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解説
書下し
資料名

占領壌地ヲ還付シ東洋ノ平和ヲ鞏固ニス・御署名原本・詔勅

解説

日清講和条約において、清は日本に遼東半島を割譲することが取り決められていました。しかし、条約調印の直後である明治28年(1895)4月、日本の中国進出を警戒したロシアは、ドイツ及びフランスとともに、日本に対し遼東半島の返還を求める勧告を行いました(三国干渉)。日本はロシアとの対立を避けるため、これを受け入れ、清による補償金の支払いと引き替えに遼東半島を清に返還しました。
本資料は、遼東半島の返還に関する詔勅(「占領壌地ヲ還付シ東洋ノ平和ヲ鞏固ニス」)を公布するに当たり作成された文書です。この詔勅の公布に先立つ5月5日、日本はロシア・ドイツ・フランスの三国に遼東半島返還の旨を通告しました。

こんな「問い」はいかが

1.資料を読み、日本はなぜ遼東半島を返還することを決めたのか、その経緯をまとめてみよう。また、返還を決めるまでに日本政府内ではどのような議論が行われていたか、調べてみよう。
2.ロシア・ドイツ・フランスの各国は、なぜ日本に対し勧告を行ったのか、それぞれの国の対外政策を調べてみよう。
3.清に返還された遼東半島では、その後どのようなことが起きたか、半島の主要都市である旅順や大連に注目して調べてみよう。
4.遼東半島を返還するにあたり、日本と清ではあわせてどのような取り決めを交わしたか、調べてみよう。

資料情報

本資料は、明治28年5月に公布された詔勅(「占領壌地ヲ還付シ東洋ノ平和ヲ鞏固ニス」)の「御署名原本」です。
御署名原本とは、法律や勅令などを、天皇の裁可を経て公布する際に、御名(天皇の署名)と御璽(天皇の印章)を付して発行する文書の原本を言います。

資料名 占領壌地ヲ還付シ東洋ノ平和ヲ鞏固ニス・御署名原本・明治二十八年・詔勅五月十日
請求番号 御01866100
デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/file/158962
資料名

占領壌地ヲ還付シ東洋ノ平和ヲ鞏固ニス・御署名原本・詔勅

朕嚮ニ清国皇帝ノ請ニ依リ全権弁理大臣ヲ命シ其ノ簡派スル所ノ使臣ト会商シ両国講和ノ条約ヲ締結セシメタリ
然ルニ露西亜(1)独逸(2)両帝国及法朗西(3)共和国ノ政府ハ日本帝国カ遼東半島ノ壤地ヲ永久ノ所領トスルヲ以テ東洋永遠ノ平和ニ利アラスト為シ交々朕カ政府ニ慫湧(4)スルニ其ノ地域ノ保有ヲ永久ニスル勿ラムコトヲ以テシタリ
顧フニ朕カ恒ニ平和ニ眷々タルヲ以テシテ竟ニ清国ト兵ヲ交フルニ至リシモノ洵ニ東洋ノ平和ヲシテ永遠ニ鞏固ナラシメムトスルノ目的ニ外ナラス而シテ三国政府ノ友誼ヲ以テ切偲(5)スル所其ノ意亦茲ニ存ス朕平和ノ為ニ計ル素ヨリ之ヲ容ルルニ吝ナラサルノミナラス更ニ事端ヲ滋シ時局ヲ難シ治平ノ回復ヲ遅滞セシメ以テ民生ノ疾苦ヲ醸シ国運ノ伸張ヲ沮ムハ真ニ朕カ意ニ非ス且清国ハ講和条約ノ訂結ニ依リ既ニ渝盟(6)ヲ悔ユルノ誠ヲ致シ我カ交戦ノ理由及目的ヲシテ天下ニ炳焉(7)タラシム今ニ於テ大局ニ顧ミ寛洪(8)以テ事ヲ処スルモ帝国ノ光栄ト威厳トニ於テ毀損スル所アルヲ見ス朕乃チ友邦ノ忠言ヲ容レ朕カ政府ニ命シテ三国政府ニ照覆スルニ其ノ意ヲ以テセシメタリ若シ夫レ半島壤地ノ還附に関スル一切ノ措置ハ朕特ニ政府ヲシテ清国政府ト商定スル所アラシメムトス今ヤ講和条約既ニ批准交換ヲ了シ両国ノ和親旧ニ復シ局外ノ列国亦斯ニ交誼ノ厚ヲ加フ百僚臣庶其レ能ク朕カ意ヲ体シ深ク時勢ノ大局ニ視微ヲ慎ミ漸ヲ戒メ邦家ノ大計ヲ誤ルコト勿キヲ期セヨ
(御名御璽)
 明治二十八年五月十日

内閣総理大臣  伊藤博文
陸軍大臣伯爵山県有朋
大蔵大臣伯爵松方正義
海軍大臣伯爵西郷従道
農商務大臣子爵榎本武揚
外務大臣子爵陸奥宗光
逓信大臣  渡辺国武
司法大臣  芳川顕正
文部大臣侯爵西園寺公望
内務大臣子爵野村靖

【注】

(1)露西亜:「ロシア」。
(2)独逸:「ドイツ」。
(3)法朗西:「フランス」。
(4)慫湧(しょうよう):誘い勧めること。
(5)切偲(せつし):切切偲偲。善い事を勧め、励ますこと。
(6)渝盟(ゆめい):約束を違えること。
(7)炳焉(へいえん):はっきりと明らかであるさま。
(8)寛洪(かんこう):おおらかであること。