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解説
書下し
資料名

治安警察法第五条中改正ノ請願ノ件

解説

資料は、大正10年(1921)、平塚明(らいてう)等が提出した、女子の政談集会への参加を禁じた治安警察法第五条改正を求める請願書についての回答案に関する閣議の文書です。衆議院は一定の理解を示し、採択しましたが、「女子の天分は家庭の内」にあるとする思想が一般に支配的であるとし、今回は「採納」しないと記されています。治安警察法第5条第2項から「女子」の文言を削除する改正は大正11年に行われ、これにより女性にも政治参加の道がわずかに開かれることになりました。

こんな「問い」はいかが

1.請願とはどのような行為をいうのか、調べてみよう。
2.請願の代表者である「平塚明」について、調べてみよう。
3.「平塚明」らによる主張を整理してみよう。
4.当時の政府が、「婦人」が政治結社に加入することについてどのように考えていたかを整理してみよう。また、それについてどう考えるか、自分の意見をまとめてみよう。

さらなる探究のために

・「政治的社会的の自覚によりこれを要望する婦人の如きは極めて一部」にとどまっているのであれば、「婦人全体」に対して政治結社の加入を認めなくてよいとする意見について、どう考えるか、自分の意見をまとめてみよう。

資料情報

本資料は、『公文雑纂』という資料に収録されたものです。『公文雑纂』は、内閣が作成・収受した明治19年(1886)から昭和25年(1950)までの資料が含まれる、3,000冊を超える資料で、『公文録』や『公文類聚』に収録された条規や典例等に関わる公文書の原本以外の公文書が編冊されたものと考えられています。ここで紹介する資料が含まれる簿冊には、大正9年から10年にかけて受け付けられた国内からの多様な請願と閣議における回答案が残されています。

資料名 治安警察法第五条中改正ノ請願ノ件
請求番号 纂01587100 (件名番号:060)
デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/item/2492449
資料名

治安警察法第五条中改正ノ請願ノ件

内務省衆警 第19号
治安警察法第五条中改正請願に関する件
治安警察法第五条中改正に関し、東京府北豊島郡瀧野川村大字田端四百四十五番地平塚明外六百四名より、第四十三議会開会中衆議院に請願書を呈出し同院においてはその趣旨を至当なりと認めこれを採択すべきものと議決せしも、女子に対し政治上の結社に加入することを許すにおいては女子を駆て政事に奔走せしむるに至る結果、或いは家事を顧みることなく、或いは婦人の淑徳を傷つくる等、我が国特有の美風たる家族制度の破壊となるべき素因を醸成することなきを保し難きのみならず、真に政治的社会的の自覚によりこれを要望する婦人の如きは極めて一部の者に限られ女子の天分は家庭の内にありとする思想は依然としてなお我国一般を支配する思想なるをもって右に付きては今なおこれを認むる能わず、ただ女子の政談集会に会同しまたはその発起人たることの解禁に付きては異議なきところなるも、同法中には他の条項に付きても早晩改正を要すと認むべきものありて慎重審査中にあるをもって、これ等の条項改正と共にこれが禁止を解除するも決して時期を失するものにあらずと信ぜらるるに付き、この際は全部これを採納せざることに決定するを妥当なりと認む。
右、閣議を請う。
  大正十年一月二十七日
       内務大臣床次竹二郎
  内閣総理大臣 原 敬 殿



    意見書
請願文書表第一四号
 治安警察法第五条中改正の請願 東京府北豊島郡瀧野川町大字田端四百四十五番地平塚明外六百四名呈出(紹介議員林毅陸君外四名)
右請願の要旨は、新聞雑誌の政治記事もしくは政治論を自由に読むことを得、かつ貴衆両院における議事の傍聴を許されおる婦人に対し、他方において政治上の結社に加入すること及び政談集会に会同しもしくはその発起人たることを禁ずるは、社会的正義にもとるものといわざるべからず。よりて治安警察法第五条第一項第五号「女子」及び第二項中「女子及」を削除し、婦人に政治的教養の機会を与えられたしというにあり。
衆議院はその趣旨を至当なりと認め、これを採択すべきものと議決せり。よりて議院法第六十五条により別冊御送付に及びそうろうなり。

 大正九年七月二十八日
            衆議院議長 奥 繁三郎

     内閣総理大臣 原 敬 殿

            衆議院書記官長 寺田 榮