農地制度改革の徹底に関する件
連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、なお多くの小作地が残るなど第1次農地改革の内容が不十分であるとして、より徹底した改革を求めました。この勧告をうけ、政府は昭和21年(1946)7月26日に「農地制度改革の徹底に関する措置要綱」を閣議決定しました。
本資料は、その閣議決定に関する文書です。要綱では、自作農創設に必要な農地の売買を政府が行うこと、市町村農地委員会の委員は農地の所有者及び小作人から選挙により同数を選出すること、農産物価格に対する小作料の割合の上限規制を厳格化すること、小作契約を文書化することなどが記載されています。
1.要綱の「第二」において、国が買収するとされた農地のうち、「農地の所有者が、その住所のある市町村の区域外において所有する小作地」とはどのような持ち主による農地か、説明してみよう。
2.在村地主が保有する小作地について、第1次農地改革では平均5町歩以上の農地を強制的に譲渡させるとしていました。要綱の「第二」では、在村地主が保有する農地のうち、都府県は平均1町歩、北海道は4町歩を超える小作地を国が買収するとしていますが、これにより農地改革の内容は第1次からどう変化したか、説明してみよう。
3.市町村農地委員会の委員について、第1次農地改革では地主・自作農・小作人からそれぞれ同数を選挙で選ぶとしていました。要綱の「第十五」において、市町村農地委員会の委員は、地主及び自作農を意味する「農地の所有者」と、「小作人」からそれぞれ同数を選ぶとしていますが、この改革により、市町村農地委員会の委員の構成はどう変化したか、説明してみよう。
4.市町村農地委員会の委員の構成を要綱の「第十五」にあるとおり改革することには、どのような意義があるか。要綱の「第八」において、市町村農地委員会が定めた計画に従い、国が強制的に土地を買収するとしている点と関連付けて説明してみよう。
『公文類聚』は、明治15年(1882)から昭和29年(1954)にわたる、4,061冊もの簿冊で構成される資料群です。明治15年から同18年までのものは『太政類典』を引き継いだ編集物で、明治19年以降のものは、内閣によって作成・収受された、主として法律及び規則の原議書を収録したものです。
| 資料名 | 農地制度改革の徹底に関する件 |
|---|---|
| 請求番号 | 類03017100 |
| デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/item/1713168 |
農地制度改革の徹底に関する件
農甲第三七号 起案 昭和二十一年七月二十二日 閣議決定 昭和二十一年七月二十六日
施行 昭和二十一年七月二十六日
内閣事務官(印)
内閣総理大臣(花押) 内閣書記官長(印)
内閣副書記官長(印)
外務大臣(花押) 海軍大臣 農林大臣(花押) 幣原国務大臣(花押)
内務大臣(花押) 司法大臣(花押) 商工大臣(花押) 齋藤国務大臣(花押)
大蔵大臣(花押) 文部大臣(花押) 運輸大臣(花押) 植原国務大臣(花押)
陸軍大臣 厚生大臣(花押) 逓信大臣(花押) 金森国務大臣(花押)
膳 国務大臣(花押)
別紙農林大臣請議
農地制度改革の徹底に関する件
右閣議に供する
指 令 案
例 文
農地制度改革の徹底に関する件
閣議請議案
農閣第二九号
農地制度改革の徹底に関する措置を講ずる要があるため、別紙農地制度改革の徹底に関する件(案)を添へ、閣議を請う。
昭和二十一年七月十八日
農林大臣 和 田 博 雄 (印)
内閣総理大臣 吉 田 茂 殿
農地制度改革の徹底に関する措置要綱
農業生産力の発展と農村民主化の基礎の確立を図るため、さきに農地調整法の改正により農地制度の改革を実施中のところ、情勢の推移に鑑み、更にこれを強化徹底する必要が認められるに至つたので、この際左により現行制度を改正する。
第一 自作農創設を急速且つ公正に行ふため、国は必要な農地を買収し、その売渡を行ふ。
第二 左に掲げる農地は、国が買収する。
(イ) 農地の所有者が、その住所のある市町村の区域(隣接市町村の区域内で、市町村農地委員会が指定した区域を含める。以下同じ。)外において所有する小作地
(ロ) 農地の所有者が、その住所のある市町村の区域内において、一町歩(全部〔都〕府県平均。北海道は四町歩。)を超える小作地を所有する場合、その面積を超える部分の小作地
但しその住所のある市町村の区域内において所有する小作地の面積と自作地の面積との合計が、三町歩(全都府県平均。北海道は十二町歩。)を超えるときは、その面積を超える部分の小作地
第三 左に掲げる農地で都道府県農地委員会又は市町村農地委員会が自作農創設の用に供することが適当と認めたものは、第二にかゝわらず、国が買収することができる。
(イ) 農業経営を目的としない法人その他の団体の所有する農地
〔(ロ)〕 農業経営を目的とする法人その他の団体の自作地で、農業の発達上好ましくないもの
(ハ) 個人の自作地で、農業の発達上好ましくないものの第二(ロ)の但書の面積を超える部分の農地
第四 左に掲げる農地は、第二にかゝはらず、国は買収しない。
〔(イ)〕 兵役、疾病等特別な事情で一時賃貸借された事が明らかであり、その所有者が特別の事情が発生するまで自作して居り、且つ近く自作をすることを相当とするもので市町村農地委員会が認めた農地が第二(ロ)の面積を超える場合、その超える部分の小作地
(ロ) 共同耕作の目的に供されてゐる公有地又は農業団体の所有地等で都道府県農地委員会又は市町村農地委員会の認めたもの
(ハ) 近く宅地となすを相当とする農地、焼畑、切替畑、新開墾地、収穫極めて不足な農地等で都道府県農地委員会又は市町村農地委員会において自作農創設のための買収を不適当と認めた農地
第五 第二乃至第四を適用する場合は、世帯を単位とする。
第六 国は、農地以外でも自作農創設のため必要な場合は、左に掲げるものを市町村農地委員会の決定によつて買収することができる。
(イ) 採草地、宅地等農業経営に不可欠な農業用地及び農業用施設
(ロ) 小開墾可能地
右によつて買収したものの売渡は、農地に準ずる。
第七 第二、第三及び第五の適用については、昭和二十年十一月二十三日又は買収の時を基準とする。
第八 国は、市町村農地委員会が都道府県農地委員会の認可を得て、定めた計画に従つて強制的に土地を買収する。
農地の所有者は、市町村農地委員会の買収計画について異議の申立をなすことができる。
第九 国の買収した農地は、健全な自作農となる見込のあるものに対して売り渡す。
売渡の相手方は、買収した農地が小作地である場合には、その農地の小作人を原則とする。
第十 農地の買収及び売渡にあたつては、できる限り小作人の土地購入の機会を公正ならしめ、田畑の割合を適当ならしめ、且つ、耕地の集団化を図る。
第十一 第九及び第十の場合において特に必要ある場合には、市町村農地委員会は、農地の所有権、永小作権、賃借権の交換分合を強制的になすことができる。
第十二 農地価格及び報奨金の額は、現行通りとする。但し、報奨金は一定面積を限度としてこれを交付する。
第十三 国が買収する農地の対価及び報奨金は、原則として農地証券の交付による。
第十四 農地の買受人は、可能な限度で農地の代価の全部又は一部を一時払することとし、その残額は年利三分二厘期間最長三十年(◻︎〔据〕置期間を含める。)の年賦償還とする。但し、買受人は、償還期間を短縮し又は繰上償還をなすことができる。
農地の代価の年賦償還額と農地に対する公租公課との合計額は、将来農産物の価格がいかに下落しても、その農地の平年の収穫物の価格の三分の一以内で中央農地委員会の定める割合を超えないものとする。この割合を超えた場合には、償還金の減免等の措置を講ずる。
農地の流失埋没その他災害に因り償還が著しく困難となつた場合の措置は、右に準ずる。
第十五 市町村農地委員会の委員は、農地の所有者及び小作人から選挙によつて同数の者を選ぶ。
前項の委員の人数は、十名乃至二十名とする。
選挙による委員の外農地の所有者及び小作人を代表する委員の合議によつて、三名以内の委員を置くことができる。
都道府県農地委員会は、市町村農地委員会に準じて改組する。
農地に関する重要事項を処理するため、新に中央農地委員会を置く。
中央農地委員会の委員は、農地の所有者、小作人の代表者、学識経験者等を以て充てる。
第十六 国は、農地の買収及び売渡を二年間に行ふものとし、これがため登記手続の簡易化を図る。
第十七 国の行ふ自作農創設事業の実施のため、一定期間農地の所有権、永小作権、賃借権、その他の権利の設定又は移転及び小作地の取上げの制限を強化する。
第十八 第六の(ロ)以外の開墾用地についても、国は農地に準じてこれを買収する。
第十九 将来の農地の兼併を防止すると共に、農地利用の適正化を図るため、その所有権、永小作権、賃借権その他の権利の設定及び移転並に農地の使用目的の変更は、地方長官又は市町村農地委員会の承認を要することとし、尚必要な場合には、その譲渡先を指定することができる等の措置を講ずる。
第二十 小作関係の改善に関しては、左の措置等を講ずる。
(イ) 将来農産物の価格がいかに下落しても、小作料は、田にあつては平年収穫される米の価額の二割五分、畑にあつては平年収穫される主作物の価額の一割五分以内で、中央農地委員会の定める割合を超えることができない。
(ロ) 小作契約は、すべて文書によらしめることとし、小作料額、契約期間等の主要事項を明確ならしめる。
(以下略)







