国立公文書館 業務課 デジタルアーカイブ係
吉田敏也、一牛ゆかり、西山直志
1. はじめに
令和8年(2026年)4月、国立公文書館デジタルアーカイブ[1](以下「DA」という。)はリニューアルを行い、5世代目となるデジタルアーカイブの運用を開始した[2]。
DAは、インターネットを通じて、所蔵資料の目録の検索、画像等データの閲覧を可能とするサービスである。平成17年度(2005年度)にサービスを開始し、現在、所蔵資料約180万冊の目録と、約50万冊分の画像等データを公開している(令和8年3月末時点)[3]。公文書管理法に基づく目録の公表と利用の促進[4] に対応するため、24時間365日の安定稼働が求められている。
本稿では、リニューアルまでの経緯と主な改善点、今後の課題について紹介する。
2. リニューアルまでの経緯
国立公文書館(以下「当館」という。)は、令和11年度末の新館開館に向け、「Center for Archives」の理念を実現するための所蔵資料の利活用を促す取組として、デジタル技術を用いた検索性・利便性の向上やデジタルアーカイブの拡充を掲げており、DAは「誰もが容易に所蔵資料を利活用できる環境」の基盤としての役割が示されている[5]。
当館には、従来からの取組である所蔵資料のデジタル化を促進するとともに、我が国全体のデジタルアーカイブの推進のため、全国の公文書館等との連携・協力に向けた横断検索連携への対応が求められていた。また、国の知的財産戦略本部が進める、デジタルアーカイブ戦略懇談会及びデジタルアーカイブ推進に関する検討会による「デジタルアーカイブ戦略 2026-2030」[6]において、当館は公文書分野の中核的な役割を担う組織として位置づけられた。同戦略では、国関係のアーカイブ機関等及びジャパンサーチ[7]におけるデジタルアーカイブ推進の2030年達成目標に向けた取組が今後求められている。こうした内外の状況やアンケート等の利用者からの声[8]も踏まえ、今回のリニューアルを実施した。
3. リニューアルの内容
3-1. デザインの全面刷新
今回のリニューアルにより構築した新システムでは、ロゴ・デザインを全面的に刷新した(図1)。全体の配色について、旧システムから緑色を基調色として継承しつつ、より明るい色をベースカラーとして採用し、より親しみやすい印象となるよう配慮した。
多様な利用者に配慮し誰もが利用しやすい環境を目指して、ウェブアクセシビリティについては「JIS X 8341-3:2016」のレベルAAに準拠することを目標に、「アクセシビリティポリシー」を設け、試験結果を公表している[9]。また、近年普及するダークモードに対応し、利用者が利用環境や好みに応じて表示方法を選択できるようにした。さらに、利用者の個人情報保護への配慮やウェブサービスにおける透明性向上のため、クッキー(Cookie)の利用同意機能を導入し、利用者が内容を確認した上で同意の可否を選択できるようにした。
加えて、スマートフォンやタブレットでの操作性についても改善を行っている(図2)。タッチ操作を考慮したレイアウトやボタン配置を採用するとともに、小さな画面でも視認しやすい文字表示とするなど、モバイル端末での利用環境の向上を図った。
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3-2. トップページの画面構成
トップページでは、ファーストビューとして、画面中央にキーワード検索の入力ボックスを表示させ、DAの主な利用方法となる目録の検索が、すぐに実行できるようにした(図1参照)。一方で、詳細検索や他機関との横断検索への入り口のほか、初めてDAを利用する利用者向けの案内ページへのリンク「はじめて使う方へ」のボタンも設けている。背景には、公文書館ならではの多様な資料画像を左右にスライドさせることで、所蔵資料の豊かさと広がりを直感的に伝え、利用者の興味・関心を喚起するよう工夫した[10]。
トップページの画面中段には、当館の主な資料を紹介する「ピックアップコンテンツ」を設けた。旧システムにも同様のギャラリー機能はあったが、新システムでは資料のサムネイルがカード形式でランダムに表示されるようになった。これにより、新たに訪れるたびに異なる資料が表示されるようになり、利用者にとって、新たな所蔵資料との「発見」の機会を提供することを目指した。なお、旧システムと同様のカテゴリ分類は踏襲しており、各資料の解説も各カテゴリのなかで見ることができる。
3-3. 検索機能の見直し
新システムでは、キーワードの検索機能を強化し、全角・半角や漢数字・算用数字等の表記揺れに対応した。一例を挙げると、「明治31年」と算用数字で検索した場合でも、目録に「明治三十一年」と漢数字で書かれた対象がヒットするようになっている。
検索結果一覧画面(図3)については、新たな絞り込み検索(ファセット検索)を画面左側に設けた。これは、検索結果を目録種別や保存場所、年代などの項目ごとに件数を表示し、その内訳を確認しながら、任意の条件の選択及びキーワードによって絞り込み検索を行うことができるものである[11]。また、利用者の要望が多かった検索結果のCSV出力の最大数を、従来の1,000件から5,000件に増加させた。
当館DAの特色でもある目録の階層検索については、詳細検索画面で画面左側の「資料群階層から探す」のチェックボックスで、複数の資料群を選択して検索を実行することが可能となったほか、従来どおりツリー表示も実現している[12]。また、資料群名をクリックすると、当該資料群の目録画面へ遷移する[13]。
なお、現時点では試行的機能となるが、本文検索の機能も実装した。検索できる対象は、一部テキストを有する電子公文書などに限られるが、詳細検索の「本文検索を行う」にチェックを入れてキーワード検索を行うことで、本文を含めた検索が可能である。
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3-4. 目録画面の改善
目録画面(図4)について、旧システムでは目録の詳細情報を表示するには画面遷移が必要であったところ、新システムでは目録の「基本情報」と「全ての情報」(詳細表示)を、同一画面内でのタブ切り替えで確認できるようにした[14]。これにより、画面遷移による待ち時間を軽減し、目録の情報のスムーズな閲覧を可能とした。
また、新たな機能として、目録画面の下部に「URIをコピー」・「引用例をコピー」というボタンを設けて、利用者が資料にアクセスするために必要な情報を簡易に取得できるようにした。URIとは、各資料に付与された一意の識別情報であり、これを用いることで当該資料の目録画面に直接アクセスすることができる[15]。「引用例をコピー」については、目録種別、資料タイトル、請求番号、URI、参照日をまとめて取得できるもので、利用者が典拠を管理しやすいように配慮した。
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3-5. ビューア画面の改善
ビューア画面(図5)についても操作性を一新し、利便性の向上を図った。具体的には、基本的な情報の表示を画面上部に集約するとともに、画像表示領域を囲う枠を撤廃したことで、利用端末の画面サイズに応じて画像を広く表示できるようになった。また、目録画面と同様に「URIをコピー」のボタンから、表示されているコンテンツへの直接のリンク情報を取得することができる[16]。
左側の操作メニューについて、画像ビューアではすべての画像の「サムネイル」が表示されるようになり、利用したいページへ直感的に飛べるようになった(図5参照)。サムネイルは、「全画面」の状態でも参照できるため、利用者からの要望が多かった全画面表示でのページ移動に対応した。また目録画面を開かずとも、「資料情報」から目録の基本情報が確認できるようになった。「印刷・ダウンロード」は、より直感的な操作で、画像については従来どおりJPEG・JPEG 2000・PDFの形式を選択して実行できる。なお、ダウンロードしたファイル名は、利用者の声を踏まえて、旧システムでは数字のIDのみで分かりづらかったものを、請求番号を付与することで識別性を高めた。
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3-6. 官報電子化への対応
令和7年4月に施行された官報の発行に関する法律(令和5年法律第85号。以下「官報発行法」という。)により、官報は電子化され[17]、内閣府の「官報発行サイト[18]」での閲覧期間経過後、当館に移管されることになった[19]。
官報発行法により内閣府から移管される官報(以下「電子官報」という。)は、令和7年10月に最初となる62冊の受入れを行い、令和8年8月に目録を公表した。電子官報は、当面の間6か月ごとに移管され、その後1年以内を目途に目録公表が行われる。DA上の目録は、特定歴史公文書等として「官報」の名称で資料群を設けており[20] 、発行された年月日ごとに簿冊の単位として日付、件名の単位として電子官報の種別ごとに号数が表示される。
電子官報は、デジタルアーカイブ上の利用制限の区分は「公開」であるが、プライバシーへの配慮を確保する観点等から、法令によりDAでは館内に限定し利用に供することになっている[21] 。電子官報のビューア画面では、画面左上に「館内限定閲覧」ラベルが表示される。一方、館外からDAにアクセスした場合は、資料が館内でのみ利用できる旨と、プライバシーに支障がない事項は「官報発行サイト」に掲載していることの案内が表示される(図6)[22]。
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3-7. 外部連携機能の強化
当館では、従来からの取組である横断検索の連携に向けた技術的支援を行ってきた。しかし、連携を希望する機関によっては、横断検索連携のために当館が指定する検索プロトコルへの対応が必要とされることが、課題となっていた。このため、新システムでは従来の検索プロトコル方式に加えて、新たにCSVデータで登録できる方式を導入し、令和8年度から試行的運用を開始している。これにより、検索プロトコルに対応していないデジタルアーカイブ・システムも横断検索に参加することが可能となり、さらなる連携と利便性の拡大を期待している [23] 。
また、歴史公文書等を含むアーカイブズ所蔵機関のデータベースである「ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー」[24] と連携し、各機関のページに遷移する「JAD」ボタンを新設した。新館のビジョンに示される「Center for Archives」に向けて、「ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー」に紹介されている全国のアーカイブズ機関とのさらなる連携拡大を目指したい。
さらに、IIIFの対応について、従来は重要文化財等の限られたコンテンツのみであったが、新システムではJPEG 2000で管理する画像が対応することとなり、対象となる資料が大幅に拡大したことで、外部サービスでの画像等の利活用の促進につながった。例として、図7はジャパンサーチ上で当館の資料情報を表示した画面である。ジャパンサーチ上で、利用者は資料画像を閲覧でき、表紙だけでなくほかのページへ遷移することができる。
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図7 ジャパンサーチで閲覧できるIIIFを活用した画像[25]
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4. おわりに
今回のリニューアルでは、デザインの全面刷新に加え、検索や外部との連携機能の強化など、多岐にわたる改善を実施した。これらは、利用者の利便性向上を図るとともに、新館のビジョン「Center for Archives」にある「誰もが容易に所蔵資料を利活用できる環境」の実現に向けた取組の一環である。
デジタルアーカイブには、目録検索にとどまらず、資料の発見や活用を通じて新たな価値を生み出すデジタル基盤としての役割が期待されている。その要となるものが、探しやすさに直結する「目録・メタデータ」の整備である。当館では、新館開館という節目を見据え、目録情報のさらなる充実に向けた調査検討に着手している。例えば、膨大な資料画像のテキストデータ化や関連するキーワードの付与により、検索補助データの整備を進め、利用者が目的の資料へより円滑にアクセスできるようになることを目指している。また、現在は手作業や目視で行う目録の作成等業務についても、将来的に生成AIをはじめとする技術を適切に活用することで、業務の効率化や精度の向上を見込んでいる。人にもシステムにも扱いやすいデータの整備を進めるとともに、将来的には他の業務への応用も検討していきたい。
あわせて、国民共有の知的資源としてデジタルアーカイブのさらなる利活用を促進していく上で、画像等データに関する二次利用条件の整理・明確化を進めるなど適切な利用への配慮も重要である。今後も利用者の意見や社会の変化を踏まえながら、当館所蔵資料へのアクセス向上と一層の利活用の促進に取り組んでいく。本稿で紹介した機能を活用いただくことで、当館が所蔵する多様な資料との新たな出会いや発見につながれば幸いである。
[1]国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/
[2]これまでのリニューアルの経緯は、以下を参照されたい。
国立公文書館デジタルアーカイブの紹介. アーカイブズ. 2005, no.21, p.1-11. http://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no021
八日市谷哲生. 国立公文書館におけるデジタルアーカイブの取組み. アーカイブズ学研究. 2015, no.15, p.4-15. https://doi.org/10.32239/archivalscience.15.0_4
風間吉之. リニューアルした国立公文書館デジタルアーカイブ. アーカイブズ. 2016, no.62. http://www.archives.go.jp/publication/archives/no62/5544
吉田敏也・一牛ゆかり. 国立公文書館デジタルアーカイブの2021年リニューアルについて. アーカイブズ. no.82. https://www.archives.go.jp/publication/archives/no082/10988
[3]国立公文書館. 令和7年度独立行政法人国立公文書館業務実績等報告書. 2026, p.31. https://www.archives.go.jp/information/pdf/r7/results2025_honbun.pdf
[4] 公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)第15条4項「必要な事項を記載した目録を作成し、公表しなければならない。」、第16条「目録の記載に従い利用の請求があった場合には、(中略)これを利用させなければならない。」、第23条「展示その他の方法により積極的に一般の利用に供するよう努めなければならない。」
[5]鎌田薫. 新館開館に向けた国立公文書館のビジョン. アーカイブズ. 2024, no.93. https://www.archives.go.jp/publication/archives/no093/15817
[6]デジタルアーカイブ戦略懇談会・デジタルアーカイブ推進に関する検討会. “デジタルアーカイブ戦略2026-2030”. 内閣官房知的財産戦略本部. 2025.5. https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/titeki2/pdf/archive_2026-2030.pdf
[7]ジャパンサーチ. https://jpsearch.go.jp/
[8]令和2~6年度の「独立行政法人国立公文書館業務実績等報告書」の資料編「資料18 国立公文書館デジタルアーカイブ(DA)の利用状況について」で、アンケート結果の概要を報告している。 https://www.archives.go.jp/information/backnumber.html#Sec_b03
[9]“アクセシビリティポリシー”. 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/accessibility
ウェブアクセシビリティの試験結果も公表しており、試験を実施したページについては、適合レベルAAに準拠している。
[10]“初めての方へ”. 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/support
トップページに掲載している画像について、目録画面・ビューア画面それぞれへのリンクの一覧を掲載している。
[11]“ご利用方法” “1.3.3. 絞り込み検索について”. 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/howto/helpKbun_01_03#target133
[12] “ご利用方法” “1.2.5. 資料群階層について” . 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/howto/helpKbun_01_02#target125
[13]これに関して、検索結果画面などにある、各資料の目録画面やビューア画面への各種リンクについて、新システムではブラウザの別タブで開けるようになったことも、利用者の声を踏まえた変更点である。
[14]目録の「基本情報」は、公文書管理法に基づく「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)第9条(目録の作成及び公表)で定められた項目の表示を基本としている。
[15]ブラウザのアクセスバーへの表示も整理を行い、URIに統一した。
[16]画像ビューア画面へのリンクについて、例えば12ページを指定する場合、従来は末尾に「/12」と追加していたが、新システムではページ指定の形式を「#12」に変更している。
[17]“官報の電子化について”. 内閣府. https://www.cao.go.jp/others/soumu/kanpo/about/kanpo_about.html
官報発行法については、以下の解説が詳しい。
田中裕太郎. “官報の発行に関する法律の解説”. ジュリスト. 2024, no.1598, p.56-61.
[18]官報発行サイト. https://www.kanpo.go.jp
[19]官報発行法第13条、官報の発行に関する内閣府令(令和6年内閣府令第80号)第25条.
[20][資料群]「官報」. 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/fonds/5575924
[21] 特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン 第22条第2項.
特定歴史公文書等のデジタル画像等の情報をインターネットの利用により公開することが定められるところ、「法令により利用に供する際の条件等が定められている場合はこの限りでない」に該当する。
[22]“ご利用方法” “4.5. 館内限定閲覧について” . 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/howto/helpKbun_04_05
なお、館外からアクセスの場合、電子官報のサムネイルは館内限定閲覧の表示がされる。
[23] “横断検索の連携” “3. 連携をご希望の機関の方へ” . 国立公文書館デジタルアーカイブ. https://www.digital.archives.go.jp/cooperation
今回のリニューアルにおいて、”横断検索の連携”のページを新設し、連携方針等を明示することとした。
[24]ジャパン・アーカイブズ・ディスカバリー. https://www.archives.go.jp/jad/
歴史公文書等を含むアーカイブズを所蔵する機関で、閲覧、展示、デジタルアーカイブ等のいずれかによって、それらの資料が利用できることを確認した機関についてのデータベース。
[25]画面はジャパンサーチ上でDA収録の「高知県捕鯨図」(請求番号:183-0578)16コマ目を表示したところ。 https://jpsearch.go.jp/item/najda-m6PkcKEDiMv7I2Z8TDMQTBQAhZ7kuzBl
(以上、Webページの参照日は全て2026年8月28日)







