大日本帝国憲法を発布する

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枢密院について

井上毅の憲法草稿の作成と検討

枢密院による審議

発布

大日本帝国憲法

憲法の草稿は、枢密院という機関で審議されました。
枢密院とは、明治21年(1888)、憲法草案を審議するために設置された機関であり、初代議長に伊藤博文が就任しました。なお、憲法制定後も天皇の最高諮問機関として憲法(第56条)に規定され、重要な国事を審議しました。
枢密院官制の第6条に「枢密院は左の事項に付、会議を開き意見を上奏し勅裁を請うべし」とあります。
上奏(じょうそう)とは「天皇に意見を申し述べること」、勅裁(ちょくさい)とは「天皇が判断し決定すること」という意味です。
枢密院官制の第6条の第2項に「憲法及び憲法に附属する法律」が審議対象であることがわかります。
これは、井上毅(いのうえ・こわし)の憲法草稿の作成以降から、帝国憲法発布までの流れを示しています。枢密院で審議される前段階で、いくつもの草案が作成されています。
井上毅の「甲案」と「乙案」の他に、ロエスレルが作成した「日本帝国憲法草案」も代表的な草稿として知られています。
ロエスレルは明治11年(1878)に外務省の顧問として来日したドイツの法学者で、帝国憲法の制定に尽力した人物です。
この3つの案が、帝国憲法の草稿の源流となります。
草案の検討にあたり、神奈川県夏島(現在の横須賀市夏島町)で伊藤博文、伊東巳代治(いとう・みよじ)、金子堅太郎(かねこ・けんたろう)、井上毅の4名が、明治20年(1887)6月から8月まで検討会を実施していました。その検討会後の草案は、「夏島草案」と呼ばれています。夏島草案の現物資料は、国立国会図書館に収められています。
夏島草案の完成後も、検討が続けられ、10月草案、2月草案、浄写3月草案といった複数の草案が残されています。
枢密院における憲法草案の審議は、第一審会議から第三審会議の計3回にわたって行われました。
枢密院での審議の模様は、「枢密院会議筆記」に記録されています。
ほとんどの会議に明治天皇が臨席され、伊藤博文議長のもとに会議が行われ、井上毅や伊東巳代治も書記官として参加しています。
第一審会議の冒頭、議長である伊藤博文は「原案ヲ起草シタル大意」(憲法政治の必要性)を述べています。
枢密院における審議や議決をはじめとして、枢密院に関する多くの記録は、国立公文書館に所蔵されています。
枢密院の審議を経て、大日本帝国憲法は、明治22年(1889)2月11日、天皇が「臣民」に与える欽定憲法(きんてい・けんぽう)という体裁で発布され、翌年11月29日に施行されました。
「憲法発布式の図」では、壇上に明治天皇、その前方に、当時の総理大臣である、黒田清隆が憲法を受け取っている様子が描かれています。
欽定憲法とは、君主の単独の意思によって制定される憲法のことで、対する用語としては民定憲法があります。そもそも「欽」という字は「うやまいつつしむ」という意味のほかに、「天子に関する物事につける敬語」という意味が含まれています。
井上毅の草稿、夏島草案、枢密院での審議等、様々な過程を経て、ようやく大日本帝国憲法が発布されました。
大日本帝国憲法の制定を記念して、憲法発布式の様子を描いた様々な錦絵や印刷物も出版されました。
それでは、発布された大日本帝国憲法(御署名原本)の本文を見てみましょう。
御署名原本の署名者に、当時の内閣総理大臣の黒田清隆、枢密院議長の伊藤博文の名前があります。
この憲法は、全7章76条の条文からなり、天皇主権のもと、立法・行政・司法の三権分立が定められています。
大日本帝国憲法の中では、帝国議会が三権分立の「立法」にあたり、現在の「国会」という名称は、現行の日本国憲法から使われています。
国立公文書館
枢密院の図
枢密院会議之図[請求番号等:33-06]
枢密院の図
枢密院会議之図/改進新聞1622号附録[請求番号等:33-02]
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法

枢密院官制 [請求番号等:御00203100]
国立公文書館
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
國學院大學図書館蔵
井上毅(1843-1895)
井上毅
甲案
乙案
ロエスエル
ロエスレル(1834-1894)
ロエスレル草案(独文)

[請求番号等:A-116]

[請求番号等:A-108]
ロエスエル案
[請求番号等:A-10]
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
憲法
枢密院会議筆記 [請求番号等:枢D00002100]
国立公文書館
憲法
憲法發布式之圖[請求番号等:26-05]
憲法
大日本帝国憲法発布正式之図[請求番号等:26-02]
憲法
大日本帝国憲法発布式場之図/風俗画報3号附録
[請求番号等:26-03]
憲法
大日本帝国憲法発布式之図[請求番号等:26-06]
憲法
憲法発布式之図[請求番号等:26-04]
東京大学法学部附属明治新聞雑誌文庫蔵
憲法
憲法
憲法
憲法
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憲法
大日本帝国憲法[請求番号等:御00284100]
国立公文書館
次ページでは、当時の新聞から、憲法発布前後の社会の様子を、
追っていきます。

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