公文書に学ぶ 大人の美文字講座

公文書の数だけ文字がある。公文書の中には、美文字のヒントがたくさん隠されています。日本書道師範の涼風花先生が当館所蔵資料の美文字ポイントを解説します。
涼 風花(りょう ふうか)先生


御実紀
今号の美文字資料(請求番号:特075-0001、冊次:34)
御実紀

「御実紀」は、通称「徳川実紀」と呼ばれる江戸幕府の正史です。初代徳川家康から10代家治に至る歴代将軍ごとの治績を編年体で記し、逸話については付録としてまとめています。付録巻22には、慶長7年(1602)に家康が、江戸城内の富士見の亭に文庫を創建し、金沢文庫の書物を収蔵したと書かれています。3代将軍家光の代に、江戸城紅葉山の麓に文庫が新造され、文庫を管理する書物奉行の役職が設けられました。この文庫は、明治以降紅葉山文庫と呼ばれ、その蔵書の多くを、現在、当館が所蔵しています。

涼先生の美文字解説

迷いのない行草書

とても綺麗で読みやすい行草書の文書です。筆を軽く持ち、穂先の流れに任せて書いていることから、筆の色々な面を使っていることがわかります。サラサラと自然に書いているにもかかわらず、整った字形を保ったままこの長文を書いてみせるのは、本当に素晴らしいと思います。「校」の9画目では、中心寄りから書き出すことで、字形が引き締まってみえます。また「創」では、へんの横画の間隔を詰めて書くことでリットウが長く見え美しい字形になり、「松」では、つくりである公の字を短く書くことで、木の部分が長く見えて整った字形に見せていることがわかります。連綿(2文字以上の文字を続け書きすること)の無駄の無さからも、全体的にすっきりとした印象を与えます。

「校」「創」「松」


今号の手習い「澁」

point

全体のまとまりを意識する

まだれの1画目は文字全体の真ん中にくるようにしっかり打ちます。3画目は車の横画へ繋げていくので払い抜かずに軽く止めます。「車」はまだれから右へ少し離して書くと良いバランスになります。最後の縦画は真っ直ぐ下ろして軽く止まってから左へ抜き次の文字へ繋げていきます。