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解説
書下し
資料名

露国ニ対シ宣戦・御署名原本・詔勅

解説

ロシアは、北清事変を機に満州(中国東北部)を実効支配し、日本を警戒する韓国がロシアに接近したことで朝鮮半島への影響力も強めました。日本はロシアとの間で、満州におけるロシアの権益と韓国における日本の権益を互いに認めることを軸に交渉を行いましたが、交渉はまとまらず、明治37年(1904)2月10日、日露両国は互いに宣戦布告し、日露戦争が始まりました。
本資料は、日露戦争の宣戦布告に際して発せられた宣戦の詔勅に関する御署名原本です。

こんな「問い」はいかが

1.詔勅において「露国ハ其ノ清国トノ明約及列国ニ対スル累次ノ宣言ニ拘ハラス依然満洲ニ占拠シ益々其ノ地歩ヲ鞏固ニシテ」とあるのは、具体的にロシアのどのような行動をさしているか、調べてみよう。
2.地図を見て、ロシアが影響力を強めた満州(中国東北部)と朝鮮半島の位置関係を確認し、気が付いたことをまとめてみよう。
3.日露戦争では、どのような場所が戦場となったか調べ、地図でそれらの位置を確認しよう。

資料情報

御署名原本とは、法律や勅令などを、天皇の裁可を経て公布する際に、御名(天皇の署名)と御璽(天皇の印章)を付して発行する文書の原本を言います。

資料名 露国ニ対シ宣戦・御署名原本・明治三十七年・詔勅二月十日
請求番号 御05772100
デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/file/2519401
資料名

露国ニ対シ宣戦・御署名原本・詔勅

天佑ヲ保有シ万世一系ノ皇祚ヲ践メル大日本国皇帝ハ忠実勇武ナル汝有衆ニ示ス
朕茲ニ露国ニ対シテ戦ヲ宣ス朕カ陸海軍ハ宜ク全力ヲ極メテ露国ト交戦ノ事ニ従フヘク朕カ百僚有司(1)ハ宜ク各々其ノ職務ニ率ヒ其ノ権能ニ応シテ国家ノ目的ヲ達スルニ努力スヘシ凡ソ国際条規ノ範囲ニ於テ一切ノ手段ヲ尽シ遺算ナカラムコトヲ期セヨ
惟フニ(2)文明ヲ平和ニ求メ列国ト友誼ヲ篤クシテ以テ東洋ノ治安ヲ永遠ニ維持シ各国ノ権利利益ヲ損傷セスシテ永ク帝国ノ安全ヲ将来ニ保障スヘキ事態ヲ確立スルハ朕夙ニ(3)以テ国交ノ要義ト為シ旦暮(4)敢テ違ハサラムコトヲ期ス朕カ有司モ亦能ク朕カ意ヲ体シテ事ニ従ヒ列国トノ関係年ヲ逐フテ益々親厚ニ赴クヲ見ル今不幸ニシテ露国ト釁端(5)ヲ開クニ至ル豈朕カ志ナラムヤ
帝国ノ重ヲ韓国ノ保全ニ置クヤ一日ノ故ニ非ス是レ両国累世ノ関係ニ因ルノミナラス韓国ノ存亡ハ実ニ帝国安危ノ繋ル所タレハナリ然ルニ露国ハ其ノ清国トノ明約及列国ニ対スル累次ノ宣言ニ拘ハラス依然満洲ニ占拠シ益々其ノ地歩ヲ鞏固(6)ニシテ終ニ之ヲ併呑セムトス若シ満洲ニシテ露国ノ領有ニ帰セン乎韓国ノ保全ハ支持スルニ由ナク極東ノ平和亦素ヨリ望ムヘカラス故ニ朕ハ此ノ機ニ際シ切ニ妥協ニ由テ時局ヲ解決シ以テ平和ヲ恒久ニ維持セムコトヲ期シ有司ヲシテ露国ニ提議シ半歳ノ久シキニ亘リテ屡次折衝ヲ重ネシメタルモ露国ハ一モ交譲ノ精神ヲ以テ之ヲ迎ヘス曠日弥久(7)徒ニ(8)時局ノ解決ヲ遷延セシメ陽ニ平和ヲ唱道シ陰ニ海陸ノ軍備ヲ増大シ以テ我ヲ屈従セシメムトス凡ソ露国カ始ヨリ平和ヲ好愛スルノ誠意ナルモノ毫モ(9)認ムルニ由ナシ露国ハ既ニ帝国ノ提議ヲ容レス韓国ノ安全ハ方ニ危急ニ瀕シ帝国ノ国利ハ将ニ侵迫セラレムトス事既ニ茲ニ至ル帝国カ平和ノ交渉ニ依リ求メムトシタル将来ノ保障ハ今日之ヲ旗鼓(10)ノ間ニ求ムルノ外ナシ朕ハ汝有衆ノ忠実勇武ナルニ倚頼(11)シ速ニ平和ヲ永遠ニ克復シ以テ帝国ノ光栄ヲ保全セムコトヲ期ス
(御名御璽)
 明治三十七年二月十日

内閣総理大臣兼       
内務大臣伯爵桂太郎
海軍大臣男爵山本権兵衛
農商務大臣男爵清浦圭吾
大蔵大臣男爵曽禰荒助
外務大臣男爵小村寿太郎
陸軍大臣  寺内正毅
司法大臣  波多野敬直
逓信大臣  大浦兼武
文部大臣  久保田譲

【注】

(1)百僚有司:すべての官吏。
(2)惟(おも)フニ:思うに。
(3)夙(つと)ニ:早くから。
(4)旦暮(たんぼ):朝から晩まで。いつも。
(5)釁端(きんたん):争いのはじまりのこと。
(6)鞏固(きょうこ):強くかたいさま。
(7)曠日弥久(こうじつびきゅう):むなしく日々が過ぎること。
(8)徒(いたずら)ニ:無駄に。
(9)毫(ごう)モ:すこしも。ちっとも。
(10)旗鼓(きこ):軍隊のこと。
(11)倚頼(いらい):たよりにすること。