特集 国立公文書館開館50周年記念式典 新たな一歩を踏み出す 鎌田 薫 国立公文書館館長、井上 信治 内閣府特命担当大臣、上川 陽子 世界に誇る国民本位の新たな国立公文書館の建設を実現する議員連盟会長、福田 康夫 元内閣総理大臣

 昭和46年(1971)7月1日の開館からちょうど50年となる7月1日、国立公文書館は、新たなキャッチコピー「記録を守る、未来に活かす。」をテーマに掲げた「国立公文書館開館50周年記念式典」を開催しました。この式典で、当館は、我が国の公文書管理の取組において自らが果たしてきた役割を振り返るとともに、新館に向けた新しい一歩を刻むこととなりました。
 式典は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、参加者を少人数に抑えつつ、同時にオンラインにてその様子を多くの皆様にお届けするかたちで開催しました。



式典第一部

 式典は二部構成で行われました。第一部では、館長挨拶に続き、これまでに当館の活動を支援し、また我が国の公文書管理の発展を牽引してきた方々が登壇されました。


【国立公文書館館長挨拶】

 開式の辞に続き、まず、主催者を代表して当館館長の鎌田薫より挨拶がありました。鎌田館長は「当館の機能をさらに拡大、充実させ、世界に誇る国民本位の国立公文書館に発展させることを目指して、新館を建設する計画が進められている。この動きは、公文書の適切な管理に対する社会的期待が日々高まっていること、当館がみなさまの力強いご支援の下、そうした期待に着実に応えていることを象徴している」と述べつつ、これまでの当館の取組への理解と協力への感謝の意を伝えました。

【内閣府特命担当大臣挨拶】

 公文書管理を担当する井上信治内閣府特命担当大臣によるご挨拶では「国立公文書館は、開館以来、国民共有の知的資源である公文書の保存・利用拠点として重要な役割を果たしてきた」「他方、国立公文書館は、諸外国に比べると、施設や機能において見劣りするとの指摘から、更なる機能充実をはかるべく令和10年度末の新館開館に向け新たなステージへと進みつつある。公文書管理制度をめぐる取組は着実に進展しており、国立公文書館が果たすべき役割もますます高度化、多様化していく。国立公文書館が次の50年、さらにその先も求められる役割を十分に果たせるよう、緊密に連携を図っていきたい」とのお話がありました。

【来賓代表挨拶】

 来賓代表として、世界に誇る国民本位の新たな国立公文書館の建設を実現する議員連盟の上川陽子会長よりご挨拶がありました。上川会長からは、「我が国の公文書管理の歴史は始まったばかりであり、今後もますます努力を重ねていかなければならない。新館の建設を通して、広く国民のみなさまが公文書管理の重要性に理解を深め、関心を向けていただくとともに、国立公文書館が将来にわたって国民のアイデンティティを高める場として、一層重要な役割を果たしていくことを祈念している」と今後への期待が述べられました。

【祝辞】

 祝辞では、国際公文書館会議(ICA)のデービッド・フリッカー会長(オーストラリア国立公文書館館長)からのビデオレターが紹介されました。フリッカー会長からは「国立公文書館はICAの主要なメンバーとして、また東アジア地域支部の理事として指導的役割を果たし、専門的知見や経験を広く国際社会と共有してきた。デジタル化の波と、それに対応できる新たな専門職の養成という課題に向きあっていくために、ICAに属する私たち皆が、これからも国立公文書館の英知と友情を重んじることだろう」とのメッセージが寄せられました。

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デービッド・フリッカー会長によるビデオレターでの祝辞の様子

デービッド・フリッカー会長によるビデオレターでの祝辞の様子

【記念講演】

 記念講演では、我が国の公文書管理の発展に長く尽力された福田康夫元内閣総理大臣が登壇されました。
 福田元総理は、40年ほど前、戦時中の前橋市内の写真を探すためにアメリカの国立公文書館を訪れたことが、公文書管理に関心を持つきっかけだったと述べ、「私が希望していた写真があっという間に出てきて、大変素晴らしい施設だなと思った。その後国会議員になり、初めは公文書館の設備に関心があったが、話を聞いてみると、公文書管理の法律もないことが分かった。そこで、公文書管理の研究会をスタートさせた」と、公文書管理制度に携わり始めた経緯を振り返りました。

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新国立公文書館エントランスホール及び大階段イメージ

新国立公文書館エントランスホール及び大階段イメージ
画像出典:2021年7月19日内閣府開催 魅力ある新国立公文書館の展示・運営の在り方に関する検討会(第1回) 配布資料

 新館建設の必要性について、福田元総理は「健全な民主主義の基本として、国民に真実を明らかにすることは政府の役割。それを実現する場として公文書館は誰でも行きやすく、親しみやすい場所にあってほしい」「国民の権利である公文書の利用請求権を保障するにふさわしい十分な設備を備えた施設を用意しなければならない」「公文書を適切に保存し、展示できる環境を整えることで、一人一人の公務員が、将来の世代に責任を持って、恥ずかしくないような公文書を作成し、保存しようという気持ちを自然に持てることになる。昨今の改ざん問題は極めて遺憾なものである」と述べました。


 さらに新館に対して「IT技術やディスプレイ技術を駆使して、世界最先端の管理の仕組みを作り上げてほしい。あわせて、国民が利用・閲覧しやすいソフト面の研究も大事だ。歴史を築き上げる、世界で一番利用価値の高い館として、永遠に充実強化を続けることを期待したい」と語り、次の時代への期待を寄せました。




関連動画をYouTubeで公開

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、式典は会場参加者を少人数に抑え、同時にライブ配信を行いました。当日配信した式典の映像(約90分)をYouTubeで公開中です。
 また、開館50周年記念映像(約17分)もYouTubeで公開しています。第1章「国立公文書館の50年」では、この50年間の社会情勢を背景に、それぞれの時代における公文書管理の在り方と当館が果たしてきた役割を未来への展望とともに紹介しています。第2章では、当館所蔵資料の中から特に「時代の節目」を物語る資料を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

記念式典(約90分)

式典の映像

記念映像(約17分)

開館50周年記念映像