの公文書はパソコンで作成していますが、その多くが紙に印刷したもの(紙媒体)を原本としています。しかし今後は、パソコンで作成した文書そのもの(電子ファイル)を原本とし、紙を使わずに保存や移管を行うことを原則とする「電子的管理」を進めていきます。これに併せて、電子ファイルの保存や管理に関する行政機関共通のマニュアル整備や、システムづくりを行います。
 電子的管理により、文書は電子ファイルのまま決裁や供覧が行われ、システム上に保存されます。保存期間や、保存期間満了後の措置(移管・廃棄)もシステム上で記録し、公文書の管理に役立てます。文書の作成者や作成日、決裁の過程など、文書に関連するさまざまな情報も一緒に記録に残されるため、文書を探したり利用したりしやすくなるメリットもあります。

Qなぜ電子的管理を進める必要があるのでしょうか?


A より確実に、効率良く公文書を保存するためです。
 紙媒体の原本の管理では、ファイルに綴じ込む、管理簿を作る、キャビネット等に入れる、ファイルや文書を探すといった多くの作業を人の手で行う必要があります。そのため、手間がかかる上に、誤って紛失してしまうなどのリスクも指摘されていました。電子的に管理することで、業務の効率化が図られる(所在の把握や管理状況のチェックが容易になるなど)とともに、履歴の管理や機密保持、改ざん防止の処理を施すことによって、より確実な保存を実現することができます。

技術の進歩に合わせて、継続的に電子的管理の方法を見直すことも必要です 内閣府 山村真紀子 公文書管理専門職
公文書の電子的管理 取組の理念 1.電子ファイルを正本・原本に 2.プロセス全体を電子化し、利便性・効率性と機密保持·改ざん防止のバランスを確保 3.手作業の処理を自動化して確実・効果的に管理可能な枠組みを構築

Q現在、国立公文書館には、どのくらい電子ファイルが移管されているのですか?


A 当館に移管される公文書のうち電子ファイルは少なく、紙媒体がその多くを占めています。
 当館の所蔵資料は、媒体にかかわらず永久に保存することが課されており、電子ファイルについては、平成23年度から運用している「電子公文書等の移管・保存・利用システム」(略称:電子公文書等システム)」で、長期に保存と利用ができるよう必要な措置を行います。
※現在の公文書管理の流れ(媒体別)については、下図参照。



バックヤードのお仕事を
ご説明します。電子公文書として長期に利用できるようにしていくためには、維持・管理にきちんと関わることが大切です。国立公文書館 吉田敏也 電子公文書係長
現在の公文書管理の流れ(媒体別)

Q移管された電子ファイルはどうなるのですか?


A 当館では、次の①〜③の作業を行います。
①受入れ・・・受入れする際に中身の確認、ウィルスチェックなどを行っています。
②フォーマット変換、審査等・・・保存する電子ファイルが特定の技術に依存していたり、特別な再生環境が必要であったりすると、将来の利用にあたり支障となる場合があります。そのため、より広く普及した、または長期の保存に適したフォーマット(PDF/A等)に変換します。また、一般公開に問題ないかの内容の審査、複製物の作成等を行います。
③長期保存・・・保存や利用に必要な情報を付与し、システムにデータを保存します。また、万が一の事態に備え、バックアップ等を行います。

Q今後の課題などはありますか?


A 電子ファイルを継続的に「人」が理解できること、これを「見読性」といいます。この状態の維持は、簡単なようで実は難しい問題です。記録としての重要な内容が失われたり、勝手に変わったりすることがないよう対応を考える必要があります。また、記録と共に、それを説明する情報も一緒に保存されていないと、利用者が発見することや実際に利用することができません。つまり、データをいったん保存したら終わりではなく、長期の利用を確保するため、その維持・管理において常に関与していくことが求められます。今後、政府の方では電子的管理が進むことが期待されますが、作成時から適切な管理が行われ、将来の利用へとつながるように、当館も取り組んでいきたいと思っています。