

小学校設備準則ヲ定ム
小学校令の公布から4年後、第二次小学校令(明治23年(1890)改正)の制定により、新たに小学校設備が定められました。この規則では、小学校校舎を日当たりがよく安全な場所に設置し(第1条)、そこに天皇皇后両陛下の「御影」(ごえい、写真)と「教育ニ関スル勅語ノ謄本」を置くこと(第2条)と定められました。また、下駄箱や傘立ての設置、校具として掛図、地球儀、黒板、裁縫道具などを準備することが決められました。
1. 当時の小学校にある設備・ものを、現在の小学校と比べてみよう。また、その設備・ものがある理由を考えてみよう。
2. 第11条より、当時の小学校で使っていたものを、現在の小学校と比べてみよう。
『公文類聚』は、明治15年から昭和29年(1954)にわたる、4,061冊もの簿冊で構成される資料群です。明治15年から同18年までのものは『太政類典』を引き継いだ編集物で、明治19年以降のものは、内閣によって作成・収受された、主として法律および規則の原議書を収録したものです。
資料名 | 小学校設備準則ヲ定ム |
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請求番号 | 類00570100 (件名番号:004) |
デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/item/1667454 |
小学校設備準則ヲ定ム
文部省令
文部省令第二号
明治二十三年 〈十月〉勅令第二百十五号 小学校令第十九条に基づき、小学校設備準則を定むること左のごとし。
明治二十四年 四月八日 文部大臣 芳川 顕正
小学校設備準則
第一条 | 校地は日当たり好く且つなるべく開豁乾爽なるを要す 校地は喧閙にして授業に妨げある場所、危険なる場所、道徳上嫌忌すべき場所、停滞せる池水その他凡て悪臭あり、もしくは衛生上に害ある蒸発気を生ずる場所に接近すべからず。 校地を択ぶにあたり衛生上の利害明らかならざるときは、医師の意見を聞くことを要す。 |
第二条 | 校舎には 天皇陛下及び 皇后陛下の 御影(1)並びに教育に関する 勅語(2)の謄本を奉置すべき場所を一定し置くを要す。 |
第三条 | 校舎はなるべく平屋造りなるを要す。もし二階造りなるときは、なるべく幼年生の教室を階下に置くを要す。 校舎を新築するにあたりては、将来増加すべき生徒の員数を見積もりて、なるべく将来の増築に便宜なる計画をなし、またはなるべく予備の教室を設くるを要す。 |
第四条 | 各教室の大きさは、その内に入るべき机並びに座席の数、大きさ及び排置方に応じてこれを定め、生徒四人につき、およそ一坪より小なるべからず。 各教室は、一教員の同時に教授し得べき員数の生徒を容るるより大なるべからず。 |
第五条 | 校舎は生徒の帽、傘、雨衣、足駄等を置くべき場所を備うるを要す。 校舎はなるべく講堂、物置等を備うるを要す。 裁縫の科目を設くる小学校は、男女を区別して教授せざる場合においては、該科目のため、なるべく特別の教室をその校舎に備うるを要す。 手工または工科を設くる小学校の校舎は、工作の実地練習のため、特別の教室を備うるを要す。 大なる小学校の校舎は図書標本等を置くが為、なるべく特別な場所を備うるを要す。 |
第六条 | 体操場は、なるべく校舎に傍うて備うるを要す。 |
第七条 | 農業練習場はなるべく校舎に遠ざからざるを要す。 |
第八条 | 校舎には堀井戸または水道等によりて飲料水を供給するの備えあるを要す。 |
第九条 | 便所は校舎外において男女を区別して備うるを要す。 |
第十条 | 校舎に傍うてなるべく学校長もしくは首席教員の住居及び菜園を設くるを要す。 |
第十一条 | 校具は甲乙の二種とす。 甲種の工具は専ら教授の用に充つる器具とす。尋常小学校においては仮名の掛図、教員用教科書、学校所在府県の地図、日本地図、地球儀、定木、両脚規(3)、指数器(4)、算盤、度量衡、黒板、黒板拭、白墨、水入れ、庶物指数用具を備うるを常例とし、高等小学校においては、教員用教科書、学校所在府県の地図、日本地図、万国地図、地球儀、定木、両脚規、算盤、度量衡、黒板、黒板拭、白墨、水入れ、博物標本、理化器械、図画の手本、図画用具、裁縫用具、楽器、体操器械を備うるを常例とし、その他は学校の等位、学級の編制または教科、もしくは教科目の種類に応じて備うべきものとす。 乙種の校具は国旗、門札、生徒用及び教員用の机及び腰掛(腰掛を用うる学校に限る)、時計、諸帳簿、硯箱並びに付属品、紙、書籍棚、戸棚、日用品その他学校に備付けくるを必要とする物件にして、甲種の校具に属せざるものとす。 |
第十二条 | 生徒用の机及び腰掛の構造は、生徒の衛生上に害なからしめ及び生徒の監視上等に便利ならしむるを要す。 |
第十三条 | 第二条に掲ぐる場所、校舎の内部、外部の壁、校舎の床、階梯、出入口、廊下、屋根、教室〔の〕天井、戸、梁、窓、便所、体操場、農業練習場、教員住居及び井戸等の構造並びに教室天井の高さ、教室の幅及び長さの制限、暖室、通風、採光の方法等に関する必要の事項につきては、地方の情況に斟酌してこれを規定するを要す。 |
第十四条 | 校具の構造配置等に関する必要の事項につきては、地方の情況を斟酌してこれを規定するを要す。 |
第十五条 | 校舎、校地、校具等の掃除及び保存に関する必要の事項につきては、地方の情況を斟酌してこれを規定するを要す。 |
第十六条 | 設備規則中の条規にして校舎の新築、校具の新調等に際するにあらざれば適用しがたきものは、その時を待ってこれによらしむべきものとす。ただし猶予すべからざる事情ある場合においてはこの限りにあらず。 |
- (1)御影:天皇の肖像のこと。
- (2)教育に関する勅語:明治23年(1890)10月30日、国民教育の根本理念を示すために発せられたもの。
- (3)両脚規:コンパスのこと。
- (4)指数器:ものの数え方などを学ぶ際に使った器具。