史料が紡ぐ日本とアジア ―アジア歴史資料センターの活動― アジア歴史資料センターは、2001年の開設以来、国内最大規模のデジタルアーカイブとして、日本とアジア近隣諸国に関わる歴史資料の公開を進めてきました。今号では、その活動をご紹介します。<br>
https://www.jacar.go.jp

アジア歴史資料センターの仕組み

国立公文書館、外務省外交史料館、防衛省防衛研究所戦史研究センターから提供されたアジア歴史資料のデータベースを構築。
資料のデジタルデータを「いつでも、どこでも、だれでも、無料で」閲覧することができる。
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アジア歴史資料センターの仕組み

だれでも閲覧できるデジタルアーカイブとして

 アジア歴史資料センター(以下アジ歴)は、近現代における日本とアジア近隣諸国等との関係に関わる日本の歴史的な文書(以下アジア歴史資料)のデータベースを構築し、インターネットを通じて公開するデジタルアーカイブ機関です。
 アジ歴は、アジア歴史資料のデータベース化を進め、国内外の多くの方々の利用を促し、アジア近隣諸国との相互理解をより深めることを目的として開設されました。2001年の開設から20年近い歴史を誇り、2019年4月時点において、214万件・3,131万画像を公開しています。
 アジ歴が公開する主な資料は、国立公文書館、外務省外交史料館、防衛省防衛研究所戦史研究センターが保管する国の歴史資料です。これら3機関からデジタルデータの提供を受けた後、目録情報の整備などを行い、データベース化して公開しています。デジタル化された資料を「いつでも、どこでも、だれでも、無料で」閲覧できるのが特徴です。


豊富な提供資料

 主な資料のうち、国立公文書館の資料では、憲法や法律・勅令などの公布原本、法律・規則の制定に関わる原議書を編纂した資料、各省庁から移管された文書など、明治から昭和にかけての政府中枢機関の関連資料が公開されています。
 また、外務省外交史料館の資料では、日本と他国との間で調印された条約、外務省と在外公館との間でやり取りされた電報や文書、省内の部局ごとに作成された調査資料などが公開されています。
 もう1つの主なデータ提供先である防衛省防衛研究所戦史研究センターの資料としては、旧陸海軍省が作成・保管し、戦後に占領軍によって接収・返還された軍事行政に関する文書、参謀本部が作成した統帥・作戦関係文書、陸海軍各部隊の戦闘記録などが公開されています。
 さらに、これら3機関以外にも、琉球大学をはじめとする類縁機関とのリンク方式による連携が進められています。従来の横断検索と異なり、アジ歴のデータベースに目録情報を登録することによって、3機関の提供資料と同じく精度の高い検索が可能となっています。


新たな課題と挑戦

 これまでアジ歴では明治初期から第二次世界大戦終結までのアジア歴史資料を公開してきましたが、戦後資料の公開という要望を受けて、公開対象範囲を拡大することになりました。現在では、1972年までを対象範囲とした資料公開が進められています。
 また、国内の類縁機関のみならず、海外との連携も始まっています。2017年には台湾の公文書横断検索サイト「ACROSS」に加わり、また、2019年には初の海外リンク機関として、スタンフォード大学フーヴァー研究所とも連携することとなりました。
 こうした公開資料の拡大という取り組みの一方で、よりユーザーの利便性を高めるための取り組みも進められています。例えば、特定のテーマに沿って資料検索をナビゲートする「アジ歴グロッサリー」や、検索のためのキーワードを事典形式で提示する「アジ歴地名・人名・出来事事典」といったコンテンツが公開されています。これらのコンテンツは、データベース検索と連動しており、より利便性の高い検索機能となっています。
 世界に先駆けたデジタル・アーカイブとして高く評価されているアジ歴ですが、さらなる充実を目指して、現在もなお進化し続けているのです。

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