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6. 出品物紹介−福岡農法の発明(林遠里)−

第二回内国勧業博覧会で二等進歩賞を受賞した出品物の中には、福岡県の林遠里(1831―1906)が発明した「福岡農法」の指導書『勧農新書』がありました。『勧農新書』は、明治9年に筑前地方で出版・配布されていましたが、博覧会出品を機に文書の改訂・挿絵の挿入などを行い明治14年に再版されました。展示資料は、『勧農新書』と、明治18年に林遠里が藍綬褒章を受章した際の文書です。

福岡農法は、寒水浸(種籾を寒中に水に浸し春に播く方法)、土囲い(土中に埋めて芽出させる方法)などによって農作物の育成を高める一方で、抱持立犂(かかえもったてすき)を用いた牛馬耕を導入して耕耘労働を軽減化したものでした。林は、全国からの招聘に応じて福岡農法の伝習に赴いたほか、実業教師と呼ばれる実践指導者を派遣して指導させたことから、福岡農法は各地で実践されました。こうした普及活動は、実業教師の養成・派遣結社として勧農社が結成されるなど、明治20年代には組織的に行われました。

福岡農法に対しては、駒場農学校の西洋農学者が筑前地方の慣行農法に過ぎないと批判したこともあり、一時その効力が疑問視されましたが、手間を惜しまず良い収穫を上げるという近世の農法に連なる農業技術として、明治期の農業従事者から一定の支持を集めたのでした。

福岡県士族林遠里ヘ褒章授与ノ件
勧農新書
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