アーキビストに聞く

大学・大学院では歴史学を専攻しており、歴史は史料があって初めてつくられることを学び、史料保存の重要性について実感しました。そんな中、平成元年に徳島県立文書館が新たに設立されることを知り、私が大学院を卒業するタイミングだったことから、応募することにしました。
 徳島県では文書館の事務局が公文書や古文書の収集を始めたばかりで、閲覧公開はしていませんでした。そのため、最初の業務は、収集された公文書や古文書の整理をすることでした。ただ、公文書の保管・管理を経験した職員が誰もいなかったことから、国立公文書館をはじめ、全国各地の公文書館施設に整理や保存法を教わり、それを全員で共有しな がら自分たちの形に落とし込んでいきました。今でも全職員がオールラウンダーとして活躍しており、史料の整理、閲覧対応、企画展などもお互いにサポートしながら全員参加で取り組んでいます。
 徳島県の特徴として、明治時代に開拓のために北海道に移住した方が多くいることが挙げられます。そのため、今でも年に数回、ご自身の系譜を調べるために北海道から当館まで足を運ばれる方がいらっしゃいます。県の公文書は、空襲の際に多くが焼失してしまいましたが、各市町村に古い戸籍等が残っている場合があります。両者のつなぎ役となり、探していたものが見つかったと感謝された際は、大きなやりがいを感じます。
 それ以外にも、地域の情報を残す一環として、当館ではスーパーなどのチラシも長年保管しています。その地域の文化や習慣を深く知るために幅広く手がかりを残すことが、当館の使命だと考えています。
 当館に限らず地方の文書館は、地域の史料保存や人材育成、収蔵スペースの問題など、数多くの課題を抱えています。そうした課題を横のつながりで解決しつつ、地域住民の方にもっと活用していただくために、史料を利用した展示・講座などの活動も積極的に行っています。史料の収集、整理、保存、公開等を通じて「文書館があれば安心だ」と多くの方に感じていただける、地域に開かれた施設を目指していきたいと考えています。