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解説
書下し
資料名

全国総合開発計画について

解説

昭和37年(1962)10月5日、政府は全国総合開発計画(一全総)を閣議決定しました。本資料は、全国総合開発計画の閣議書です。
この計画では、既存の工業地帯における産業及び人口の集中を是正し、地域間の格差を縮小することを目的に、拠点となる工業地域を全国各地に開発することで、工業や人口の分散を図りました。
とはいえ、開発が特に進んだのは、瀬戸内工業地域のように、京浜・阪神・中京・北九州の既存工業地帯に隣接する地域でした。こうして形成されたのが、太平洋ベルト地帯です。太平洋ベルト地帯の各工業地帯や工業地域では、石油化学コンビナートが建設され、高度経済成長の時期に重化学工業の発展が進み、国内産業の中心となりました。

こんな「問い」はいかが

1.全国総合開発計画(一全総)では、どのような問題に対処しようとしたか。資料を読み、解決すべき課題とされている内容をまとめてみよう。
2.全国総合開発計画(一全総)では、地域の開発を進める際に「拠点開発方式」という考え方が用いられました。資料を読み、この方式の特徴をまとめ、その後の国内工業の発展にどのような影響があったか、考えてみよう。
3.太平洋ベルト地帯をはじめ、国内の代表的な工業地帯・工業地域を調べてみよう。また、その中で身近な工業地域ではどのような産業があるか調べてみよう。

資料情報

本資料は、『内閣公文』という資料群に収録されています。『内閣公文』は、憲法,詔書,法律,政令,条約,告示,訓令の原議書及び閣議決定その他の内閣関係の保存文書(人事に関するものを除く)を保存文書分類表に従って分類し,これを保存期間別に区分して編集したものです。

資料名 全国総合開発計画について
請求番号 平11総02152100
デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/item/1364010
資料名

全国総合開発計画について

総甲第一四八号  起  案 昭和三十七年十月四日
         閣議決定 昭和三十七年十月五日
         施  行 昭和三十七年十月五日
内閣総理大臣(花押) 内閣官房長官(花押)  内閣参事官(印)
            内閣法制局長官(花押)
             内閣官房副長官(印)(印)
中垣国務大臣(花押) 西村国務大臣(花押) 手島国務大臣(花押) 川島国務大臣(花押)
大平国務大臣(印)  重政国務大臣(花押) 大橋国務大臣(花押) 近藤国務大臣
田中国務大臣(花押) 福田国務大臣(花押) 河野国務大臣(花押) 志賀国務大臣(花押)
荒木国務大臣(花押) 綾部国務大臣(花押) 篠田国務大臣(花押) 宮沢国務大臣(花押)
別紙内閣総理大臣請議
 全国総合開発計画について
右閣議に供する。
    指 令 案
   例 文

総理府甲第307号 
昭和37年10月4日 
内閣総理大臣 池 田 勇 人 殿
内閣総理大臣 池 田 勇 人(印) 全国総合開発計画について  全国総合開発計画を別冊のとおり作成する必要があるので、別紙案をそえて閣議を求める。

全国総合開発計画に関する件(案) 昭和37年10月5日
閣議決定
 政府は、別冊全国総合開発計画をもつて、国土総合開発法(昭和25年法律第205号)第7条第1項に規定する全国総合開発計画とする。

(表紙)
全 国 総 合 開 発 計 画 (案) (中略)
第1章 総  説 第1節 全国総合開発計画策定の意義
 国土総合開発の意義は、昭和25年に国土総合開発法が施行されて以来、わが国の経済的および社会的諸条件に応じていくたびか変遷した。人口の圧力が強く、食糧、エネルギー等の基礎物質の不足がはなはだしかった法制定当時においては、何よりも国内の自然資源の緊急総合開発にその意義がおかれた。つぎに、一応経済の基礎が整備され、技術革新、消費革命という形で生産力が拡充された時代における国土総合開発は、企業の合理化、近代化のための民間設備投資に見合う産業基盤の整備、主として既成大工業地帯の用地、用水、輸送力等の隘路の応急的な打開に重点がおかれた。そして、わが国経済が産業構造の高度化、人口動態の変化、貿易為替の自由化など、内外経済情勢の変化に対応しながら、高度の経済成長をたどりつつある今日の国土総合開発は、高度成長の過程において露呈された重要かつ緊迫した地域的課題の解決に重点をおかなければならない。
 その地域的課題の第1は、既成大工業地帯における用地、用水、交通等の隘路が一段と激化し、とくに東京および大阪への資本、労働、技術等の集積がはなはだしく、いわゆる「集積の利益」以上に「密集の弊害」をもたらし、その弊害は生産面だけではなく都市生活者の生活面にまで及び、過大都市問題をひきおこすに至っていることである。
 第2は、既成大工業地帯以外の地域は、相対的に生産性の低い産業部門をうけもつ結果となり、高生産性地域の経済活動が活ぱつになればなるほど低生産性地域との間の生産性の開きが大きくなり、いわゆる地域格差の主因を作り出したことである。
 以上の地域的課題は、もはや一つ一つの局地的な問題としてではなく、国民経済的な問題として緊急に処理されなければならない。すでに、個個の都市問題の解決のために、あるいは個個の低開発地域の開発のために数多くの計画や構想が用意されつつある。しかし、これらの計画や構想は、相互の関連および国民経済的考慮が必ずしも十分であるとはいえない。
 したがって、ここに策定する全国総合開発計画は、上記の地域的課題の解決につとめ、地域間の均衡ある発展をはかるために、長期的かつ国民経済的視点にたった国土総合開発の方向を明らかにすることに意義をもつものである。
第2節 全国総合開発計画の目標
 この計画は、「国民所得倍増計画」および「国民所得倍増計画の構想」に即し、都市の過大化の防止と地域格差の縮小を配慮しながら、わが国に賦存する自然資源の有効な利用および資本、労働、技術等諸資源の適切な地域配分を通じて、地域間の均衡ある発展をはかることを目標とする。 第3節 全国総合開発計画の性格
 この計画は、長期にわたる国土総合開発の方向を明らかにすることをねらいとして、国土総合開発法にもとづいて作成したものである。したがって、国土総合開発法にもとづく特定地域総合開発計画、地方総合開発計画および都道府県総合開発計画は、この計画を基本として策定されなければならない。
 この計画は、政府が策定するものであるから、政府が有する実現手段を有効に活用しまたは改善して実効を期するものであり、また、基本的にその活動が企業の創意と工夫に期待する民間部門については予測的な性格をもつものであるが、政府は必要な限りにおいて望ましい誘導策をとるものとする。
 この計画の計画期間は、「国民所得倍増計画」の計画期間に照応するものであるが、経過年次においてつねに状勢の変化に対応して、弾力的な運用をはかるものとする。
 この計画に示された目標数値は、政府が直接実現手段を持たない民間部門の予測的数値を含んでいるので、その取扱いについては、機械的、硬直的に考えることをさけ、基本構想をくずさない範囲内で弾力的に解さなければならない。
 なお、目標数値のうち事業別公共投資額については、「国民所得倍増計画」における事業別行政投資額に対応するものであるが、同計画の産業立地調整資金の一部を今後充当することによって地方別配分に若干の異動を生ずることがあるものとする。
 また、この計画は産業および都市の配置を主軸とし、それとの関連において農林漁業部門の開発に及んでいるが、農林漁業部門自体の開発との関連については、さらに今後における農業基本法等にもとづく農林漁業に関する施策の地域的な具体化にともない所要の調整を行なうことを必要とすることがあるものとする。
 この計画は、国民経済的にみて均衡のとれた地域分担関係を想定したものであるから、各地方開発促進法等にもとづく個個の地方開発促進計画もしくは整備計画を作成し、または改訂する場合には、この計画を尊重しなければならない。
 この計画に示した地方区分(別表)は、地域開発政策の対象地域におおむね照応しうるようにしてあり、かつ各地方開発促進法の地方の区域ともおおむね対応するようにした。
(別表省略)
第4節 地域開発の基本構想
 わが国経済は、東京および大阪を中心とする資本、労働、技術等諸資源の集中集積を通じて発展してきた。すなわち、これらの都市においては道路・港湾・鉄道・上下水道等の公共施設、工業等生産機能、運輸・通信・商業・金融等の流通中枢機能、行政、文化、教育、技術等の諸機能の集積と、これを利用する個別諸企業とが相互に関連しあい、諸資源の累積的拡大を促進してきたのである(以下個別諸企業をとりまくこれら経済的外部諸条件を「外部経済」という。)。
 企業が適度に集中することは、企業の採算を有利にし社会資本の効率を高め国民経済全体の成長を促進する。しかし、利用すべき外部経済の集積の拡大以上に企業が密集すると享受すべき集積の利益が薄くなり、ついには密集の弊害を生ずるに至る。今日の過大都市の問題は、まさにこれによってもたらされたものにほかならない。
 一方、企業が特定の地域にのみ集中することは、資本、労働、技術等の諸資源の地域的な偏在をひきおこし、それ以外の地域において外部経済の集積を阻害し、それが相乗して経済活動をにぶくし、都市化、工業化の停滞をもたらすことになる。このことが、農工間格差等とあいまって、いわゆる地域格差問題をひきおこしたのである。
 とりわけ、わが国経済発展の起動力である工業の既往の配置が、過大都市問題と地域格差問題の発生に大きな役割を演じたといえる。したがって、都市の過大化を防止し、地域格差を縮小するためには、まず工業の分散をはかることが必要である。
 工業の分散にあたっては、長期的視野にたって国民経済全体からみて、開発効果を最大にするよう考慮されなければならない。このためには工業を全面散布的に分散させるのは、民間資本にとっても社会資本にとってもその効率をそこない、また投下資本量にはおのずから限度があるので、工業の適正な配分は開発効果の高いものから順次に集中的になされなければならない。
 この計画は、以上の観点から計画の目標を効果的に達成する方策として拠点開発方式をとった。
 拠点開発方式とは、東京、大阪、名古屋およびそれらの周辺部を含む地域以外の地域をそれぞれの特性に応じて区分し、これら既成の大集積と関連させながらそれぞれの地域において果たす役割に応じたいくつかの大規模な開発拠点を設定し、これらの開発拠点との接続関係および周辺の農林漁業との相互関係を考慮して、工業等の生産機能、流通、文化、教育、観光等の機能に特化するか、あるいはこれらの機能を併有する中規模、小規模開発拠点を配置し、すぐれた交通通信施設によって、これらをじゅず状に有機的に連結させ、相互に影響させると同時に、周辺の農林漁業にも好影響を及ぼしながら連鎖反応的に発展させる開発方式である。
 この開発方式を採用することによって、東京、大阪、名古屋の既成大集積と、それ以外に形成された大規模な外部経済の集積を利用して、中規模、小規模開発拠点の開発がすすみ、それぞれの影響の及ぶ範囲が拡大連結されて、やがてこれらが新たに経済圏を形成し、それぞれの経済圏が有機的に関連しあって均衡のとれた地域的発展が期待できるであろう。
 大規模な開発拠点には工業開発拠点と地方開発拠点とがある。前者は主として大規模な工業等の集積をもたせることによって周辺の開発を促進する役割をもち、後者は大規模な外部経済の集積をもたせることによって東京、大阪、名古屋のもつ外部経済の集積を利用しにくい地域の飛躍的な発展を可能にする中枢主導的な役割をもつ。
 以下、開発政策上の拠点として設定する区域を、それぞれの機能に着目して工業開発地区または地方開発都市とよぶ。工業開発地区とは主として工業開発を目標として整備を要する都市の区域をいい、地方開発都市とは地方開発の飛躍的発展に必要な都市機能の有効な発現をはかるために整備を要する都市をいう。なお、これらの区域は、その状況によっては重複または隣接することもありうる。
(以下略)