5. 破窓やぶれまどの記

[請求番号 166-0384]

城東山人と名乗る著者が、10月2日の激震と11日までの町の様子を記録した書。著者の本名は未詳ですが、大坂屋藤兵衛という酒屋の息子で、西河岸町にしがしちょう(現在の八重洲1丁目・日本橋1丁目)で家主を務める年配の男性であったことがうかがえます。書名は「破れたる窓のもと」(地震で破損した自宅で)綴った書、という意味です。

千万の雷が落ちたような音を立てて建物が倒壊し、障子が波打つような揺れを感じながら、なんとか負傷もせず難を切り抜けた著者は、翌3日、長屋の被害状況を報告するために深川の地主のもとへ出かけ、4日は妻の老母の安否を尋ねるために家を出ました。そして5日には「此後のおもひ出に」希有けうの震災の有様を見届けておこうと朝から出かけています。こうしてまとめられた本書には、亡骸を酒樽や水桶に入れて(あるいはこもに包んで)本所回向院えこういんへ運ぶ様子や物価の急激な上昇など、大災害の惨状と影響が記録されています。また付録として、某大名屋敷で初震と余震の大きさを日を追って○(丸)の大小で示した震度表も掲載されていて、あわせて貴重な地震史料といえます。全1冊。

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