アーキビストに聞く

私は大学卒業後、情報システム開発や監査の仕事に就いていました。しかし、歴史的価値のあるものに携わりたいと思い、改めて通信制の大学・大学院で学ぶことにしました。同時期に国立公文書館で週3日の保存業務の短時間非常勤職員として働き始め、貴重な資料に触れながらの仕事に感動したことを覚えています。一方で、膨大で多様な資料に圧倒され、自分に何ができるのだろうと考えました。そんな中、電子情報に関する公文書専門員の募集があり、当時の上司のアドバイスもあって、前職の経験を生かすことができるならと応募し採用されました。デジタルアーカイブの担当を経て、現在は電子公文書に関する業務に従事しています。
電子公文書とは、電子ファイルで作成・保存された公文書のことです。当館では、電子公文書を「電子公文書等の移管・保存・利用システム」で保存しているため、このシステムの運用が主な業務となります。また、毎年新たな電子公文書を受け入れると、システムを用いて長期保存に適した形式に変換するなど、永久保存のための措置を行っています。
 時代とともに公文書の作成・保存方法は変化しますが、変わらないものは“未来に伝える”という意志です。今ある公文書は、ただ偶然に残ったのではなく、先人たちが未来につなぐために保存するという意志を持って管理してきたから、現在も利用できるのです。現在進行形で生み出され続けている電子公文書も、より適切な作成・保存に向けて課題をひとつずつ解消しながら、未来へつなぐことが責務だと感じています。
 電子公文書はこれから増え続けていきますし、社会状況の変化に応じて、様々な経験を持つアーキビストが必要とされます。多様な経験を積んだ社会人から、アーキビストを目指す方が増えることを期待しています。また、電子公文書は来館しなくても、当館のデジタルアーカイブから検索して閲覧できるものがあります。時代に合った活用方法を通して多くの人に公文書に触れてほしいです。