アーキビストの仕事にせまる!第二回「閲覧と見学─公文書館に来てできること」

国立公文書館で働くアーキビストたちは、日々どのようなことを考えて業務を行なっているのでしょうか?
知られざるアーキビストの素顔を紹介するこのコーナー、今回は利用担当者にせまります!

国立公文書館では、具体的にどのようなことができるのでしょうか?

まず、1階で展示を見ていただくことができます。これは、特に調べたいことや目的がなくても気軽に足を運んでいただけるものだと思います。特別展、企画展だけでなく、新旧憲法をはじめとする常設展もあります。

それから、事前申し込み制で、館の見学会に参加いただけます。これまでも地方公共団体の方々や教育関係の団体向けにご案内していたのですが、もっと沢山の方に来ていただこうということで、ここ1、2年、この取り組みを強めています。閲覧室だけでなく、修復室や書庫など、バックヤードの様子を職員がご案内します。内部でどんな仕事をしているのかを見ていただくことで、公文書館と公文書に対する理解が深まると思います(こちらに関して詳しくは、PDF版の8ページ「ご案内」をご覧ください)。

書庫
書庫
公文書、和書、漢籍、洋書等、資料の種類ごとに収蔵されています
(一般の方は入室不可)

そして、ぜひ閲覧にも来ていただきたいですね。当館ホームページで検索していただくデジタルアーカイブもありますが、ウェブ上に画像がアップされていない資料もたくさんありますし、レファレンスも可能ですから。ぜひ、閲覧室に来ていただいて、いろいろな調べ物にお役立てくださると嬉しいです。

閲覧室室内
閲覧室
資料はデジタルカメラによる撮影が可能です
(照明や三脚の使用はご遠慮いただいております)
例えばどのようなことを調べられるのでしょうか?

館によく来る方は、ご自分でテーマをお持ちのようです。例えば鉄道のことが大好きな方は、非常に熱心に日本中の私鉄の記録を調べていらっしゃるし、ご自身の出身大学のことを調べたいという方もいらっしゃいます。

他には、ご自分にゆかりのある市町村について調べることですね。合併で名前が変わったというようなことがあれば公文書として残っていますから。名前の変遷だけでなく、その頃どんな建物があって、どのくらいの人口だったか、ということもわかりますので、面白いと思います。お誕生日の天気図なんかはどうですか。

専門的なことからプライベートな事柄まで、さまざまな使い方があるんですね

はい。裁判記録を調べにいらっしゃった方もありましたね。相続に必要な書類がどうしても欲しいという方もいらっしゃいました。ご先祖の記録も見つけられるかもしれませんよ。

利用目的を個々にお聞きすることはしていませんので、具体的には分からないのですが、「こんな使い方がある」ということは引き続きリサーチして、アピールしていきたいとは思っています。そういう情報を蓄積して、それを初めて来訪される方はもちろん何度も利用されている方にも、「こういうことを調べたいなら、こういう資料がありますよ」と還元していきたいです。

最近「コンシェルジュ」がいる図書館がありますよね。公文書館にもそういう人がいるような環境を整えていけたらと思っています。

利用者の皆さまに、何か望むこと、伝えたいことはありますか?

1階で展示を見た際、展示資料の次のページは何だろうという時には、ぜひ閲覧室を利用してほしいですね。まずはそういうところから資料にアクセスしてみてください。

あとはやはり、資料を丁寧に扱ってください、ということに尽きます。公文書館は、文書の保存と利用という、ある意味相反するように見える使命をもっていますから、両方を推進することは易しいことではありません。けれども、私としては、保存と利用のバランスをとりつつ、できるだけ良い状態で、「あなたも使ったから次の人も使えるようにしようね」ということを意識してほしい。「誰でも使えるけれど、この世に一つしかないよ」ということを、おろそかにせず伝えていきたいと思っています。

私たちが小さい頃は、高度経済成長の中、どんどん景気が良くなる一方で、環境への配慮をおろそかにしていました。でも今、改善が加えられて、都会でもまたきれいな空気や川や水が戻ってきた。それと同じように、自分たちだけが良ければ良いということではなくて、その資料を次に使う人たち、孫やひ孫の世代にも、きちんと良い状態で繋いでいきたい。そういう思いが、アーカイブズの考え方の中にあると思っています。

修復室室内
修復室

以前、調べたことがあるのですが、戦時中の昭和20年に、公文書を守るためによその場所に移し、疎開させた事実があることがわかりました。「誰々がどこへ行った」という出張の記録が残っていたんです。なぜだろうと思ったら、資料を運ぶために信州や上州にも行っていたんですね。そういう努力があって維持されてきたものを、しっかり守って次の世代にバトンタッチしていきたいです。

ありがとうございました。
最後に、梅原さんにとって、アーキビストって何でしょうか?

さしずめ江戸時代なら書物奉行か書物同心のようなものでしょうか。
アーキビストには、様々な側面があると思います。資料を選び出す人、内容を調査して展示という形で国民に還元する人、資料を守る人。そんな風にかたちは違っても、いろいろな形で資料を管理し、提供する人だと思います。私も、いろいろな人に使っていただいて、これが本当に役に立って、少しでも何かその人たちのためになればいいなあというのが、今、一番強い想いです。

誰でも使えるけれど、この世に一つしかない 次に使う人たち、孫やひ孫の世代にも、きちんと良い状態で繋いでいきたい