

教育の理念及び教育基本法に関すること外三件
敗戦前の教育は明治23年(1890)に出された教育勅語に基づいて行われていました。しかし、戦後の教育の基本方針・原則は教育基本法によって定められることになりました。
昭和21年(1946)8月に設置された教育刷新委員会は、同年11月29日に開催した第17回総会において、教育基本法の制定と、同法に盛り込むべき教育の理念及事項等の決議を行い、それを内閣総理大臣吉田茂に報告しています。資料の形式から、この決議が、閣議において供覧されたのち、文部大臣宛に送付された「回付案」として残ったことがわかります。
1. 教育刷新委員会の決議が、昭和22年3月に公布・施行された「教育基本法」にどのような形で反映されたのか、確認してみよう。
本資料が含まれる『公文雑纂』は、内閣が作成・収受した明治19年から昭和25年までの文書が含まれる3,000冊を超える資料で、『公文録』や『公文類聚』に綴られた条規典例以外の公文書が編冊されたものと考えられています。
資料名 | 教育の理念及び教育基本法に関すること外三件 |
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請求番号 | 纂03115100 (件名番号:009) |
デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/item/1698723 |
教育の理念及び教育基本法に関すること外三件
閣甲第四五一号 起案 昭和二十一年十二月 閣議 昭和二十二年一月四日
(花押)
別紙教育刷新委員会委員長報告
一 教育の理念及び教育基本法に関すること
外三件
右、供覧
回付案
昭和二十二年一月四日
内閣書記官長
文部大臣宛
教育刷新委員会委員長から別紙のとおり報告があつたので名によつて送付します。
――――――
昭和二十一年十二月二十七日
教育刷新委員会委員長 安倍能成
内閣総理大臣 吉田 茂 殿
教育刷新委員会第十七回総会において左記事項を決議致したので報告する。
なお、この決議事項を速やかに実現されるよう取り計らわれたい。
記
(一)教育の理念及び教育基本法に関すること (別紙一)
(中略)
―――――――
秘
(別紙一)
(一) 教育の理念および教育基本法に関すること(昭和二十一年十一月二十九日総会にて採択)
一、教育基本法を制定する必要があると認めたこと。
二、教育理念はおおよそ左記のようなものとして、教育基本法の中に教育の目的、教育の方針としてとりいれること。
(一)教育の目的
教育は、人間性の開発をめざし、民主的、平和的な国家および社会の形成者として、真理と正義とを愛し、個人の尊厳を尚び、勤労と協和とを重んずる、心身ともに健康な国民の育成を期するにあること。
(二)教育の方針
教育の目的は、あらゆる機会とあらゆる場とを通じて実現されなければならない。この目的を達成するためには、教育の自律性と学問の自由とを尊重し、現実との関連を考慮しつつ、自発的精神を涵養し、自他の敬愛と協力によって文化の創造と発展とに貢献するように努めなければならないこと。
三、教育基本法には、この法律の制定の由来、趣旨を明らかにするため、前文を附することとし、その内容はおおむね左のようなものとすること。
(一)従来の教育が画一的で形式に流れた欠陥を明らかにすること。
(二)新憲法の改正に伴う民主的文化国家の建設が教育の力にまつことをのべ、新教育の方向を示すこと。
(三)この法律と憲法および他の教育法令との関係を明らかにすること。
(四)教育刷新に対する国民の覚悟をのべること。
四、教育基本法の各条項として、おおむね左の事項をとりいれ、新憲法の趣旨を敷衍するとともに、これらの事項につき原則を明示すること。
(一)教育の機会均等
(二)義務教育
(三)女子教育
(四)社会教育
(五)政治教育
(六)宗教教育
(七)学校の性格
(八)教員の身分
(九)教育行政
五、前項に示した教育基本法の各条項の内容については、総会、各特別委員会の審議の結果をとりいれること。
六、文部省において、右の趣旨に則って、教育基本法案を作成せらるること