アーキビストに聞く

元々は大学院で近代史を専攻していたことから、国立公文書館を閲覧者として利用していました。資料を扱う仕事は自分の経験や学んできたことが活かせるのではないかと思い応募し、働き始めました。
 採用後、いくつかの業務を経験しましたが、現在は、民間にある歴史資料等を収集する仕事に携わっています。
 国立公文書館では、我が国の歴史的事実に関する記録として現在及び将来の国民が利用するにふさわしい文書の収集業務として一般の方から文書の寄贈又は寄託を受けています。過去に大臣を務めた方が記した日記や手帳、公務員だった方の手元にあった公文
寄贈・寄託のリーフレット 書のほか、国の機関が統廃合や民営化を経て、現在は民間の機関が引き継いでいる資料など、民間にも国の歴史的な事実を記録した重要な文書が残されていることがあります。こうした文書を収集することにより、貴重な資料の散逸防止や保存に努めています。
 中世から現代までの幅広い文書を所蔵している当館には、これに関連するものとして多様な文書の寄贈等の相談があります。これらについては、基本的には文書の内容や保存状態を調査して受入れ可能かどうかを判断していますが、判断に当たっては、文書の内容把握はもとより、受入れに際しての権利関係の確認や受入れ後の適切な保存・利用を考慮した利用条件の設定など、適切に国民の財産として保存・利用していくための手続きに関する知識も必要とされます。
 寄贈等を相談される方の、資料を埋もれさせることなく活用してほしい、末永く保存してほしいというお気持ちを踏まえますと、ただ受け入れるだけではなく、資料の位置づけや将来を見据えた利活用の場などを考慮しつつ判断することが大切だと考えています。そういった観点から、例えば地域資料の場合は相応しい地域の資料保存機関をご紹介するなど、ご相談内容によっては必ずしも当館への受入れに限らない対応となる場合もあります。
 収集業務は、民間にある資料の散逸防止に一役買うと同時に、国民の財産として資料の幅を広げることができる意義のある制度だと感じています。何より、新しい資料の発見に立ち会い、貴重な資料を未来へ橋渡しをしているという実感が得られるのは、アーキビスト冥利に尽きるものだと感じています。リーフレットやホームページなどで当館の寄贈・寄託制度のご紹介に努めておりますが、ご相談いただく一つ一つの資料との出会いをこれからも大切にしていきたいと思います。