

現行衆議院議員選挙法ニ依ル選挙費用制限額決定ノ基準
昭和3年(1928)の第16回衆議院議員総選挙において、「(男子)普通選挙法」に基づく最初の総選挙が実施されました。有権者数が1,241万人に拡大した一方で、投票率は下落し、買収が横行したため、昭和5年、浜口雄幸内閣により、「衆議院議員選挙革正審議会」が設置されることになりました。
本資料は、同審議会の資料で、将来的に、選挙運動が「益々熾烈激甚となり」、これに伴う選挙犯罪が増加する恐れがあることから、議員候補者一人当たりの運動費用の総額を制限するための基準の検討を行ったものです。
1. 選挙運動費用に法定の上限が必要であるとされた理由を考えてみよう。
2. (男子)普通選挙の実施により、有権者数はどの程度増えたかを見てみよう。
3. 当時の選挙運動では、どのようなことが行われていたか、考えてみよう。
本資料は、明治20年(1887)から昭和22年に設置された各種調査会・委員会の資料をまとめた資料群のうち、昭和5年1月20日勅令第1号において内閣総理大臣のもとに設置された「衆議院議員選挙革正審議会」にかかる諸資料(全46冊)の一部です。審議会の参考資料として作成された「選挙運動費用の制限にかかる第百二条の改正理由書」の中に含まれています。
資料名 | 現行衆議院議員選挙法ニ依ル選挙費用制限額決定ノ基準 |
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請求番号 | 委00673100 (件名番号:015) |
デジタルアーカイブ | https://www.digital.archives.go.jp/item/639861 |
現行衆議院議員選挙法ニ依ル選挙費用制限額決定ノ基準
選挙運動費に関する調べ
総選挙年次 | 有権者総数 | 候補者総数 | 選挙運動費総額 | 一選挙区平均有権者数 | 候補者一人 平均額 |
一選挙区一候補者に付き 有権者に対する平均割当額 |
備考 |
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大正4年 | 1,575,601 | 610 | 4,976,672円 | 14,455 | 8,158 | 56銭 | 大選挙区 市割独立 (区数109) |
大正6年 | 1,469,753 | 629 | 5,344,714円 | 13,483 | 8,494 | 63銭 | |
大正9年 | 3,085,648 | 900 | 21,823,191円 | 8,250 | 24,248 | 2.94銭 | 小選挙区 (区数374) |
大正13 | 3,343,710 | 1,105 | 21,910.689円 | 8,940 | 19,829 | 2.22銭 | |
改正法による見込数 | 13,429,663 (大正13年10月1日現在見込数) |
110,079 | 11,528 (法定額) |
10銭 | 中選挙区 (区数122) |
備考
一、改正法による候補者1人平均額は、1選挙区平均有権者数を議員定数にて除し、40銭に乗じたるもの。
一、大正13年総選挙における候補者1,105人の内、選挙運動費用1千円以下の者60人(この金額26,450円)、この60人を除きたる1候補者平均額は20,942円なり。
三、選挙費用見積もり(最高額1万1千円と限定したる場合の概算)
種類 | 員数 | 金額 | 単価 | 説 |
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依頼状 | 10万枚 | 2,000円 | 1枚2銭 | 有権者5万人に対し2回発送、 はがきに印刷したるもの |
事務所 | 5ヶ所 | 1,000円 | 1ヶ所200円 | 1ヶ所1か月間の家賃100円、 事務所費100円の割 |
事務員 | 20人 | 4,500円 | 一人に付き150円 | 1か月1人の給料70円 車馬賃等実費一人に付き月80円の割 |
集会 | 30回 | 1,500円 | 1回50円 | 毎日一回開く見込み |
雑費 | 3,000円 | 候補者個人の費用、自動車借入費、使丁給料その他 | ||
計 | 12,000円 |