1.公害対策基本法(仮称)立案の推進について 2.公害対策基本法・御署名原本
高度経済成長下では様々な社会問題が発生しました。なかでも、大気汚染や水質汚染等による公害が深刻化し、水俣病、新潟水俣病(第二水俣病)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病といった公害病による被害が大きな問題となりました。そのため、各地で発生した公害問題に対策を求める国民世論が高まり、政府は昭和42年(1967)8月に公害対策基本法を制定しました。同法では、公害を定義し、公害防止のための事業者、国、地方公共団体の責務を明らかにするとともに、環境基準の設定等の公害防止に関する施策の基本事項を定めています。
もっとも、同法の施行以後も、公害は一層深刻化しました。このため、昭和45年(1970)11月開会の臨時国会では公害が大きく取り上げられ、公害対策基本法の改正などが実施されます(公害国会)。さらに、昭和46年には、環境保全に関する行政を総合的に推進するため、環境庁が設置されました。
資料1は、公害対策基本法の制定に先立ち、昭和41年11月18日の閣議において、厚生大臣から発言があった同法の立案推進について口頭了解されたことを記録した内閣官房の文書です。公害対策基本法案に対する厚生省の構想がまとめられています。
資料2は、公害対策基本法の公布原本です。昭和42年制定当時の同法総則(第1条から第8条)部分を掲載しています。同法制定当初、第1条で定める公害対策の目的として、「経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする」との規定が含まれていましたが、昭和45年の公害国会における同法改正により削除され、公害対策がより強化されることとなります。
資料1
資料2
1.各資料を読み、公害としてどのようなものが想定されていたか、確認してみよう。
2.公害対策基本法では、公害防止のため、どのような対策や対応が求められたか、各資料を読み、主な内容をまとめてみよう。
3.公害対策基本法第1条第2項の規定は、厚生省がまとめた構想(資料1)には含まれていませんでした。法律の制定に当たり、この規定はどのような意図で設けられたものであるか、考えてみよう。
4.身近な地域では、どのような公害が問題となったか、調べてみよう。
資料1は、『内閣公文』という資料群に収録されています。『内閣公文』は、憲法,詔書,法律,政令,条約,告示,訓令の原議書及び閣議決定その他の内閣関係の保存文書(人事に関するものを除く)を保存文書分類表に従って分類し,これを保存期間別に区分して編集したものです。
資料2は、公害対策基本法の公布原本(御署名原本)です。『御署名原本(昭和22年5月3日以後)』という資料群に収録されています。『御署名原本(昭和22年5月3日以後)』は、昭和22年(1947)から昭和54年(1979)までの憲法,法律,条約,勅令,政令,予算等の公布原本で構成されています。
資料1
| 資料名 | 公害対策基本法(仮称)立案の推進について |
|---|---|
| 請求番号 | 平11総02101100 |
| デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/item/1362944 |
資料2
| 資料名 | 公害対策基本法・御署名原本・昭和四十二年・第五巻・法律第百三十二号 |
|---|---|
| 請求番号 | 御43245100 |
| デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/file/674872 |
公害対策基本法(仮称)立案の推進について
供覧
文書番号 閣第245号
起 案 昭和41年11月18日
供 覧 昭和41年11月21日
内閣官房長官(印)
内閣官房副長官(花押)(印)
首席内閣参事官(花押)
内閣参事官(印)
事 務 官(印)
起案者 内閣係
公害対策基本法(仮称)立案の推進について
標記について、本日(11月18日(金))の閣議で鈴木厚生大臣から発言があり、別紙のとおり口頭了解されましたので、供覧いたします。
公害対策基本法(仮称)立案の推進について
公害問題は、深刻な社会問題となつており、公害対策の総合的推進が強く要請されている。
本年十月七日、公害に関する基本的施策について、公害審議会の答申があつたので、これをもとに、公害対策に関する基本的法制の制定について検討をすすめてきたが、このほど、公害対策基本法案について、厚生省としての一応の構想をとりまとめた。今回とりまとめた厚生省試案は、両三日中に総理府に設置されている公害対策推進連絡会議に提出することとしているが、関係各省とも十分意見の調整をはかつて同法案の次期通常国会提出を是非実現したいと考えている。
公害対策基本法案の中で検討されるべき事項は、次のとおりである。
一 基本施策の対象として、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭をとりあげること。
二 事業者は、公害の防止のため必要な措置を講じ、他人に損害を与えないようにする責務を有すること。
三 公害防止対策についての国及び地方公共団体の責務を明確にすること。
四 国は、環境基準を設定し、汚染地域については、環境基準まで汚染等を引下げるためにあらゆる手段を講じ、公害の予防の見地からは、環境基準をこえないようにすること。
五 環境基準の維持のために排出規制、立地規制、土地利用規制その他の措置を講じること。
六 公共の行なう公害防止事業に対する企業の費用負担について定めること。
七 国は、公害防止のため基本的な施策を策定し、地方公共団体は、当該地域の公害防止施策の具体的実施にあたること。
八 汚染地域、又は公害の発生が予想される地域について重点的な公害対策を講じるため公害防止指定地域を指定し、公害防止計画を推進すること。
九 公害防止行政を一元的に総合調整するため公害防止委員会を設置すること。
十 財政措置、金融、税制上の助成措置の整備強化をはかること。
十一 住民の公害についての苦情を処理する機構、公害による被害の救済のための基金等の救済制度の整備をはかること。
公害対策基本法・御署名原本
公害対策基本法をここに公布する。
(御名御璽)
昭和四十二年八月三日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百三十二号
公害対策基本法
目次
(中略)
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、並びに公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活環境を保全することを目的とする。
(後筆)2 前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。
(定義)
第二条 この法律において「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘さくによるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によつて、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。
2 この法律にいう「生活環境」には、人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含むものとする。
(事業者の責務)
第三条 事業者は、その事業活動による公害を防止するために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する責務を有する。
2 事業者は、物の製造、加工等に際して、その製造、加工等に係る製品が使用されることによる公害の発生の防止に資するように努めなければならない。
(国の責務)
第四条 国は、国民の健康を保護し、及び生活環境を保全する使命を有することにかんがみ、公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、住民の健康を保護し、及び生活環境を保全するため、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、当該地域の自然的、社会的条件に応じた公害の防止に関する施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(住民の責務)
第六条 住民は、国又は地方公共団体が実施する公害の防止に関する施策に協力する等公害の防止に寄与するように努めなければならない。
(後筆)(年次報告等)
(後筆)第七条 政府は、毎年、国会に、公害の状況及び政府が公害の防止に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
(後筆)2 政府は、毎年、前項の報告に係る公害の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
(放射性物質による大気の汚染等の防止)
八
第七条 放射性物質による大気の汚染及び水質の汚濁の防止のための措置については、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによる。
(以下略)








