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解説
書下し
資料名

三十一 日英協約ニ関スル勅語写及協約文

解説

北清事変を機に、ロシアは満州(中国東北部)に軍隊を送り、事変後も撤兵せず実効支配を進めました。明治35年(1902)、日本は、ロシアの南下政策を警戒するイギリスと日英同盟を締結しました。両国が同年1月に調印した第1回日英同盟協約では、清国におけるイギリスの利益と清国及び韓国における日本の利益を相互承認し、日英いずれかが第三国と交戦したときは中立を守り、複数国と交戦したときは参戦することなどを定めています。
本資料は、枢密院文書に収められた、第1回日英同盟協約の写しです。

こんな「問い」はいかが

1.資料を読み、第1回日英同盟協約では、どのようなことを取り決めたか、条文内容をまとめてみよう。
2.イギリスが日本と同盟を結ぶ背景としては、どのようなことが挙げられるか。当時のイギリスの対外政策や、イギリスとロシアの関係を調べてみよう。

資料情報

本資料が含まれる枢密院関係文書は、大日本帝国憲法下で重要な国務に関し、天皇の諮問にこたえることを主な任務とした枢密院の会議関係文書を、同会議の手続段階別、年別、諮問案件別に編集したものです。明治21年(1888)に枢密院が設置されてから、同院が日本国憲法により廃止される昭和22年(1947)までの、2,700冊以上の簿冊があります。

資料名 三十一 日英協約ニ関スル勅語写及協約文
請求番号 枢00009100
デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/item/1775872
資料名

三十一 日英協約ニ関スル勅語写及協約文

(印)
日本国政府及大不列顛国(1)政府ハ偏ニ(2)極東ニ於テ現状及全局ノ平和ヲ維持スルコトヲ希望シ且ツ清帝国及韓帝国ノ独立ト領土保全トヲ維持スルコト及該二国ニ於テ各国ノ商工業ヲシテ均等ノ機会ヲ得セシムルコトニ関シ特ニ利益関係ヲ有スルヲ以テ茲ニ左ノ如ク約定セリ

第一条 両締約国ハ相互ニ清国及韓国ノ独立ヲ承認シタルヲ以テ該二国孰レ(3)ニ於テモ全然侵略的趨向ニ制セラルヽコトナキヲ声明ス然レトモ両締約国ノ特別ナル利益ニ鑑ミ即チ其利益タル大不列顛国ニ取リテハ主トシテ清国ニ関シ又日本国ニ取リテハ其清国ニ於テ有スル利益ニ加フルニ韓国ニ於テ政治上並ニ商業上及工業上格段ニ利益ヲ有スルヲ以テ両締約国ハ若シ右等利益ニシテ別国ノ侵略的行動ニ因リ若クハ清国又ハ韓国ニ於テ両締約国孰レカ其臣民ノ生命及財産ヲ保護スル為メ干渉ヲ要スヘキ騒擾ノ発生ニ因リテ侵迫セラレタル場合ニハ両締約国孰レモ該利益ヲ擁護スル為メ必要欠クヘカラサル措置ヲ執リ得ヘキコトヲ承認ス 第二条 若シ日本国又ハ大不列顛国ノ一方カ上記各自ノ利益ヲ防護スル上ニ於テ別国ト戦端ヲ開クニ至リタル時ハ他ノ一方ノ締約国ハ厳正中立ヲ守リ併セテ其同盟国ニ対シテ他国カ交戦ニ加ハルヲ妨クルコトニ努ムヘシ 第三条 上記ノ場合ニ於テ若シ他ノ一国又ハ数国カ該同盟国ニ対シテ交戦ニ加ハル時ハ他ノ締約国ハ来リテ援助ヲ与ヘ協同戦闘ニ当ルヘシ講和モ亦該同盟国ト相互合意ノ上ニ於テ之ヲ為スヘシ 第四条 両締約国ハ孰レモ他ノ一方ト協議ヲ経スシテ他国ト上記ノ利益ヲ害スヘキ別約ヲ為サヽルヘキコトヲ約定ス 第五条 日本国若クハ大不列顛国ニ於テ上記ノ利益カ危殆ニ迫レリト認ムル時ハ両国政府ハ相互ニ充分ニ且ツ隔意ナク通告スヘシ 第六条 本協約ハ調印ノ日ヨリ直チニ実施シ該期日ヨリ五ヶ年間効力ヲ有スルモノトス若シ右五ヶ年ノ終了ニ至ル十二ヶ月前ニ締約国ノ孰レヨリモ本協約ヲ廃止スルノ意思ヲ通告セサル時ハ本協約ハ締約国ノ一方カ廃棄ノ意思ヲ表示シタル当日ヨリ一ヶ年ノ終了ニ至ル迄ハ引続キ効力ヲ有スルモノトス然レトモ右終了期日ニ至リ同盟国ノ一方カ現ニ交戦中ナル時ハ本同盟ハ講和結了ニ至ル迄当然継続スルモノトス

右証拠トシテ下名ハ各其政府ヨリ正当ノ委任ヲ受ケ之ニ記名調印スルモノナリ
一千九百二年一月三十日龍動(4)ニ於テ本書二通ヲ作ル

大不列顛国駐箚日本国皇帝陛下ノ特命全権公使林董 印 
大不列顛国皇帝陛下ノ外務大臣   ランスダウン 印 

【注】

(1)大不列顛国:「グレートブリテン国」。グレートブリテン及びアイルランド連合王国をさす。
(2)偏(ひとえ)ニ:ひたすら。いちずに。
(3)孰(いず)レ:いずれ。どちらか。
(4)龍動:「ロンドン」。