民法改正のうち最大の問題は、旧民法の「家族制度」を廃止すべきか否か、という問題でした。つまり日本国憲法第24条に定める「個人の尊厳」、「両性の本質的平等」の原則に照らして、家は戸主と家族とにより構成され、戸主は戸主権という一家統率の権力を有し、家族に対して身分上の統制力を持ち、また家督相続が戸主権の承継として長男子一人が遺産の全部を相続し、家を守るという法律制度がその存続を許されるかどうか、ということでした。
昭和21年10月23・24日の臨時法制調査会第3回総会に提出された「民法改正要綱と家族制度との関係」(我妻栄委員)は、「本改正要綱は、特定の法律制度としての家族制度を廃止しても、道徳的理念としての家族制度は脆弱化されるものではない。否これによって却って新しき時代に即応した家族制度を発展せしめ得るという考えに立脚するものである。」と述べ、法律案要綱は、「民法の戸主及家族に関する規定を削除し親族共同生活を現実に即して規律すること」とすることが決定されます。
なお、6月の衆議院の憲法審議においては、「新憲法ができても家の制度は廃止する必要はない」旨の政府の方針が答弁されていましたが、臨時法制調査会における民法改正の議論などから、9月の貴族院審議においては、「憲法24条の結果、戸主を中心とする家族制度というものはなくなる」と司法大臣から明言されるに至ります。
昭和22年4月19日、「日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律」が公布され、日本国憲法施行の日である5月3日から施行されます。