

中学教則略并小学教則
本資料は、明治5年(1872)、学制発布の翌月に出された中学と小学の教則(中学は教則略)に関する文部省の布達です(9月8日付)。
資料では、中学の教科課程と、小学の教科課程、教授方法の大要、及び各教科で使用する教科書の基準を示しています。小学は、上下二等に分け、6歳から9歳を下等、10歳から13歳を上等としています。下等小学、上等小学はそれぞれ8級に分けられ、毎級を6ケ月とし、8級から開始して1級に至るとしました(中学は、上下二等に分けた後、それぞれ6級)。 ここでは、小学の最下級の1年間である、8級と7級の教則と、小学全課程での強化と学習時間の一覧である「小学教則概表」を紹介しています。
これら教育課程は、江戸時代までの寺子屋や各藩に設置されていた藩校とも異なる、欧米の教育課程を模範として定められており、教師の養成が始まったばかりの当時、実現の難しいものだったと言われています。
1. 現在の小学校1年生にあたる、「第八級」と「第七級」で学ぶことをまとめてみよう。
2. 現在の小学校の、どの教科にあたる科目を学んでいるだろうか。
3. 八級から一級までに学ぶ科目と時間が一覧になっている「小学教則概表」をみて、それぞれ学ぶ科目が現在の小学校のどの教科にあたるか、見比べてみよう。
4. 現在の小学校で学ぶ科目と、どのようなところが一緒で、どのようなところが違うかを考えてみよう。
5. どの科目が一番多いか、またそれはなぜかを考えてみよう。
さらなる探究のために
・第八級と第七級の科目と週当たりの学習時間をみて、当時の子どもたちの時間割表を作ってみよう。
この資料が収録されるのは、『太政類典』という資料です。慶応3年(1867)から明治14年までの太政官日記及び日誌、公文録などから、先例や法令等を選んで浄書したもので、制度、官制、官規、儀制等の19部門に分類し、年代順に編集されています。
資料名 | 中学教則略并小学教則 |
---|---|
請求番号 | 太00467100 (件名番号:004) |
デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/item/1390450 |
文部科学省「学制百五十年史」
中学教則略并小学教則
〇小学教則
第一章
小学を分けて上下二等とす。下等は六歳より九歳に止まり、上等は十歳より十三歳に終わり、上下合わせて在学は八年とす。
第二章
下等小学の課程を分けて八級とす。毎級六カ月の習業と定め、始めて学びに入る者を第八級とす。次第に進みて第一級に至る。今、その毎級課業授け方の一例を挙げて左に示す。もっとも一般必行のものにはあらずといえども、各その地その境に随い、よくこれを斟酌して活用の法を求むべし。
第八級 六カ月 〈一日五時、一周三十時の課程。日曜日を除く。以下、これに倣え。〉
綴字(かなづかい) 一週六時 〈即ち、一日一時〉
生徒残らず順列に並ばせ、智恵の糸口、うひまなび、絵入り智恵の環一の巻等をもって、教師盤上に書してこれを授く。前日授けし分は、一人の生徒をして他生の見えざるよう、盤上に記さしめ、他生は各石盤に記し、記しおわりて盤上と照らし、盤上誤謬あらば、他生の内をして正さしむ。
習字(てならい) 一週六時 〈即ち、一日一時〉
手習い草紙、習字本、習字初歩等をもって、平仮名、片仮名を教う。ただし、数字は西洋数字をも加え教うべし。もっとも字形、運筆のみを主として、訓読を授くるを要せず。教師は順廻してこれを親示す。
単語読方(ことばのよみかた) 一週六時 〈即ち、一日一時〉
童蒙必読単語編等を授け、兼ねてその語を盤上に記し、訓読を高唱し、生徒一同、これに準誦せしめ、しかして後、その意義を授く。ただし、日々前日の分を暗誦し来らしむ。
洋法算術(さんよう) 一週六時 〈即ち、一日一時〉
筆算訓蒙、洋算早学等をもって、西洋数字、数位より加減算、九々の声に至るまでを、一々盤上に記してこれを授け、生徒をして紙上に写し取らしむ。ただし、加減の算法においては先ずその法を授け、しかしてただその題のみを盤上に出し、筆算と暗算とを隔日練習せしむ。暗算とは胸算用にて、紙筆を用いず、生徒一人ずつをして盤上の題に答えしむるなり。前日の分は総て盤上に記して、生徒をして一同誦せしむ。
修身口授(ぎょうぎのさとし) 一週二時 〈即ち、一日おきに一時〉
民家童蒙解、童蒙教草等を以て教師、口づから縷々これを説諭す。
国体学 一週一時
単語暗誦(ことばのそらよみ) 一週四時
一人ずつ直立し、前日より学ぶところを暗誦せしめ、あるいはこれを盤上に記さしむ。
第七級 六カ月
綴字 一週六時
前のごとくにして五十音四段の活用、その外、字音、仮名づかい等を授く。
習字 一週六時
前級のごとく、漢字楷書を授く。
単語読方 一週四時
地方往来、農業往来、世界商売往来等を前級のごとく授く。
算術 一週六時
乗除を授くること、前級の法のごとし。もっとも隔日筆算と暗算とを伝う。
会話読方(ことばづかいよみかた) 一週四時
会話編をもって授くること、単語編の法に同じ
単語暗誦 一週二時
前級のごとし
国体学 一週一時
修身口授 一週一時
前級のごとし